思いがけない訪問者
高島の予測は大きく外れてあっという間に5日も過ぎてしまっていた。
週が開けて月曜日、明後日には自主休校を開けての登校日を迎えてしまう。
しかし、ちょっとした知識があれば誰にでも可能と分かってからの進展は何もなかった。
サーバーからバックアップを引っ張ってきて、偽装アドレスでメールを送信していた誰か。
サーバーに管理者権限でアクセスしたログは、日時は記録されているものの、誰が何処からという情報が絞れない。
厳密にはアクセスしたIPアドレスが残ってはいるのだが、そんなものはツールを使えば誤魔化せるのだ。
プロクシのアドレスから個人に辿り着くなんてスキルは僕にはない。
このまま罪を認めて、第二の僕が出ないように、学校のセキュリティについて、対策してもらうように警告するくらいしか残っていない。
僕は自分の罪を正確に記すように、セキュリティの穴を刻々とレポートにまとめていた。
ピンポーン。
おや、誰か来たようだ……。
といって、僕を消しに来るような機関など存在しない。セキュリティホールを潰されて困る奴こそ犯人とは言えるが、それを見つける事は不可能だろう。
高島の病気が伝染ったかな……。
苦笑しながら玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは、思わぬ人物だった。
「た、多邑さん……な、何で?」
「今日、日直だからアンタに宿題を持ってきたのよ」
そんな訳はない。日直だからと個人の家の住所という個人情報を伝えることなんてないはずだ。
はい、これと渡されるプリントの束に僕はうっと詰まる。明後日には登校というタイミングで、束を渡されても終われるとは思えない量だ。
まるで一週間分をあえて貯めてから渡しにきたような措置。
与えられた課題をこなせなかったと言うことで、評価を下げようという手法かと邪推してしまう。
「で……さ。実際、どうなのよ」
「ど、どうって?」
「アンタがやったのかって事」
何を今更聞いてくるんだ。
「ぼ、僕は、やって、ない」
「ホントに?」
睨みつけてくる女の子にタジタジしながらも、しっかりと頷いた。
「私はね、アンタが犯人かは大事じゃないの。友達がまだ狙われてるかどうかが知りたい」
「さ、佐益さんの事、だよね」
「今は御騰くんと久保形くんがフォローしてるから、近づく奴はいないと思うけど、アンタが犯人じゃないなら、また狙われる可能性もあるじゃない」
「そ、それは……」
そうか。僕というスケープゴートを用意したからと言って、犯行が終わるわけじゃないのか。
現に今でもサーバーは覗き放題だし、犯人は情報を集めているのかもしれない。
僕は自分が被害者だと思い込んでいたが、本当の被害者は佐益さんなんだ。
「あ……」
となれば、まだ犯人を引きずり出す事はできるのか?
「どうしたのよ。何かあるの?」
「そ、その、多邑さんが、本当の犯人を、知りたいなら、協力して欲しい事が、あるんだけど」
僕は最後の賭けに出るべく、提案してみることにした。
僕は自分の思いつきに深く考えず多邑さんを部屋に招き入れた。あとに
付けっぱなしのPC画面を見せて、学内でのメールが監視されている事。それが他人から丸見えになっている事を伝えた。
「や、やっぱり、アンタが犯人なんじゃ!」
「僕が犯人なら、こんな事バラさないよ」
「……そ、それもそうね。でもこんな……」
学校がメールを監視している事実と、それがだだ漏れになっている事実に愕然とする多邑さん。
もちろん、特定のワードで抽出される事も教えたが、そんな事は問題じゃないだろう。プライベートが覗かれているという事実は、僕なんかよりもずっとショックなはずだ。
「でも今はそこが問題じゃない。ここを真犯人もまだ見れている点が問題なんだ」
「え、あ、うん」
そして犯人の狙いは僕を貶める事じゃなく、ターゲットに近づく事。そう考えれば犯人の予測も朧気に見えてきた。




