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暇で死にそうでした

 苦痛が和らいで目が覚めたら、みんなが僕を見て拝んでいた。


 しかもミシェルさんが男根のペンダントを首にかけるプレゼント付きだ。


 二度目の死を迎えたと思っていたら、聖人扱いされるしどういうことなんだろう。


 わけがわからないよ。


 戸惑う僕は、レベッタさんに案内されるまま寝室へ入った。


 すぐに外へ出られるようになると思っていたんだけど、放置されたまま数日を過ごしてしまう。侍女すら入ってこないのだ。ご飯を部屋に運んできてもすぐに出てしまう。会話する時間すら取らせてくれない。


 一応、僕は貴重な男なんだよね? どうして放置されているんだろう。


 モヤモヤとした気持ちを抱えていると、ようやく事態が動く。


 やることがないので椅子に座って、窓から外を眺めているとドアが勢いよく開いた。


 入ってきたのはソフィア女王とグロリアーナ女王の二人だ。


 後ろには何人か侍女がいるけど飾りみたいなもんだ。貴人だけで行動させられないから同席しているだけで、会話に入ってくることはない。


「我が夫よ。待たせたな!」


 知らない間に関係がグレードアップしていた。ナイテア王国のソフィア女王はニコニコと笑顔を浮かべているだけ。大国が僕を囲い込もうとしているのに、見ているだけでいいのかな。


「スカーテの夫は、息災のようですね」


 ああ、違った。引き下がってはいなかった。ちゃんと外堀から埋めるために動いている。


 気になるところとしてはグロリアーナ女王の反応だろうか。独占欲によって二人が争う可能性もある。そうなったら止めないといけないんだけど、僕の覚悟なんて何の意味もなかった。


 二人とも仲よさそうにしている。


「暇で死にそうでした」


 ちょろっと嫌みを言ってみた。


「すまぬな。各国への連絡に手間取ってしまった」

「何をしていたんですか」


 他国も巻き込んだ連絡とは何だろう。


 騒ぎが大きくなってそうだ。


「聖人イオディプス誕生の知らせだ。我とミシェル、ソフィア女王の著名付きで送ったので、誰も反対しなかったぞ」


 半ば予想できた回答だった。


 二度目の人生で、僕は聖人になってしまったようだ。今後のことを考えると性人と言った方が正確だろうか。


 SSランクのスキルだけじゃなく、地位や権力を目的として女性が群がりそうだよね。


 子供を作る覚悟ができた途端、とんでもないことになってしまったようだ。


「はは、そうですか」


 乾いた笑いが出てしまった。


「僕はどうなるんですか」

「何も変わりません。今までどおりに過ごせますよ」

「ナイテア王国にいてご迷惑になりません?」

「逆です。居てくれるだけで巡礼者が訪れるようになりますし、ポンチャン教信者が味方になってくれます。国に危機が訪れても助けてくれるでしょう」


 ソフィア王女との会話にグロリアーナ女王が割り込む。


「仮にポンチャン教が動かなくても何かあれば我が助けてやる。安心しろ」


「ナイテア王国とブルド大国が、僕を中心に手を組んで味方になったって理解であっているのかな」

「うむ。その認識で相違ない」

「ユーリテスさんは、どうなりました?」


 今まで淀みなく答えてくれたグロリアーナ女王が一瞬だけ口が止まった。


 不安が高まる。


「処刑はしてないですよね?」

「我は約束を破らん。幽閉しておるが、あれは生きる屍だな。食事も取らずに衰弱している」

「原因は僕、か……」


 大衆の面前で盛大に振ってしまったのだ。失恋の影響で食事が喉を通らなくなったんだろう。


 もしかしたら僕は殺すよりも酷いことをしてしまったんじゃないだろうか。


 罪悪感が高まっていき、自然と表情が曇ってしまう自覚はあった。


「そんな顔をするな。悪いのはユーリテスだ」

「もっとよい言い方はあったと思います。慰めるチャンスをもらえないでしょうか」

「傷口が広がるだけだ。やめておけ」


 そうだよね。グロリアーナ女王の言うとおりだ。負い目を感じた僕の自己満足でしかなく、ユーリテスさんを傷つけてしまう。


 そっとしておくのが正しいんだろうけど、やっぱり何かしてあげたい。


「手紙でもダメですか」

「やめておけ」

「でしたら、せめて一言伝えてください」

「内容は?」

「生きてください。いつか会いに行きます、と」


 結局の所、僕もユーリテスさんと同じだな。気持ちを押しつけている。


 僅かな可能性という希望をぶら下げても生きて欲しいというのは、僕の自己満足でしかない。


「我が面会を許すと思うか?」

「聖人認定されたんです。そのぐらいのワガママは押し通せると思っていますよ」

「……いいだろう。あやつが反省する態度を見せたら面会させてやる」

 

 ダメ元で言ってみたんだけど、要望が叶ってしまった。


 僕が思っている以上に聖人という立場は強いらしい。


「気になることがそれだけなら、子作りの順番を決めようじゃないか」


 僕が断れないように、伝言を受け入れたに違いない。


 やっぱりグロリアーナ女王は油断できない相手だ!


「いいですけど、順番待ちしてもらいますからね」

「わかっておる。さっさとナイテア王国に戻って消化してきてくれ」


 帰国の許可が出た!


 思っていたよりも早いのは、クーデターが終わってしまった影響もあるはず。


 聖人を拘束する理由がないからね。


 ようやく我が家に帰れるよ。

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