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過分な評価痛み入りますわ

「こちらこそ、このような素敵な場にご招待いただき感謝申し上げますわ」


 ドレスのスカートをちょんとつまむと、性女……じゃなくて聖女のミシェルさんが軽く頭を下げた。今気づいたんだけどお尻から金色の狐っぽい尻尾が生えている。帽子の下には耳があるのかもしれない。


 顔を上げるとまっすぐな目で僕を見る。


 ペロリと唇を舐めて恍惚の表情を浮かべていた。


 すごく偉い人な上に恐ろしい女性だと直感が教えてくれる。


「あまたの女性を気絶させるほど魅力的な殿方に、ご挨拶してもよろしくて?」


「もちろんですよ」


 スカーテ王女が許可を出すと聖女ミシェルさんが歩いてきた。周囲にいる貴族たちは頭を垂れて敬意を表している。


 王族と同等の権力があると、鈍い僕でもわかった。


 お世話になっている皆の顔を潰すわけにはいかないので、失態をしないように気をつけないと。


 ミシェルさんは身長が高く、多分二メートル弱ぐらいはありそうだ。僕の前に立つと大きな胸が目の前に止まる。触れるか触れないか、といった距離だ。近すぎだとおもいつつも、スカーテ王女が許可しているのであれば文句は言えない。


「あら。これじゃ、可愛い顔が見えませんわね」


 しゃがんだようで、目線が合うようになった。顔が目の前にある。金色の瞳がシャンデリアの光を反射してキラキラと輝いていて美しい。


 顔立ちははっきりしているし、美人の多い世界の中でも頭一つ飛び抜けている。


「私はポンチャン教の聖女ミシェルですわ。年齢は十八。そこら辺にいる年増より肌の張りは良いですし、殿方のご要望にすべて応える覚悟もございます。また私と婚姻関係を結べば教団の力によって望んだものはすべて手に入りますわよ」


 自己紹介にしてはアピールが強すぎるでしょ!


 今までに出会ったことのないタイプでたじろいでしまう。


「初めまして。イオディプスです。取り柄のない一般男性ですが――」


 話している途中でがしっと手を掴まれてしまった。


「取り柄がないなんて言わないでくださいまし! 貴方の美貌だけでも素晴らしいのに、SSランクのスキルマでお持ちなんですわよ! 唯一無二の存在、神なのです!」


「神なんておおげさですよ!」


「我がポンチャン教はスキルランクの高い男性を神と定めており、SSランクであられるイオディプス様は、その地位に相応しいのですわ」


 男を崇める宗教!


 そんなのありなの!?


 いくらなんでもおかしいでしょ。


「ミシェル様、お気持ちはわかりますがイオディプス君が驚いています。落ち着いてもらえませんか」


「オホホ、わたくしとしたことが。失礼しましたわ」


 何も出来ずにいる僕を見かねてスカーテ王女が注意してくれると、すーっと手が離れた。


 本能に惑わされているわけではないみたいだ。アレで素だったのだろう。静かにおかしい人って印象が追加されて恐怖心が高まっていく。


 なんでこんな危険人物を僕に紹介したのだろう。


 言葉ではなく目で訴えてみる。


「ポンチャン教は精強な騎士団を複数抱えている。その戦力はブルド大国にも勝るとは劣らないと言われるほどだ」


「あらあら、過分な評価痛み入りますわ」


 謙遜しているけど、本音は当然だと思っていそうだ。


 比較対象が例の国というところから、スカーテ王女が国防のために関係を深めたという意図は伝わってくる。


「いえいえ。まっとうな評価だと思っておりますよ。その武力で我が国だけでなく周辺国までもブルド大国からお守りください」


 こちらをスカーテ王女が見た。


「イオディプス君も平和を望んでいるよな?」


 ああ、ようやく思惑が分かった……気がする。

 

 きっと僕の存在を隠しきれないとわかったから、逆に利用してポンチャン教を巻き込んだのだ。


 この同盟でブルド大国への抑止力となるなら、テルルエ王国が攻め込まれる可能性はぐっと下がる。


 平和のため、ということであれば何も不満はない。


「もちろんです。僕は女性が傷つく姿を見たくはありません」


「まぁ! なんて素敵な考えですこと!」


 手を合わせてミシェルさんが喜ぶ。


「今の言葉を聞かせてあげれば、騎士や信者の皆さんも喜びますわ!」


「ええ。是非ともイオディプス君のことを広めてください」


「お任せくださいまし。ですから……ね、頼みましたわよ?」


「もちろんです」


「期待しておりますわ」


 なんか密約っぽいことをほのめかしているけど、僕には説明をするつもりはないみたい。


 会話を終えたミシェルさんが軽く僕に軽くハグをして離れる。男根のネックレスが体について少しだけ嫌だった。


「それでは、わたくしはこの辺で。またお会いしましょう」


 スカートを軽くつまんで頭を下げると、さっそうと去って行ってしまった。


 嵐のような人だったな、なんて思っている暇はなく、貴族たちが列をなして僕の前に並びだした。


「みんなイオディプス君と話したいみたいだ。時間を割いてくれるか?」


「スカーテ王女のお願いと言うことであれば喜んで」


 初対面の人と話すのは緊張するけど逃げるわけにはいかない。


 パーティーが終わるまで貴族の方々と挨拶を続けることになった。

2章はいったん終了です。

続きについては電子書籍版の反響やレビュー等を見ながらどうするか考えたいなと思っています。


ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

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