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 私たちは新居に決めた物件に来ていた。必要な家具や布類などを確認するために各部屋を見て回り、一通り確認し終わったので一息ついているところだった。部屋の向こう側ではエルサたちが忙しく業者とリストの確認をしている。


 私はイザークと結婚することに決めた。元々公式に結婚は決まっていたので何かが変わったわけではないが、心配をかけたお互いの両親に改めて二人の間に何があったかや二人で話し合ったことを説明し、その上で結婚をしたい旨を伝えた。

 両親たちはとても喜んでくれた。


「あの時の、あんな父上の顔は初めて見たな……」


 イザークが呟いた。


「報告した時?」

「ああ」


 私たちが報告をした時、デュメリー伯爵はとても穏やかな顔をされていた。


「報告の後、父上からもっと周りを頼ればいいって言われたんだ。いつも厳しい父上の言葉とは思えないくらい意外だった」


 私も同じことを両親に言われていた。


「ある人に言われたの。真実を見極めて、見極めた上で行動しなさいって」


 リリーのお店の話はしてあるが、薬を飲んで女神に会ったことは大騒ぎになるので内緒だ。


「真実を知る目的は、次の行動に繋げることだと思うの。知って行動しないのと知らないで行動しないのは意味が違うと思うし。

 私は傷つくのが怖くて真実を知ることができなかった。結果一人で悩んで、妄想して必要以上に傷ついてた」


 私は窓際にいるイザークの元に歩みを進める。

 レストランの件からイザークは少し顔つきが変わった。以前は何かから自分を守るように表情が硬かったが、余裕が感じられるような表情になった。


「傷を浅くできるなら怖さは和らぐと思うの」

「心構えをするってこと?」

「そうね、状況を客観的に見るとか、違う考えを持つとかの方がいいかしら、それも具体的に」

「例えば?」

「私にはイザークしかいないって考えしか持たない場合と、イザークより素敵な男性は他にも大勢いるって考えを追加で持っておくのとでは違うでしょ?」

「理解はできるけど、なんか傷つくな」

「受け止めるクッションの話でしょ? クッションが多ければ多いほど恐怖は和らぐと思うわ。気持ちだけじゃなくて、物理的にも用意できるとなおいいけど」

「それは聞かないでおくよ。立ち直れないかもしれないから」


 イザークは肩を落として首を振った。


「そうね。なんでも知ればいいってわけじゃないわ」


 私が茶化すとイザークは拗ねて横を向いた。


「だって、知り過ぎて判断ができなくなったり、心が折れてしまうのは違うでしょ? 不可抗力で知ってしまったらどうしようもないけど」

「難しいね。知らなきゃ知らないで行動がちぐはぐになりそうだし」


 私はイザークの隣に並んで目の前に広がるセントレア公園を眺める。


「デュメリー伯爵様の言われた頼るって意味は、知ることも含めて自分が責任を持つ範囲を明確にして、足りない部分を依頼するってことだと思うの。それが甘えるってこととの違いなのかなって」


 今回の件について両親やお兄様に間に入ってもらうこともできたし、相談することもできた。いくらでも方法はあったのに私は一人で殻に閉じこもっていた。


「そう言えば、なんであの雨の日優しかったの?」

「え⁉︎ 今それを聞くの?」

「聞きたいわ、とても」


 私の満面の笑みにイザークが狼狽する。


「それは知らなくていい真実!」


 顔を背けるイザークに私は笑った。

 セントレア公園の木々は色づき始め、空は高く澄み渡りどこまでも美しい青空が広がっていた。


 End

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

楽しんでいただけたら幸いです。



●2018/12/1 追記●

たくさんの感想ありがとうございます。

やっぱりとか、なるほどと思うところも多々あり、楽しく読ませていただきました。

こちらに設定や、作成過程で私が考えたり悩んだりしたことを記載しましたので、ご参考程度にお読みいただければと思います。

いただいた全ての感想の回答になっていないないところはご容赦ください。また、疑問が残るところはそこまで深掘りしていないとご理解いただけたらと思います。




1)全体的に

キーラ視点なのでキーラが気づかない(だろう)ところは書いていません。

全部書くと急成長?した感が半端なく。

途中で視点の選択誤ったなと思いましたが、私の実力で今視点変えるのは無理だと思い、今回はキーラのみで書きました。ご容赦ください。



2)エンドについて

最後はキーラとイザークが結ばれたからハッピーエンドではなく、二人が前を向いて今後の関係を建設的に構築できるようになったからハッピーエンドとしています。

ようやくスタートラインに立った感じでしょうか。

ハッピーエンドのタグが良くなかったのかな、、、気をつけよう。



3)イザークとやり直すか、別れるか

やり直すことにしたのは、相手を責めるだけでなく「臆病」なキーラにも自分を振り返って欲しかったからです。二人の揉め事はお互いがいないと成り立たないので。

誠心誠意謝っているし、キーラには許して向き合う苦しみを選んでもらいました(まあ理由が理由なだけに大して苦しくもないだろうけど)



4)理由がしょうもないこと

幼い二人ができる範囲(キーラが許せて、イザークが実行できそうなこと)で、あの程度にしました。

大そうな理由だったら、キーラは精神病みそうだしイザークは実行に移せないだろうと。



5)言い訳を一気に出したこと

作者の好みです(笑。

小出しにされると不愉快な気分になる回数と時間が増えるので、嫌なんですよねぇ。

でもご意見もごもっともなので、もう少し上手に出せるよう次回作以降頑張ります。



6)婚約破棄の理由について記載しなかった

当初記載していましたが、、、

 ・対話形式にして一問一答にすると冗長(キーラのキャラクターで一問一答とかできないかな?とか)かつキーラの想像力のなさが増す(キーラよ、あの流れからしょうもない理由だとすら推測できないのか、みたいな)

 ・イザークが言うと、理由がしょうもないだけに残念さに追い打ち

 ・キーラの心の声にすると上から目線な感じ

などなど文章にするとしっくりこなくて。他の理由を消せば良かったんですけどね。上手に引き算できませんでした。

キーラの驚きでそれどころではなくなった程で流した次第です。

作者の力不足ということでご容赦ください。



7)ジェラルドについて

最初から結ばれることは想定していませんでした。「出会い運、ヨカッタネ」になってしまうので。

ジェラルドはイザークと対になるように設定していまして、愛を囁かず条件でキーラにプロポーズしてたりします。

書きながら、今のイザークではジェラルドのライバルですらないなーとか、結婚しても今のキーラじゃ手に余るだろうなとか思っていました。



8)両親について

当然と言えば当然ですが、親からすれば大したことないです。二人がまだ好きなの知っていただろうし、キーラがコソコソしてたのも知っていただろうと。

子供の残念な様子を眺めていて、いい加減しびれを切らした感じでしょうか。

キーラに結婚を伝えるシーンは、選択肢を与えつつ最後の意思を確認した(もう大人なんだし発言に責任持とうね)イメージで書きました。

キーラが部屋を出た後ため息ついてるんだろうな、とか思ってました。



9)臆病な性格について

性格は簡単に変わりません。なので二人の「臆病」な性格を補うための様々なスキルを身につけていくことで今後頑張って欲しいなと、モノの見方や発想の転換、親に頼る下りを入れました。



10)ネリ

カフェでのネリは躓いただけです。むしろイザークの噂の相手にされた被害者でした。

夜会ではイザークに「さっさと紹介しなさいよ」とか言ってるはず。

当初レストランの件の後、ネリの話を入れていたんですけどまとまりが悪く、従姉妹で結婚出来ないことがわかればいいかと消しました。従姉妹、結婚できるのか、失敗した。



おまけ1)プレゼントについて

当初今までのプレゼントをイザークから貰った設定を入れていましたが、書いててキーラも渡してないじゃんと。

(お互いお花とお菓子くらいは持ってお誕生日の晩餐には参加しているはず。キーラは友達あたりが宝石とか貰っているのを聞いて、羨ましいと思っている程度だろうと推測され)

「お祝いの在り方」も二人で築くものだなと思いまして消しました。キーラはまだ気づいてないのでセリフは残しました。



おまけ2)お友達

男友達はイザークの性格を知った上で、「お前大丈夫なの?」的な会話を貴族っぽく丁寧にかつ、キーラにも「忠告」って聞こえる感じで書いたら、重くなってしまった。。。

表現に問題ありでした。せめて視点変えないとダメだったなと反省。




最後になりましたが、拙い文章にお付き合いいただきましてありがとうございました。

もともと可愛らしくて明るい話にするつもりで書いていたんですが、推敲を重ねるごとに暗くなるし、残念な二人になるしで大変でした。。。しんどかった。

話を自分の思ったところに落としてまとめるって難しいですねぇ。

納得いかないところもあるとは思いますが、私の未熟さ故ご容赦いただければ幸いです。


二人のこれからにたくさん大切なものが増えて、「あの時の夜会でダンス踊らなくて私たち浮いてたよね!」って笑えるくらい、素敵な思い出を作ってくれるといいなと。


ありがとうございました。

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