プロローグ
梅雨時には珍しく、その日は空一面が濁りのない青に染まっていた。
自然は気まぐれに姿を変えるというのに、こいつらの所業が変化することはない。この一ヶ月、一日たりとも。
髪を掴まれて引き寄せられる身体。まずは腹をひたすら殴られ、痛みに屈しかけたところで脛を蹴られる。この繰り返しが放課後の日常となっていることに、僕は呆れとも情けなさともつかぬ感覚に襲われ、気づけば顔が引き攣っていた。
それを見咎めたらしく、一人が「何笑ってんだよ」と迫ってくる。とんだ勘違いだ。
舌なめずりで湿っているその唇を見て、臭そうだなと思っていると、左頬に重い衝撃が走った。次第にそれは痛みを伴いだして、ジンジンという響きは皮膚の内側を通って脳みそまで蝕んでいく。
尻餅をついてしまった僕を見下ろす三人の男から、薄汚い笑い声が盛大に放たれる。
僕は頬の肉を上下の歯で挟んだ。噛みちぎれそうなほど勢いよく。
立とうとするな。抗おうとするな。そう自分を制御するために。
どう反発したって、僕に勝ち目なんてない。それならばいっそ、無反応を貫けばいい。そして「こいつは獲物として遊びがいがなさすぎる」と思わせればいい。そうすれば、いつかこいつらも飽きるだろう——そう頭では理解している、けれど。
——この暴力に、この日常に、終わりなどあるのだろうか。
掌から伝わってくるざらついた地面の感触が、僕を何より痛めつけていた。
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作者の冨知夜 章汰です!
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