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あなたは関係ないでしょ

 グロリアーナ女王と出会ってから数日が経過した。


 王城がユーリテスさんに乗っ取られたとの噂が広まっていて、国民は動揺しているらしい。確定じゃないのは僕が屋敷から出てないからだ。人伝で聞いた情報なんだよね。

 

 反撃の準備は進んではいるけど終わってはないみたいで、出兵にはもう少し時間がかかりそう。


 この時間ってすごくもどかしいよね。みんな殺気立っていて、イライラしているように見える。すぐに動けない不満が溜まっているようで、そんな状況をよく思わなかったグロリアーナ女王はちょっとした催しを開くことにした。


 具体的には男同士の模擬戦だ。


 どうやらブルド大国は、貴重な男性が争い合うことによって士気を高める風習があるらしい。アクセサリー代わりとして奴隷にする文化といい、見世物扱いだ。


 貴重な男を隠さず表を出す理由は、国力のすごさを内外に示すためなんだろうな。


 ナイテア王国に住んでいた僕には理解できないことで、ルアンナさんは「野蛮だ」と愚痴っていたけど、みんな楽しみにしているのだから下手なことは言えない。


 それに参加するのはグロリアーナ王女の奴隷である男なのだから、僕には関係ないしね。と思っていたら、なんと出場依頼が来たようだ。


 理由を聞くため、ルアンナさんだけを連れてグロリアーナ女王と面会をすることになった。


 部屋に入ると、グロリアーナ女王が豪華な椅子に座っている。左右に挟む形で奴隷の男が二人立っていて、僕を睨みつけていた。


 一度も話したことないのに好感度は、継続して低いみたい。恨まれているなぁとは感じても、男にどう思われようと気にしないので放置だね。


「今日は楽にしていいぞ」


 膝をつこうとしたら許可を出してもらったので、立ったまま話すことにする。


「模擬戦の出演依頼について話を聞かせてください」

「ふむ。まず始めに言わせてもらうと、我は反対している」


 これは驚いた。まさか推し進めているのはグロリアーナ女王じゃないんだ。

 

 客寄せとして僕の参加を依頼したのかと思ったんだけど、どうやら事情は違いそうだ。


「では、誰が望んでいるんですか?」

「こいつらだ」


 グロリアーナ女王の視線は奴隷の二人に向かっていた。


 部屋に入ったときから敵意を感じていたから、自然と納得してしまった。理由はわからないけど、僕と戦いたいぐらい嫌いみたいだ。


「理由を聞いてもいいですか?」

「むろんだ。ダリアント、話せ」


 左側にいる男が一歩前に出てた。強気な顔をしていて、自分に自信があるみたいだ。彼がダリアントさんなんだろう。


「グロリアーナ王女殿下と子を作るのに相応しいか、模擬戦で確認したく依頼しました」


 意味が分からない。彼らは関係ないはずなのに、どうして確かめてもらわなければいけないんだ。


 国家間の取引に奴隷が口を出すなんて、グロリアーナ王女は認めない気がするんだけど、止める様子はない。模擬戦にSSスキル持ちが参加すれば盛り上がる、なんて思ってるのかな。


「相応しいかどうかは本人が決めればよいのでは? あなたは関係ないでしょ」


 相手が男ということもあって遠慮なく反論させてもらった。


「平民だったらそうでしょうが、グロリアーナ女王ほどの立場となれば話は変わります。安定した立場を維持するために、家臣も納得する相手でなければなりません」

「SSランクスキル持ちでは不十分と言いたいのですか?」


 僕の反論は想定済みだったようで、笑われてしまった。


「高ランクスキルを持っているのは当然です。その上で、肉体的、精神的にも健全だというのを証明してもらう必要があります」


 そのために模擬戦をしろと言いたいのか。


 確かにスキルランクだけで判断したら、とんでもない愚かな王配が生まれるかもしれない。強い野心を持っていたら国が荒れるだろう。


 ダリアントさんが言うとおり、内面も含めて判断する必要はある。でもそれが模擬戦である必要はない。国内が安定してから確かめればいいのに。


「それともイオディプス君は俺に負けるのが怖いのか?」


 口調が変わった。安易な挑発だ。乗る必要はない。

 

「どう思ってもかまいません。僕は参加しません」

「臆病者め! こんな弱い男に求婚するナイテア王国の女も大したことはないな。男が不足しすぎて頭がおかしくなったんじゃないか」


 僕を侮辱するのであれば許せたけど、ナイテア王国の人々をまで含めるなら話は変わる。


 いいよ。その挑発に乗ってあげる。


「ナイテア王国の女性は素晴らしい人ばかりです。今の言葉は撤回してください」

「模擬戦で俺に勝てば撤回してやろう」

「わかりました。いいでしょう。模擬戦とやらに参加します」

「イオディプス君!」


 参加表明を出すと、ルアンナさんが大声を上げた。


 言いたいことはなんとなくわかる。危険な行為をしてほしくないんだろう。その優しさは伝わっているんだけど、これは男としてのプライドに関わる問題だ。


 好きな人たちを馬鹿にされたまま引き下がれるわけないじゃないか。


「ルアンナさんには悪いと思いますが、何を言われても意見は変えません」

「イオディプス君……」


 そっと手を握ってルアンナさんを落ち着かせると、ダリアントさんではなくグロリアーナ女王を見る。


「見ての通りです。模擬戦には参加します」

「よく決断してくれた。我の元に集まった兵達も喜ぶことだろう」


 思惑に乗せられてしまったけど、気にはしない。


 僕にとってナイテア王国がどれほど大切なのか、ダリアントさんやグロリアーナ王女だけでなく、ブルド大国の兵のみんなにも知ってもらおう。それがちょっとした抑止力にもなるはずだ。

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