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あぁっ、そこはっっ!!

「イオディプス様がどう思われてようとも、私の考えは変わりません。優しい人です」


 二度も言い切られてしまったら否定するのも悪い気がする。


 黙って受け入れつつ、気恥ずかしいので窓から外を見ることにした。


 城のすぐ外にある森へ入ったみたいで、木々が見える。日陰ができて薄暗いけど、不気味な雰囲気はない。


「ここに動物はいますが、魔物は駆逐したので存在しておりません。ご安心ください」


 絶滅させたってすごいなぁ。余所から侵入しにくい島だからできたことなのかな。


「どのような方が魔物と戦われたのですか?」

「ポンチャン教が認めた騎士たちですね。島内には百名ほどがいて、他は各国に散らばっております」


 さすが世界的な宗教団体だ。自前の戦力を持っているだけじゃなく、世界中に配置できるほどの人材を確保しているみたい。


 相当なコネクションも持っているだろうし、影響力はすごそうだ。


「その騎士たちを使って、テルルエ王国を攻め込むなんてしないですよね?」


 一番嫌な展開は僕を取り戻したいスカーテ王女たちと、戦争になることだ。多くの女性が死んでしまう。


 そんな悲しい事件は起こしちゃいけない。平和が一番である。


「戦いはお嫌いですか?」

「はい」


 誤解する余地がないよう、きっぱりと短い言葉で肯定した。


「わかりました。テルルエ王国とは外交での問題解決を検討します」


 断言してくれないのは、相手の出方次第ですよ、って言いたいのかな。


「とはいってもスカーテ王女は僕のことを諦めないと思いますが、話し合いで何とかなるのですか?」

「困難なのは間違いありません。ですが、交渉の余地は残っているかと」


 興味を持ったので視線をミシェルさんに戻す。


 狐耳がピンと立っていて可愛い。


 昔から犬や猫といった動物が好きだったので、なでなでしたくなるけど我慢した。


「具体的には賠償金の支払い、騎士団を派遣した国防の手伝い、ポンチャン教が囲っている男性の一部融通などですね」


 男をもらったから別の男を渡す。


 物々交換、物みたいな扱いをされている。


 大昔、地球でも偉い人や外国に女性を貢ぐ貢女といった文化があったので、それの男バージョンだと思えば良いのかな。納得はできないけど、性的な利用価値が金銀財宝と同じレベルというのは理解できた。


「それでもスカーテ王女が僕を返せと訴えてきたらどうしますか?」


 自分で言うのは恥ずかしいけど世界初のSSスキルランクもちの男だ。その辺にいる男を集めてもつり合わない。


 高確率で先ほどの提案は断られると思っていた。


「我々に刃向かう物は粛清する……と言いたいところですが、イオディプス様の意向をくんで相手の条件はある程度、呑むと思います。ですが状況次第ですね。またそれとは別に、冒険者としての活動は完全に止めてもらいます。これだけは譲れませんので」


 異世界に来たんだから魔物と戦いスキルの熟練度を上げていく、みたいなことはしたかったんだけどなぁ。ミシェルさんは許してくれなさそう。


 今度は僕が妥協するしかない。


「冒険者稼業はやりません。ですから穏便にお願いしますね」

「もちろんです。我々を信用してください」

「わかりました」


 約束をしたのだから、僕は大人しくしよう。無理に島を出ようなんて考えず待っていた方が事態は良くなるはず。


 話している間に馬車は森を出たみたいで、窓から見える景色は金色の実を付けた小麦畑になっていた。風が拭いているようで柔らかく揺れている。農作業中の女性の姿が見えたけど、みんな楽しそうにしている。


「小麦は品質改良を何度もして味はすごく良くなってるんです。今晩の食事は期待しててくださいね」


 自慢げに語るミシェルさんが言った瞬間、馬車が小石を弾いたのか大きく揺れた。


「あッ」


 バランスを崩して倒れそうになると抱きしめられた。


 ふわふわした柔らかい体に、さわり心地の良い尻尾、甘い香り、すべてが僕を誘惑してくる。無意識のうちに髪を触り続けてしまった。


「あぁっ、そこはっっ!!」


 熱っぽい声を出しながらミシェルさんが悶えた。反応が面白い。しばらくは、この島で過ごすときめたのだから、ちょっとぐらい遊んでも良いかな?


 ずっとやられっぱなしだし、ちょっとぐらい反撃しようなんて悪戯心がムクムクと湧き出ていた。


「これはどうです?」


 狐耳も撫で、軽くつまんでみる。


「はぁぁああっぅ」


 力が抜けてしまったみたいでミシェルさんは椅子の上に倒れる。


 痙攣しているようで足が小刻みに震えていた。


 顔はだらしなく、涎が垂れていて、礼拝堂で見せたきりっとした姿とは真逆だ。弱点を突けば意外と簡単に逃げ出せるんじゃ……。


「悪い子にはお仕置きが必要ですね」


 ぞわっとした。危ないと思ったけど手遅れで、ミシェルさんから離れようとしても、足で挟まれていて動けない。


 手が服の下に入り、脇腹を優しくくすぐられる。


「あはは! ダメですって!! 許して下さいッ!」

「嫌ですーーーっ!」


 さらにくすぐりが激しくなった。耐えられず、暴れるけど逃げられない。


 涎が出てミシェルさんの口に入ってしまった。喉が動いてゴクリと飲み込む。


「っっっっ!?!?!?」


 顔が赤くなるのと同時に白目をむいて気絶してしまった。全身から力が抜けたようで、僕は解放される。


 どうしよう。涎で人を殺しちゃったかもっっ!?


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