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カチカチで立派なお腹ですね

 近衛兵と合流してからの移動は順調だった。


 ユーリテス派と呼ばれる裏切った人たちに襲われることはなく、村や町に立ち寄ってゆっくり休むこともできる。観光をする余裕があるほどだ。


 男の僕が出歩いているので、噂は広がっている。


 ブルド大国に入ってからなんて、町に入ると歓迎の旗が出るほどの活気があった。道を歩けば建物から花びらが落ちてくるし、偉くなって凱旋している気持ちになる。


 でも、勘違いしちゃいけない。


 僕は一人じゃ何も出来ないのだ。


 他の人がいるからスキルブースターは役に立つのであって、偉いのは女性たちである。


 そんな旅も終わりを迎えていて、僕はグロリアーナ女王がいる王都まで、あと一日という距離で到着した。


 なんと領主が僕たちを歓迎したいと言っているらしく、今回は屋敷に泊まることになる。付近にいる貴族たちも集まっているようで、パーティーを開催してくれるようだ。


 正直、断りたいけどナイテア王国のことも考えると、ブルド大国の人たちとは友好的な関係は構築しておきたい。


 悩んだ末に、僕は出席することにした。


 * * *


 お風呂に入ってから控え室に入ると、侍女の方々が数十人入ってきた。


 皆すごく若いんだけど、一人だけ中年の女性がいる。侍女長といった偉い立場の人なんだろう。


 その人が僕の前に来た。


「イオディプス様、パーティーの服はどのようなものを希望されますか?」


 この世界に来てから、マナーってのも学んできた。


 パーティーでは、タキシードを着るのが一般的だというのは知っている。色にも意味があるらしく、黒なら既婚、白なら未婚といった判断ができる。


 そんな中で僕は群青色を着ようと思っている。


 これはナイテア王国の国色で、代表してやってきたことを周囲に伝えたいのだ。


「タキシードの色は群青色をお願いします。シャツは白、ポケットチーフはナイテア王国を表す三つの山をモチーフにしたものを用意してもらえませんか?」


 侍女長らしい中年の女性は、眉を少し上げた。


 ナイテア王国色が強いことに気づいたのだろう。気に入らないといった感じだ。


「ネクタイはグレーにしませんか?」


 ブルド大国を表す色だ。


 ちょっと悩んだけど、この提案はありがたいかもしれない。


 ナイテア王国を強めに出しつつも、ブルド大国の色も付け加えることで、両者の架け橋になるという意味を伝えられそうだからだ。


「僕はいいと思いますが、三人はどう思いますか?」

「バランスが取れて最善かと」


 護衛のために付き添ってくれるナイテア王国の騎士を代表して、ルアンナさんが返事をしてくれた。


 よかった。僕のセンスは間違ってなかったようだ。


「それではグレーでお願いします」

「かしこまりました」


 侍女長は部下にテキパキと指示を出してから、僕の体に触れた。


「失礼します」


 な、なんと服を脱がされたのだ。着替えなんだから当たり前なんだけど、他人にされるとちょっと恥ずかしい。


「自分でやります」

「高貴な方の手を煩わせるわけには、いきません。わたくしにお任せください」

「ルアンナさん?」


 助けを求めるように名を呼んだけど、なんと三人とも僕の服に手をつけていた。


 脱がすのを手伝っているのだ。


 護衛の意味とは!?


 抵抗しても無意味だと悟ったので、僕はなすがままにされることを選ぶ。不要な接触が多めで、腹筋や胸を四人がねっちょりと触りながら、パンツ一枚の姿になった。


 部屋を囲むように待機している侍女たちの目が怖い。


 一歩、また一歩と近づいている。


 中にはよだれを垂らしている人もいるから驚きだ。


 部屋中がむわっとして、女性の臭いが充満している。


 緊張感が高まる中、ドアが開いた。服を取りに行った侍女が戻ってきたのだ。


 侍女長は部下が持ってきた服を手に取ってから、最後に僕の腹筋を一撫でする。


「カチカチで立派なお腹ですね」

「一応、鍛えていますから」


 女性に褒められて嬉しいけど、表には出さないよう気をつけた。


「あらそうなんですか? 鍛えている男性は珍しいですね。よければ後学のために、他の侍女も触ってよろしいでしょうか」


 ざわざわざわ。


 侍女のみなさんが騒ぎ出している。


 期待で目がキラキラしていて、断ったら悲しませてしまいそうだ。それは胸が痛む。


 策士の罠にはまったと分かりながらも、首を縦に振って許可を出した。


「イオディプス様の胸や腹筋を触りたい方は、一列に並びなさい!」


 触る箇所増えてない!?


 そしてなんでルアンナさん、リテートさん、エリンさんも並んでいるの!?


 貴方たちは十分にお触りしたじゃないかと言いたいんだけど、もう一人目が触っていて身動きが取れない。


 顔を近づけて体臭を嗅ぎながら、首、胸、腹、尻を撫でられていく。すごく優しい手つきで、興奮してしまいそうなんだけど、自分の姿を思い出して理性を総動員する。


 パンツ一枚で反応すれば、すぐにバレてしまうからね。


 僕は拷問のようなお触りタイムが過ぎるのをじっと我慢して待ち、ようやく全員分が終わってタキシードに着替えることができた。

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