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68.ラバと呼ばれた男、キター

将棋を初めて数十分、テーブルの周りにギャラリーが集まって来た。


このテーブルが魔石ランプで明るいせいか、


ドワーフと賭け将棋をして金貨を巻き上げられていた男がいちいち


「うーん」とか「ふーむ?」とか声を出すせいか、


子供が上手に将棋をさしているせいか、原因は不明だ。




盤面は、…良くわからないけど攻めこまれてないか?これ。


そのせいか相手のドワーフは余裕を見せてグビグビ酒を飲んでいる。


『テンプレ、本当に大丈夫なんだろうな?負けそうなら早めに言えよ。


 収拾方法考えるから。』


『全然大丈夫ですよ。将棋は完全解析してあります。この相手は


日本ならアマチュアの高段者位の実力です。アマ名人には届かないかな?


私としてはもう少し強い相手の方が楽しいです。』


『つまり、遊んでいてワザと攻め込ませているのか?お前も性格が悪い』


『アンタにだけは言われたくありません。最も美しい勝ち筋に誘っています。』


『お前の美学はわかんないけど、早めに、ちゃちゃっとやってくれ。』


…アマ高段者相当か。どうりでさっきから俺には理解できん展開になっている。


というかテンプレ将棋カンストしてるのか。AI凄っ。




テンプレと念話しているのを長考と見たのだろう、ドワーフが煽ってきた。


「ここまでだな。子供にしては良くやった。もう降参したらどうだ?。」


俺も煽り返す。


「ドワーフさんこそお酒飲みながらで大丈夫なの?


負けたらお酒のせいにするつもり?」


「この程度の酒、ハンデにもならん。ますます冴えてくるわい」




テンプレ、本当に大丈夫なんだろうな。


煽っちゃったけど俺には相手の攻めを凌いでいるだけに思える。


そんな展開がしばらく続いてたんだけど、


テンプレが『はいこの一手です。』と指示してきた手を指してから一気に


展開が変わった。ドワーフの顔色も変わった。


少しするとギャラリーも気が付いてザワザワしだした。


ドワーフ、脂汗かいて、酒飲むのも忘れて盤面を見つめている。


『もう詰将棋になっています。相手も気が付いたようです。』


良くわからないけど勝ったようだ。煽りをいれてやろう。


「もう詰んでるよ。分んないの?」


門で舌打ちされた分は返したかな、ああ気持ち良い。


天を仰いだドワーフが絞り出すように言った。


「投了だ。


 畜生めお前みたいな生意気な子供の所にはバッチャが来るぞ。」


「え?何て?」


「バッチャが来ると言ったんだ。ドワーフの子供なら震えあがるぞ。


エルフの化け物でな、口が耳まで裂けていて胸まである牙が生えているんだ。


その上、耳の穴と鼻の穴から生えている長い毛で子供を縛って


頭からバリバリ食べるんだ、怖いだろう。」


…なんだそれ。…怖いか?


同名のエルフがそこにいるけど


酒飲みまくるせいでどんどん減っていく銀貨の数の方が余程怖いわ!


「よくわからないけど金貨は貰っておくね。それで良いよね?」


「ああ、約束だからな。お前名前は?俺はエンリケだ。


イルで将棋のエンリケといえば少しは名前が通っているんだぞ。」


「僕はエア。将棋はよくわかんないや。生意気な事言ってゴメンね。」


意外と良い奴みたいなので態度を少し改めよう。


「エアか。その才能で良くわからないとは勿体ない。


なんならイルまで来ないか?俺が面倒をみてやる。


ボクっ娘の将棋指しなら一儲けできるぞ。」


結局金かーい。残念ながら将棋の才能があるのはテンプレだし断ろう。


「折角だけど行かなければならない所があるんだ。」


「エルフと一緒にか?やめとけやめとけ、ロクな事にならんぞ。」


「なんでエルフと一緒はダメなの?」


「連中はな、馬鹿なんだよ。木なんか切って炭にしたら儲かると


親切に言ってやっているのに聞きやしない。


連中の木の実のパンを食った事あるか?


そこそこウマイから売れと言っても売らない。本当に馬鹿だ。」


うん?木を切っちゃったら木の実のパン作れなくなるような気が。


「そりゃ少し安めに買いたたこうとしたが、あんなバカでかい耳して


全く聞く耳持たずだ。馬鹿としか言いようがない。」


うーん、横にエルフ二人居るのに大声で馬鹿馬鹿って悪口良く言えるな。


少し上がってたドワーフ株急落だ。


「でもちゃんと協定を守って自分達の生き方してるだけでしょ?


 悪くいう事無いじゃないか。」


「お前はエルフの味方か。うん悪くないかもしれない。


 でも商人としては折角高く売れそうな物があるのに生かさないのは、


悪って思うんだ。これから戦がありそうなんだぞ、鉄が要る。


鉄を作るには木炭が要る、目の前の森は金になると親切に教えてやったのに


売らないんだぞ。こんな所まで商談に来たのにとんだ無駄足だ」


うーん、その拝金主義、エルフと相性悪いかも。


「まあ、ここシャーフラントはフルオロ・マンチェスなんてラバ公を


英雄なぞと称える土地だ、エルフどもが増長するのも仕方ないか。」


ドワーフが大き目の一人ごとをつぶやくいた時、将棋のギャラリーの


一人がクククッみたいな笑い方をした。




不思議な感じの人だ若いのか年寄りなのかわからない。年齢不詳。


シンプルだが良い布で作られた青い服、


この世界で鮮やかな色の布は高価なんだ。


落ち着いた態度に整った顔だけど特徴的なのは…。


「フルオロ・マンチェス伯爵!貴族のあなたが何故ここに。」


俺と同時位に気が付いたらしいドワーフが叫んだ。


「いや。古い知り合いがこの町に居ると知らせがあったのでな。」

伯爵は俺のいたテーブルにエルフ語で話しかけた

「”久しいな、バッチャ。”」


「”久しいなフルオロ。何十年ぶりか。再会を祝って飲むか?”」


テーブルの上の銀貨半分飲んだエルフに話しかけた人物は


横に広がった大きな耳、エルフよりは丸っこい耳をしていた。

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