ルール上、それは難しいです……
待ちに待った、模擬戦当日がやってきた。
練習すらさせてもらえず貞操を狙われ続けていたので、今日という日が来てくれて本当に嬉しい。
僕の体を狙っている侍女やルアンナさんたちも大人しくしてくれている。模擬戦の日でも襲うほど理性は捨ててなかったようだ。ありがたい。
僕が滞在している部屋に兵士が来てくれたので、案内されて控え室に入った。
ベンチのような椅子と木剣が一つ。それだけがあった。
室内には誰もいない。不正防止のためなのか、案内してくれた兵士さんは控え室の外で待機していて、勝手に出られないようにしている。
「後どのぐらいで呼ばれるのかな……あ、一人だった」
常に誰かがいたので、クセで話しかけてしまった。
一人になるのって何日ぶりだろうか。
トイレやお風呂まで同席されていたので、すごい久しぶりだというのはわかる。
意識するととたんに寂しさが湧き上がってきた。そういえばレベッタさんたちとも会えてないな。仲の良い人たちと会いたい。気持ちがそわそわして落ち着かない。
話し相手がいないというのは、こんな寂しいことだったんだ。
死ぬ前はDV親父のせいで一人になりたいと思っていたことの方が多いのに。
人間って不思議だよね。環境が変わると考え方や気持ちも変わってしまうなんて。
もし僕に子供ができても、レベッタさんたちがいる環境であれば、良き父親として暴力を振るわずに家庭を作れるかもしれない。
ふと、そんなことを感じ、子供を作ることへの嫌悪感が薄れていく。
本当に不思議だ。人間、考え方一つでこうも意見が変わるなんて。
「そろそろ模擬戦の時間です」
ドア越しから声が聞こえた。
戦闘モードに意識を切り替えないと。
木剣を握って何度か素振りをすると、汗が薄らと浮かび上がる。数十回ほど同じ動作をしていくと、雑念が消えていった。
素振りを終えると、構えた体勢をしばらく維持する。
「ふぅ」
少し乱れた呼吸を整え、力を抜いていく。
調子は悪くない。むしろ絶好調だ。今日は良い試合ができそう。
構えを解いてから木剣を握ったままドアを開ける。
「お待たせしました」
汗をかいてしまっていることもあって、兵士の顔が猛獣になっていた。男性フェロモンにやられて襲いかかりたいと思っているのかもしれない。でも、強烈な自制心によって行動には移されなかった。
「ご、案内します」
早足で通路を歩いてしまった。足元にはぽつ、ぽつと謎の液体が落ちて、点々と続いている。
どこから出ているか分からないほど、僕は初心じゃない。
汗の臭いだけで、兵士さんを発情させてしまったのだ。
男なら前屈みになって大きくなった息子を隠せるけど、女性は垂れ流しになるから大変だね。
指摘するのも悪いので、黙って後を付いていく。
ん? 剣を持つ右手に違和感を覚えた。
指がじんじんと痺れてきたと思ったら、感覚が鈍くなってきたのだ。肘までは動くけど、そこから先は力が入らない。木剣は握れているけど、触れればすぐに落としてしまいそうだ。
木剣を持っていない左手にも痺れた感覚がある。
思い浮かんだのは毒だ。
あの奴隷の男達は卑怯にも木剣に塗っていたのだろう。
素振りを入念にしていたから会場へ入る前に毒の効果が出ただけで、本来なら模擬戦中に手が痺れていたはずだ。
運が良かった。会場に入る前であれば、対策のしようはある。
「すみません! 待ってください」
兵士さんは足を止めて振り返った。
発情しているからか、頬が赤らんでいる。
「緊張で少し体調が悪くなってしまったんです。治療系のスキルを持っている人を呼んでもらえないでしょうか」
「ルール上、それは難しいです……」
そんなことは僕も分かっている。だけど相手は卑怯にも毒を使ってきたんだ。ルールなんて守る必要はない。
木剣を落として、兵士さんに近づくと抱きしめた。
毒のせいで力は入れられないけど、その代わりに彼女の気持ちの良い場所に、息子をこすりつけておく。
「あんっ♡」
腰の動きを止めて見上げる。
「どうしてもダメですか?」
腰をもう一度動かして、兵士さんを気持ちよくさせる。
息が荒くなってきた。絶頂する直前なんだろう。タイミングを見計らって体を離す。
「あぁ……っ!」
手を伸ばして僕を捕まえようとしたけど、空振りに終わった。
「治療系のスキルを持っている人を連れてきてください」
余計なこと言わなくても、お願いを聞けばイかせてもらえると分かっているだろう。
「私は解毒のスキル持ちです! 何でもします!」
求めているスキルを目の前に持っていた。
なんて幸運なんだ! と思うには都合が良すぎる。
「誰の命令で案内役になったんですか?」
「グロリアーナ女王陛下の勅命によって決まりました」
自分で言うのも恥ずかしいんだけど、僕の案内役になりたかった人は多かったはず。勅命で勝手に決めるリスクは非常に高かったはずだ。特に今はクーデターが発生しているからね。
それでも強権を発動させたのであれば、理由はわかる。
毒の罠があると見切っていたんだろう。ということは、目の前にいる兵士さんは味方だ。
「どうやら木剣に毒が塗られているみたいで、腕の感覚がないです。スキルを使ってもらえませんか?」
「ええ! それは大変です! すぐにでも!」
兵士さんは僕の手を掴んでスキルを使ってくれた。念のためブースター機能で効果を底上げしたので、すぐに手の麻痺は消えた。
木剣を持っても何も感じない。
スキルブースターのおかげで耐性まで出来たのかも。
調子がいいぞ。
「それで、あのーー」
期待した目をして僕を見ている。
わかっているよ。お礼はちゃんとするから。
とはいえ時間がないのは事実だから、一分の間に二回ほどイってもらい、満足してもらった。