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男性への奉仕だ

 模擬戦の話が決まった後、僕は部屋に戻った。


 ドアを閉める。


 今この場にいるのはルアンナさんたち護衛と僕だけ。他国の人が近くに居ると落ち着かないので、世話係の侍女は外で待機させている。


「よかったのですか?」


 僕がソファに座って落ち着いたタイミングで、ルアンナさんが聞いてきた。


 主語はなかったけど模擬戦のことを言っているんだろう。


「何かあったのー?」


 軽い口調で何も知らないリテートさんが質問をする。エリンさんも疑問の表情を浮かべている。先に説明しようかな。


「これから出兵する人たちの士気を高めるために、男同士で模擬戦をすることにしたんだ。参加するのは僕とグロリアーナ女王の奴隷だよ」

「ええ!! 貴重な男同士を戦わせるの? あったまおかしんじゃない?」


 辛辣な言葉づかいだったけど、リテートさんの反応はこの世界じゃ普通の部類に入ると思う。ブルド大国が異常なんだよね。


 やっぱり男同士で争う姿を見て士気が高まるなんて、ちょっと意味が分からない。


「この国の文化なんだから、あまり悪く言わない方がいいよ」

「そうかもしれないけどさー。イオディプス君が参加する意味ないんじゃない?」

「弱い男なんて侮られるのは嫌だから参加するよ。それに、ナイテア王国の女性は強くて最高の男に惚れているって周囲に示したいんだ。みんな羨ましがると思わない?」

「思う!」

「でしょ~! そんな僕がナイテア王国の次にブルド大国を優先して子作りするんだから、戦うよりも手を組もうと思ってくれるんじゃないかな」


 これはルアンナさんから来た質問の回答でもある。


 誰もが認める男がナイテア王国を気に入って住んでいる。そういった事実を広めたいんだよね。


 二度とバカにさせないんだから。


「そんな風に思ってくれていたんですね。我々も気持ちに応えなければいけません」


 あれ? 何だか空気が変わった気がする。


 すーっと静かに動いたエリンさんが僕の後ろに回って、両腕を掴んだ。


 逃げようとしても動かせない。


「全力でご奉仕しますね」


 これから行われることに期待したのか、耳元で囁かれて体がぶるっと震えた。


 心臓がバクバクする。


「さ、遠慮しないで! ずずっと行っちゃおう」


 僕の正面に立ったリテートさんが中腰になった。ズボンのベルトを緩めると、すっと落としてしまう。


 パンツが露わになった。


 レベッタさんの趣味でぴっちりと肌につくボクサーパンツっぽいデザインだ。股間の盛り上がりが非常に分かりやすい。


「わぉ!」


 よだれが出てますよ! 欲望に即負けしたリテートさんは、僕の股間を一撫でした。


 息子が少し大きくなる。


「ルアンナさん?」

「手や口なら問題ないですよね。今から楽にしてあげます」


 あの理性的な女性が、訳の分からないことを言っている!


 どうしちゃったの!?


「みんなすごく積極的ですね……気持ちは分かりましたから、そろそろ止めません?」

「好きな男性が体を張ってくれるんです。女としてこれ以上の喜びはありません。奉仕しなければ……!」


 模擬戦に参加するってのが、これほどの意味を持っていたとは思わなかった。


 僕はまた、ナイテア王国の女性達を見誤ったのだ。

 

「だ、ダメです! これ以上は!」


 理性よ戻ってこいと願いながら大声で叫ぶと、ドアが開いて侍女が入ってきた。


 僕たちの姿を見て止まる。


 侍女は助けを求めるため叫ぼうとしたので、ルアンナさんが素早く口を塞いだ。


 足でドアを閉めると入ってきた侍女に話しかける。


「話がしたい。静かにできるか?」


 あまりの気迫に侍女はコクコクと何度もうなずいた。


 ルアンナさんは、ゆっくりと手を離す。


「貴方たちは何をしているのですか?」


 責めるような口調で、侍女はルアンナさんを睨みつけている。


 理性が正常に働いている証拠だ。


 このまま説得して僕を解放してほしい。頼んだよ!


「模擬戦を行う男性への奉仕だ」

「服を脱がすことが?」

「イオディプス君は少し特殊でね。女に触れられると戦意が高まるんだ」

「そんなこと……ありえるので…………?」


 この世界の男は性欲が薄い。女性に触れられも喜ぶどころか、嫌悪を抱くパターンがほとんどだ。


 グロリアーナ女王の奴隷も例に漏れず、あんな美人に従っているというのに、嬉しそうな顔は一度もしたことはなかった。本音では屈辱とか思っているんじゃないかな。


 だから僕への嫉妬は、グロリアーナ女王を奪われるからじゃないと思うんだよね。


「あり得るんだよ。スキルだけじゃなく、性格も含めて奇跡の男性なんだよ」

「だからあのグロリアーナ女王陛下も狙っているんですね」


 こんなんで納得されてしまった。


 地球に住んでいた感覚からすると違和感は残るけどね。


「だから君も参加しないか?」

「えっっっ!? よ、よろしいので?」

「このことを黙ってくれるなら、イオディプス君も許してくれるだろう」


 侍女は僕を見た。


 ルアンナさんの言葉を否定した場合を考えてみる。


 女性と濃密接触したことをグロリアーナ女王に報告するはずだ。その後、黙って見ている彼女じゃない。「我も参加させよ」なんて言って、迫ってくるはずだ。ついでに子作りをさせられるかもしれない。


 それはそれで嬉しい……って、ダメだ。ダメ!


 せめて順番は守らないとレベッタさんが悲しんでしまう。それだけは絶対に嫌だ。


「子作りはダメですよ?」

「ということは、それ以外は……」


 侍女の口からよだれが垂れた。


 ああ。理性が崩壊したみたいだ。もう目の前のことしか考えられないだろう。

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