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護衛の兵です

 数十人の貴族令嬢のパーティーを終えた翌日は、筋肉痛によって動けなかったので、予定を変更して滞在を一日延期した。


 体を動かすのが辛くベッドの上にいたんだけど、すっごく平和だった。


 食事の面倒はペルージョさんがしてくれたし、室内の護衛はナイテア王国から派遣されているルアンナさんたちだから、気心知れていて安心だ。


 窓から外を見ても火の手は上がっておらず、クーデターが計画されている国とは思えないほど平和に感じる。


 でも僕らは一度襲われているんだ。油断はしちゃいけない。


 ユーリテスさんが主犯らしいんだけど、正々堂々と勝負を受けてくれた彼女が、そんな酷いことをするんだろうか。未だに納得できないでいる。


 直接話したら、わかり合えるんじゃないかな……ってルアンナさんに言ったら、めちゃくちゃ怒られたんだよね。


 夢を見すぎ、って。


 確かに僕は女性に対して一種の幻想を抱いている自覚はあるから、否定はできなかった。


 流れゆく雲を見ているとドアがノックされて、ルアンナさんが対応している。


 話し声からしてスノーさんが来たみたい。部屋に入ってくると僕が寝ているベッドの前まで立ち止まってくれた。


「体調はどうですか?」

「薬を塗ってもらったおかげで大分楽になりました。もういつも通りです。明日には問題なく出発できると思います」


 筋肉痛に効く薬を全身に塗ってもらったので、体は楽になっている。


 大変ありがたかったんだけど、ペルージョさんに全身をくまなく触られたのはちょっと恥ずかしかった。


「出発のことで報告があります。実は取り止めになりました」

「どういうことですか?」

「グロリアーナ女王陛下が、こちらに来るとのことです」


 王都で会う予定だったのに、ルシェルド領に来るなんて問題が起こったに違いない。


 やっぱりクーデターの件なんだろうか。


「ユーリテスさんが暴れているんですか?」

「…………私の口からは言えません。グロリアーナ女王陛下と面談される時に、お聞きください」


 機密事項だから自己判断では、教えられないってことなのかな。既に巻き込まれているのに冷たいなとは思ったけど、スノーさんの立場を考えれば文句は言えない。大人しく引き下がろう。


「わかりました。直接聞いてみますね」


 僕が折れると、ほっとした顔をしてくれた。


 やっぱり中間管理職で苦しい立場だったんだろう。


「それで、グロリアーナ女王はいつ来るんですか?」

「明日だと聞いています」


 すると空き時間は今日しかないのか。


 筋肉痛はよくなったし、暇だからお買い物でもしようかな。レベッタさんたちにお土産も買いたいし。


「それじゃ今のうちに街を見学したいので、準備してもらえないでしょうか」

「わかりました。警備についてテロレロ侯爵と話してすぐに準備いたします」


 バタンとドアが閉まった。


 一時間ぐらい経過しただろうか。部屋の外が騒がしい。壁の向こう側から話し声や足音がするんだ。


 しばらくしてガチャガチャと金属音までしてきた。


「確認してきます」


 様子が気になったようで、護衛として室内にいる斥候が得意なリテートさんがドアを開いて、ぴょこんと顔を出した。


 左右を見て確認してから、ドアを閉める。


「兵が数十人いるね」

「誰かが攻めてきたの?」


 クーデターもしくは、ナイテア王国との約束を反故にして僕を誘拐しようとしているのだろうか。


 もしそうなら、遠慮なくスキルブースターを使って逃げるよ。


「そういった気配はなかったよ。集まっている兵たちは、戦闘前の緊張感はなかったんだよねー。近くにイオ君がいて興奮はしているようだけど」


 リテートさんがウィンクをした。


 美人なので様になっている。男の僕よりもカッコイイ。


 エリンさんやルアンナさんも切迫した感じじゃないので、想像していたような事態とは違いそうだ。


 勝手に部屋を出るわけにもいかず、静かに待っているとスノーさんが入ってきた。


「護衛の準備ができました。お買い物に行かれますか?」

「すぐにでも!」


 鏡で髪型を整え、部屋から出ると、左右に別れて整列している女性の兵がいた。通路の奥まで続いていて数十人レベルじゃない。多分、百人はいるだろう。


「彼女たちは?」

「護衛の兵です。命を賭してイオディプス君を守るのが使命なので、遠慮なく使ってください」


 買い物をするだけなのに覚悟が重いって!


「案内は私がします。どこに行きたいですか?」

「お土産屋さんがあれば、そこに……」

「ナイテア王国の女性達にプレゼントするんですね。でしたら、いいところがありますよ」


 スノーさんについていって廊下を歩き、玄関を出ると馬車に乗った。


 ルアンナさんたちは同席しているけど、テロレロ侯爵が用意してくれた護衛の兵は徒歩だ。馬車をぐるりと囲むように守っていて、馬をゆっくりと進めている。


「兵の練度は、さほど高くないですね」


 窓から動きをチェックしていたエリンさんが、感情を込めずに言った。思ったことが、そのまま口に出てしまったんだろう。


 馬車内にいるスノーさんが怒るんじゃないかと気になったけど、平然としていた。


「テロレロ領は王都に近く、戦争を経験していませんからね。国境付近の兵と比べれば練度は、やや下がります。それはナイテア王国も同じでは?」

「我が国は大国の脅威があるので、どの領地でも練度は非常に高いですよ」


 にっこりと微笑むルアンナさんの圧が強い。


 スノーさんから目を離さず、バチバチとした空気が発生した。


 外にいる兵士のみなさん! 馬車の中で問題が発生ですよ! 助けて!

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