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死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?  作者: わんた


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私にもちゅーして

 地下通路を使ってスカーテ王女の屋敷に着くと、すぐにダイチから襲撃があったと伝え、ケガをしている四人を馬車に乗せて治療院に運んだ。


 急ぎだったので個室じゃなく大部屋だ。他にも包帯を巻いた女性たちが何人も横たわっている。普通に考えたら順番待ちになりそうなのだけど、スカーテ王女が近くにいる治療師の胸ぐらを掴んだ。


「男性からの要望だ! すぐに治療してくれ!」


「わ、わかりました!」


 男性という理由だけで治療の優先度が一気に変わってしまったみたいだ。


 戸惑いながらも治療師さんは、ベッドに置いた三人と片腕を押さえているレベッタさんに近寄る。即座にスキルによる治療が始まりそうだったので、無許可で手の甲にキスをしてスキルを進化させた。


 何も言わずにやってしまったけど、白衣を着た女性は嬉しそうにしていたから大丈夫だろう。


 後ろで腕を組み、怒っているスカーテ王女を除けばね。


 きっと秘密を知る人が増えたと頭を悩ませているのだろう。


 そこはなんか、良い感じでお願いします!


「私にもちゅーして」


 右腕をブラブラとさせながらレベッタさんが抱きつこうとしてきたけど、スカーテ王女に頭を捕まれた。


「ケガ人はおとなしくしてろっ!」


 ポンと押されて後ろに下がってしまい、治療師の女性に受け止められてしまう。そのまま回復系のスキルを使われたようで、折れた骨が瞬時に治ってしまった。


 使った本人が一番驚いていた。


「え。すごっ。私何かに目覚めちゃった!? これで出世できるーーーっ!」


 治療士の女性が喜んでいるけど、一時的なのだから数日後には戻っちゃうよ。


 そんな夢を見ないで欲しいと思ってしまった。


「お前の出世などどうでもいい。早くルアンナの治療を始めろ」


 初めて苛立ったスカーテ王女を見た。腕を組んでつま先をトントンと床にたたきつけていた。


 装飾品や服のデザイン、そして彼女自身の発するオーラがすごいため、一目で貴人だとわかる。平民でしかない治療師さんは反論できず、言われたとおりベッドで寝ている三人に駆け寄ってスキルを使う。


 外傷はすぐに消えたけど意識は戻らない。寝たままだ。


「なぜ起きない?」


 スカーテ王女が治療しに掴みかかった。いつもの冷静な姿なんてない。やや理性を失っているようにも感じる。


 それほどルアンナさんを大切に思っているんだろうけど、だからといって治療師さんにあたるのはよくない。ここは僕が動いて止めないと。


「落ち着いてください」


 背後から腕を脇の下に入れて治療師さんから引き離す。抵抗はなかった。震えているように感じたから、肩を掴んで半回転してもらうと抱きしめる。静かな鳴き声が聞こえた。大切な人が目覚めないので不安なんだろう。


 僕もよく泣いていた時期があった。


 その時に背中をさすられると安心したっけな。


 昔を思い出しながらスカーテ王女の背中をゆっくりとさわり、上下に動かす。


 少しでも心が楽になってくれればと思って、心配しないで、大丈夫だよ、なんて気持ちを伝えているつもりだ。


「男性が女を慰めてる!?」


「うそっ。信じれない!!」


「私にも……お慈悲を……っ!!」


「そうだ。抱きしめて!」


「貴族であっても独り占めなんで許せない!」


 治療のためにベッドで横になっていた見知らぬ女性たちが騒ぎ始めた。ケガをしているのに立ち上がって、フラフラしながらも近寄ってくる。まるでゾンビのようだ。


 逃げ出したいけど、胸にはか弱い女性がいる。守らないと……って、ええ!?


「至福の時間を邪魔するなっっっ!!」


 僕の服を掴みながらもスカーテ王女が叫んだ。


 泣いていたはずなのに目に涙はない。ちょっと鼻血が出ている程度だ。もしかして演技だったのだろうか!?


 もしそうなら僕の優しさを返してっ!


「うるさい! 私にも使わせて!」


 なんか僕を物みたいに言ったのはルアンナさんだった。いつの間にか意識を取り戻したようで、スカーテ王女と取っ組み合いのケンカをしている。


 王女相手にあんなことして大丈夫なんだろうか。後で処罰を受けそうな気がするけど、もう手遅れだから何も言えないし、何よりも僕だってピンチだ。


 ゾンビ……じゃなく、ケガをした女性たちに迫られている。大部屋を出ようとして振り返ると、メヌさん、ヘイリーさんが道を塞いでいた。彼女たちも意識を取り戻していたようだ。


「熱い抱擁」


「完治祝いをもらってもいいよね?」


 二人とも迫ってきた。なんてことだ。逃げ場を失ってしまったぞ。


 最後の希望、いつも助けてくれる助けを求める様にアグラエルさんを見る。


 あ、ダメだ。


 涎が出ていて足をモジモジと動かしている。


「男性にして欲しいことNo1シチュが……私もして……」


 なんとアグラエルさんもゾンビのように歩き出してしまった。味方がいない。


 諦めて立ち尽くすと、知らない女性の手が僕の肩を掴んだ。その瞬間、別の女性がその人を殴りつけて吹き飛ばす。そこからは連鎖的なケンカが始まった。レベッタさんたちも参加している。


「男をよこせ!」


「私のものだ!」


 大乱闘。そう表現するのが正しいだろう。


 みんな僕のことなんて忘れて暴れている。指輪を撫でながら姿を変えると、後ろを振り向く。そこにはヘンリエッタさんがいた。

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