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教育が必要だな

 待っている間にお店の外が騒がしくなった。


 女性たちが暴れているのかな?


 だったらすぐに鎮圧されるだろうから慌てることはない。すぐにでも静かになるんだろうと思っていたけど、逆に騒ぎは大きくなっている。特に兵のみなさんが動揺している様子が見て取れた。


「確認してきます」


 スノーさんは、僕たちを残して外へ出てしまった。


「何が起こっても不思議ではありません。リテートは裏口の確認を、エリンは窓からの侵入を警戒して」


 指示が降りると二人は静かに武器を抜いて動いた。


 ルアンナさんも剣を持っている。


 緊迫した空気を感じて、鈍い僕はようやく反乱の二文字が思い浮かんだ。


 もしかして、ユーリテスさんが騎士を連れてやってきたのだろうか。もしそうなら、多くの女性が傷ついてしまう。


 だけど僕が人質になれば回避できる。


 無血になる可能性があるのなら、動くしかない!


「僕も外に行きます」


 杞憂ならそれでいい。


 歩き出そうとしたんだけど、ルアンナさんに抱きしめられて止まってしまった。


「行ってはいけません」

「どうしてですか?」

「危険だからです」


 いつもは僕が男だからと引いてくれることも多いんだけど、今は違った。確固たる決意が宿った瞳をしている。


 言葉じゃ説得できない。同じ筋力量でも男より女性の方が強いから、実力行使なんて不可能だ。身動きはとれない。


 キリッとにらみ返すことしかできなかったんだけど、それがすごい効果を出してくれた。ルアンナさんが怯んだ顔をして、泣きそうになったのだ。手の力が緩む。


 すごい罪悪感が湧いてきたけど、心を鬼にして出口へ走った。


「いたっ!!」


 急にドアが開いておでこに当たってゴロゴロと転がってしまう。窓を警戒していたエリンさんに抱きしめられる。


 むにゅっと胸に包まれて、大きな怪我をすることはなかった。


 おっぱいのクッション性ってすごいんだね。エアバッグの代わりに搭載されたら、飛ぶように売れそうだ。


「痛くありませんでした?」

「大丈夫ですよ。それより……」


 エリンさんの視線はドアの方に向いている。


 僕も見ると、真っ黒なファーがついたグレーのマントをまとう女性が立っていた。髪は黒くセミロングぐらいある。目はキリッとしていて鋭い。胸は大きく僕の顔ぐらいはありそう。腰には片手でギリギリ振るえるかどうかといった、大きな剣がぶら下がっていて強そうだ。


 だけど気にするところは彼女の後ろにいる男二人だ。


 見たことがある奴隷の焼き印が肩についている。首輪もあって、お互いに手を繋いでいる。仲良しさんだ。


 彼らは立ちふさがった女性の持ち物だと一目で分かった。


「ふむ、彼がイオディプスという男か」


 無遠慮に近づいてきたので、ルアンナさんとエリンさんが立ちふさがった。


 剣を向けていて敵対する意志を見せている。


「どこの騎士かは知らんが、我に剣を向けるとは万死に値する」


 手を前に出しただけでルアンナさんとエリンさんは吹き飛んでしまった。壁に叩きつけられて、店頭におかれた商品が落ちていく。


 目に見えない攻撃をしたみたい。


 さらに見知らぬ女性は剣を抜いたので、意識を失ったルアンナさんの前に立ち、両腕を広げる。


「ほう、女のために体を張るか。その心意気はよいが、我に反抗するのは許せん。教育が必要だな」


 剣を振り上げた。僕を攻撃するつもりだろう。


 腕の一本で許してくれないかな……。


 襲ってくる痛みに耐えようと、歯を食いしばる。


「グロリアーナ女王陛下、お待ちください!」


 スノーさんが大声を上げると、剣がピタリととまった。


 攻撃しようとした女性こそ、僕を呼び寄せた張本人だったんだ。


「彼を傷つければ反撃の活路が消えてしまいます。再考をお願いできないでしょうか!」

「ちっ。今は緊急時か…………イオディプスを連れてきた功績への褒美として、スノーの意見を受け入れてやろう」


 一触即発の危機は回避できたようだ。


 影に隠れて隙を狙っていたリテートさんが、細剣を鞘に収めながら僕の隣に立ってくれた。


 彼女の存在にグロリアーナ女王は気づいてなかったようで、驚いた顔をしたのが印象的だった。


「どうして、このような場所にグロリアーナ女王陛下がいるんですか?」


 誰もが気になっていることをスノーさんに聞いた。


 本人が目の前に居るんだけど、直接声をかけると「不敬だ!」といって起こりそうだったので止めたんだ。


 この判断がよかったのか、グロリアーナ女王は何も言わず黙ったまま。静観してくれている。


「早く会いたくてサプライズ登場できれば良かったんですが……詳細は屋敷に戻ってからにしましょう。屋敷に帰りますので、馬車に乗ってくれませんか?」


 他人に聞かせたくないみたい。


 移動するのは良いんだけど、先に僕を守ってくれた二人の手当をしたい。


「その前に治療をしたいので、回復スキル持ちの方はいますか?」

「お待ちください」


 スノーさんはすぐに兵の一人を連れてきてくれた。


 Dランクで、かすり傷を治すぐらいしかできないけど、回復スキルを持っているらしい。


 僕はいつもどおりスキルブースターを発動させる。


 回復スキルを使ってもらって、僕を守るために倒れた二人の外傷はきれいになくなった。でも意識は戻っていない。


「Dランクスキルで、これほどのケガを治せるようになるのか。話に聞いていた以上の効果だな」


 一方的に言って、グロリアーナ女王は店から出て行ってしまった。


 威圧感がなくなってホッとする。


 美人だけどおっかない女性だったなぁ。

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