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不敬だぞ! 離れろ!

「そんな魅力的な男に協力してもらえる我も、また世界最高の女であることは間違いない!」


 自尊心がすごく高い。普通なら鼻につくかもしれないんだけど、発しているオーラみたいな威圧感があるので、自然と納得してしまう。政治力や権力は確かに世界最高峰の女性なのかもしれない。


 ただ隣にいたいかと聞かれたら違うけどね。


 いろんな女性に会ってきたけど、やっぱり僕はレベッタさんたちが好きだ。


「グロリアーナ女王殿下、これからどうされますか?」


 やりとりを聞いていたテロレロ侯爵が、口を挟んできた。


 このままだと話が進まないとでも思ったのかな。


「ユーリテスを討つ」


 当然のことだと言わんばかりの返事だった。


 現代の法治国家でも、内乱や外患誘致といった現体制を崩壊させるような行為は重罪になる。ブルド大国だけ処分が優しいってことはないだろう。


 良くても一生幽閉、通常なら処刑が妥当なはずだ。家族や親戚がいたら彼女たちも巻き添いになる。それほど、国家への反逆は重いんだ。


 女性同士の争いは避けられないとしても、せめて命だけは助けられないだろうか。


「ユーリテスさんは大罪人かもしれませんが、処刑だけは避けられませんか?」

「無理だ。我に刃向かった者は殺す」


 言い終わるのと同時にグロリアーナ女王は、悪い表情をしながらにやっと笑った。


「だが我も好んで人は殺したいとは思わん。イオディプスが、その身を捧げてくれるなら考えてもいいが、どうする?」

「その身とは具体的に何をすればいいのでしょうか」

「我との子供を作ってもらおう」


 レベッタさんみたいに、僕が好きだから子作りをしたいわけじゃない。スキル狙いだ。


 僕との間にできた子供なら、高ランクスキルを持って生まれる可能性が高い。国を安定させるために、次期女王として期待ができる。


 数十年先を見越しての提案だ。


「順番を守ってくれるのであれば……」

「イオ君!!」


 僕の発言を止めたのはルアンナさんだ。


 子種を国外に出すなんてとんでもない。そう言いたいんだろう。特に僕のスキルはSSランクだから、他国を強化することにつながる。外交上の問題になってしまうのだ。


「一度は敵対したユーリテスのために、そんなことをしなくても良いのでは?」

「王との会話に割り込むな。不敬だぞ」


 グロリアーナ女王がギロリとルアンナさんを睨んだ。テロレロ侯爵も似たような顔をしている。


 もしここで反発したら、兵がなだれ込んできて戦闘が発生しそうだ。


 ピリピリとした緊張感が漂う中、ルアンナさんは頭を下げた。


「申し訳ございません」

「イオディプスのことを思っての発言だ。今回は許そう」


 次はないってことだね。


 これで護衛の三人は何も言えなくなってしまった。


「我は何番目になりそうなんだ?」


 難しい質問だ。レベッタさんパーティは当然として、他にもナイテア王国の人たちと子供を作ることになるだろう。


 僕自身がクソ親父と同じように女性へ暴力を振るうかもしれないという怖さは残っているけど、お世話になった女性たちの願いは叶えてあげたい。


 帰国したらすぐにでも子作りは始めるだろう。その数は……。


「十人以上は待つかと」

「そんなには待てん」


 大国の女王が数人なら待てると言ったようなもので、子作りは、どうしてもしたいことだとわかった。

 

 僕との子作りを絶対にしたいと思っているように感じる。テロレロ侯爵とダンス時にアドバイスしてくれたことを思い出し、強気の交渉をしてもよさそうだと思い直す。

 

「ですが、彼女たちとの約束は破れません」

「十人以上もの女と子供を作るまで待つのは無理だ」


 獲物を見るような目をしていて、僕を逃がさないって感じが伝わってくる。


 だからこそやりすぎない限り、相手から交渉を打ち切る心配はない。


「グロリアーナ女王は何人待てるんですか?」

「数人なら待とう。それ以上は許さん」


 レベッタさんパーティとの子作りが終わったら、すぐにグロリアーナ女王とする流れなら交渉はまとまりそうだ。


 でもスカーテ女王を後回しにするのは良くない気がする。


 義理や恩を忘れて生きていたくはない。


「話になりません。少しは我慢をおぼえたらどうですか」

「なっ……!?」


 面と向かって否定された経験が少ないようで、グロリアーナ女王は言葉に詰まっている。


 意外と押しに弱いのかもしれない。


「僕との子作りを望むのであれば、順番を守ってもらわなければ困ります」

「……優しくしていれば、つけあがりよって!」


 席を立って拳を振り上げようとしたので、僕は前に飛び出して抱きしめた。


 身長差があるので顔は大きな胸に埋まる。フワフワと柔らかくて気持ちがいい……って、それどころじゃなかった!


 手に力を入れたまま顔を上げる。


「不敬だぞ! 離れろ!」

「いやです! 順番を守ると言ってくださいっ!」

「ぐっ……」


 無理やり振りほどくこともできただろうに、グロリアーナ女王は動かない。頬がほんのりと赤く、たじろいでいるようにも見える。やっぱり押しに弱い……!


 普通じゃないけど、特別な男である僕ならイケる気がしてきた。


「ダメですか?」


 目をウルウルとさせながら、こびを売るような声を出した。

 

 これが刺さったみたいで顔を背けられてしまう。


「だ、だがな。我にも我慢の限界……というのが……あって……」


 声が弱い。人を威圧するオーラのようなものはなくなっていた。

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