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死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?  作者: わんた


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格好よかったです

「イオちゃんの事情は他国の騎士に関係ありませーーんっ! 黙っててくださいっ!」


 理論もなにもないレベッタさんの発言に、ヘンリエッタさんは呆れた顔をしていた。随分と評価は下がってしまったとも浮けど、効果はあったはずだ。


 正論で追及しようとしても突破できないとわかってくれただろう。


 感情で考えて話す相手に議論なんて不可能。何を言っても本人以外はわからない反論をするだけだ。


「ふぅ」


 息を吐くと同時にヘンリエッタさんから力が抜けた。


 その隙を見計らったかのようにダークエルフのテレシアさんが提案する。


「お互いに詳しい事情が話せないんだ。このぐらいで引き下がってもらえないか?」


「だが護衛対象の情報は……」


「重要なのは分かるが、それは信頼関係を築いてからでも良いのでは? それに護衛対象の近くに住むんだ。毎日接していれば、すぐにでも分かるだろ」


「そう言われると反論しにくいな」


「では、この話題は終わりにしよう」


 パンと軽く手を叩いてテレシアさんがまとめてしまった。


 説得する相手が落ち着いたタイミングを見極めて落とし所を提案するなんてすごい。僕にはマネできないと思ってしまうのと同時に、頼りになるお姉さんだと感じる。


 感動してじっーっと見つめていたら、テレシアさんが軽くウィンクしたので微笑んでしまった。それが良かったのだろうか、彼女も笑ってくれる。


 短いやりとりだったけど、心が通じ合ったような不思議な感覚だった。


「これで顔合わせは終わりだ。私は五人を男性特区まで送り届けるから、後は任せた」


 すっと立ち上がったテレシアさんが僕の手を取った。引っ張り上げられると腰に手が回る。一緒に部屋を出て行ってしまった。


「あーーーっ!」


 突然の行動に反応が遅れたレベッタさんの叫んだ声が聞こえた。ドタドタと追ってくる足音が聞こえる。


「今日の私は役に立ったと思わないかい?」


 周囲の騒動なんて気にしてない彼女は、体をピタリとつけながら聞いてきた。


「格好よかったです」


「そうか、君にはそう見えたか」


 すごく満足そうな顔をしている。自尊心みたいなものが満たされたのかな。機嫌は良さそうだ。


 なんて思っていたら、後ろからレベッタさんが飛びつき続いてヘイリーさんたちも来ると、テレシアさんから引き離そうとする。


「いたいですよ~」


 お互いに譲らないので体が引き裂かれそうだ。きっと彼女たちは男を奪い合えとDNAに刻まれているのだろう。じゃないと今の状況は納得できないッ!


「おい。約束忘れるなよ。守らないのであれば私にも考えがあるぞ」


 レベッタさんとヘイリーさんがピタリと止まると、僕から離れる。


「約束を破るつもりはないよ。みんなで仲良く帰ろーっ!」


「仲良く、大事」


 二人とも態度を急変させてメヌさんとアグラエルさんを連れて先に行ってしまった。


 どんな約束をしていたのか少しだけ気にあったけど、微笑んでいるテレシアさんの目がなにも聞くなと言っているように感じる。


「さぁ、私たちも行こう」


 また腰に手を回され、僕たちは衛兵所から出て行くことにした。


* * *


「誰か、俺をここから出せッ! 俺はツエル様だぞッ!」


 数日前に牢獄から出されたので解放されたと思ったのだが、今度は窓のない部屋に入れられている。拘束はされていないが、一歩も出ることは出来ず、不味い飯を食い続けるだけ。


 子種を提供するようなこともなく、一日一日を無意味に過ごしている。


 いつもどおり、どうでもいい女を痛めつけていただけなのに、どうして俺はこんな目に合わなければいけないのだ。悪いのはデカい胸をゆらすキモい女なのに。


 近くにいたらイライラするんだから、暴力を振るうのが当然だ。男性は神によって特別な存在だと決められているのだから何をしても許される。


 なのに拘束するなんて許せない!


 絶対に抜け出して、後悔させてやる!


「早く出せ!」


 ドアをガンガンと蹴っているが反応はない。近くに警備をしている女がいるはずなのに無視しやがって!


 怒りにまかせて何度も蹴りつけるが、すぐに意気が上がってしまう。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 疲れたので固い床に座るが、すぐに痛くなって横に倒れる。


 汗で体が濡れていたこともあって体が冷えてきた。ブルブルと震えるが、誰も温めに来ない。


 声を出すのも面倒になってきたので、じっと耐えているとドアが開いた。


「おい。飯だ」


 トレーには湯気が出ているスープと、ふっくらとした白いパン。あとはステーキがある。飲み物としてはワインが用意されていた。


 この俺の口に入れるにしては質素で量も少ないが、今は腹が空いている寒いので許してやろう。


 すぐに食事を始める。


「食事を出されたらむさぼるように食べるとは……まるで豚だな」


 飯を持ってきた女が何か言っていたようだが、食事に集中していたので聞き逃してしまった。


 口の中に入れた肉を飲み込んでから質問しようと思ったのだが、ドアが閉まって姿が見えなくなる。


 終わるのを待たずに出て行くなんて身勝手な女だ。俺が自由になれたときには、死ぬほど痛めつけてやる。男である俺にはその権利があるのだッ!



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