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73.夜間講義?キター

夜の船旅は順調そのもの。


舳先に魔石の強い光を一方向に照らすヘッドライトのようなランプ、


櫓を漕いでいるともには弱く光るランプがついている。


つまり真っ暗ではない。


獣人の船員さんは三日月の明かりで十分見えると言っているので


これは人間用なのかもしれない。




…眠れない。夕方、エルフと一緒にふて寝したためか、夕飯を食べ過ぎたせいか。


明るすぎるせいではないと思う。


流れが所々急になり、棹を扱う獣人が激しく動き回る。


そんな時間が何回かあったせいかもしれない。




「眠らないのか?」突然伯爵に声をかけられた。


振り返っても影が勝って表情がよくわからない。


「昼間言われた事を考えておりました。」


「堅苦しい言い方はしなくて良いよ。皆眠っている。」


うーん、両舷一人ずつ護衛の人が起きているけど、そういう事なんだろう。


「どうして中立はダメなんですか?」


「お前は戦うとき敵味方はっきりしない奴が後ろにいても平気か?


いっそ敵の方が楽だ、優先順位をつけて攻撃すれば良いからな。」


「でも中立だと…」


「どこまで信用できる?決定的な時に攻撃してくるかもしれないぞ?


 形勢が傾いた時に勝ちそうな方につくかもしれないぞ。


 むしろそんな奴の方が多い。」


「…」


「消せる不安要素は戦う前に消しておくのが鉄則だ。


 味方に加えるのが一番だが、間に合わないなら潰す、


 潰せそうにないなら動けないようにする、それしかない。」


「なんで僕みたいな子供にそんな事を言うんですか?」


「お前の将棋の棋譜は見事だったからな。俺も負けるだろう。


 そんなお前だから言っているんだ、わかるだろう?」


「わかるような、わからないような。」


将棋が強いのはテンプレだし。


「子供にわかれというのは、いけない事かもしれないな。


 変な事を言った。すまない。」


「何か辛そうですね。」


「辛い?そうだな、これから辛い事をやらなければならない。」


「辛い事って?」


「子供に言えない事だよ、潰すって言っただろ?


80年ほど前に一回やったんだよ、あんな事二度とやりたくないから


外国まで巻き込んでお互い牽制しあって動けないようにしたのに…。」


伯爵、爪を噛んでいるようだ。


「…大変なんですね。」


「いや、俺の思慮が足りなかっただけだ。人間の欲には限りがない、


知っていたのに。」


「欲のせい?」


「悪い事ばかりではないけどな。欲があるから発展もあるんだ。


俺は半分エルフだからその辺の理解が足らなかったのかもしれない


コントロールしなければ、際限なく求めたら全体が崩れる。


その位の事がわからないとは。」




偉い人は大変そうだけど、巻き込まれたくないな。


でも助けて欲しい事もあるし、距離をどうしよう。


伯爵は言葉を続けている。


俺に向けて話しているというよりは


自分の考えをまとめているようだ。


だいぶ酔ってもいる。


教養の大部屋講座で教授がこの状態なのを見た事がある。


聞いてるふりだけすればいいだろう。




「争わない余地はまだあるはずだと、譲ってばかりいたのが


裏目に出たか。」




「エルフ達を頼む、武力だけでは解決できない事が多すぎる。


 人間の価値観についていけないエルフは不幸になる。


 バッチャを見てみろ、本来森から出ず魔物を狩るだけ、


 誰にも知られず千年以上平和に暮らすはずが


 引っ張り出されただけなのに人もドワーフも恐れるだけだ。


 誰が怒らせた?誰が攻め込んだ?経緯を忘れてやがる。」




ぶつぶつ、独り言みたいになってきた。


「お疲れのようですから、もう休まれてはいかがですか?」


俺が声をかけるとピクッと体が動いた、半分以上眠っていたようだ。


「そうだな、飲み過ぎたかもしれない。酔っ払いに付き合ってくれて


ありがとう。何を言ったかは忘れてくれ。」


伯爵は手を振りながら慎重に艫のほうへ向かっていった。




「三百歳にもならぬ若造だが苦労している。」


バッチャ、びっくりするから突然耳元で喋るのはやめてくれ。


「なんか辛そうだね。」


「200年前には自分の実母を殺されて復讐している。


80年前には自分の一族の人間をたくさん殺していた。


どちらも辛かっただろう。」


「マンチェス一族を?」


「細かい事は知らんが大半殺した。


そうしないと和平がまとまらなかったそうだ。」


「よくわからないや。」


「人にもエルフにもなれんと悩んでいる。


 おかしな奴だ、人、エルフ関係なく


 自分は自分にしかなれないのに。」




ああ、シンパシー感じる理由が少しわかった。


転生前の諸星望でもこの世界のエアヴァルトでもないような気がして


フラフラしている俺と少しだけ共通点があるのかもしれない。


なんか難しい話をしたおかげで眠れそうだ。もう寝よう。


船備え付け?この世界で見たなかで一番上質な毛布に包まって。

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