メールの調査
メールの詳細を確認していく。
差出人は何だコレ?
数字の羅列でドメインを示す@すら付いてない。となると電話番号で送れるショートメールかというとそうでもない。
桁数は……23桁の数字。
宛先も同様に、僕のメアドではなく数字が記載されていた。
何らかの要因で誤送信されたとみるべきか。
「それに届いてるのは1件じゃないな」
受信ボックスには幾つかのメールが溜まっていた。差出人の数字は同じ……みたいだな。
内容を確認していく。
『誰かケータイ鳴ってるし』
『あれ誰だっけ?』
『名前と顔が一致しないわ~』
『お〜い、寝ちゃったの?』
どうやら授業中にメールのやりとりをしていたらしい。僕の事にも少し触れている。
その後も他愛のない暇つぶしの会話や、放課後の予定を決めるメールがやり取りされて、しばらく途絶えている。
「内容的に女子か」
駅前のショッピングモールで遊ぶ予定をしていて、服飾に関する記載が多く見られる事から予測できる。
クラスの女子は16人、その誰かである事は間違いない。ただ内容から特定には至らない。部活には入っていないようなので、そこから絞り込むことはできそうだが……。
「女子が何部に所属してるかとか知らないからなぁ」
では差出人の数字は?
スマホの画面を見ながらネットで検索を掛けてみるが、ヒットする事はなかった。
宛先にある数字もヒットなし。
メール、混信で検索すると、プロバイダー側で混信するケースはあるみたいだな。
そっちのトラブルだとしたら、放っておけば直るか。
会話が続いている事を見ると、送信先にもちゃんと届いているようだし、深く考える必要はないな。
これ以上、できることもなさそうだし、僕は部室を出て帰ることにした。
「ただいま〜」
と言っても返事はない。父は単身赴任だし、母も今日は夜勤のはずだ。
帰りに買ってきたコンビニ弁当を冷蔵庫に入れてから、部屋へと戻る。
適当に時間を潰して、お腹が空いてきたら弁当を温めて晩御飯。風呂はシャワーで済ませて、再び自室。
何が変わることのない日常だ。
変な混信騒ぎはあったが、放課後から追加で届くこともなく、トラブルも解消されたんだろう。
ちょっとした事件かとも思ったが、世の中それほど変化があるものでもない。
テレビで当たり障りのないバラエティを流しながら、スマホのゲームをポチポチ。
そうこうするうちに一日は終わっていった。
翌日、何度かマナーモードになっているかを確認しつつ授業を受ける。
昨日の着信騒ぎなど誰も気には止めてないんだろうけど。それでも周囲に気を配って確認してしまう。
まあ朝から友達としゃべるのに夢中で、僕を気に留める奴はいない。
安心する一方、少し寂しさを感じながら午前中を過ごした。
昼休み、特に移動する必要も無く、朝に買ってきたパンと飲み物を広げて昼食。
昨日のうちに入れ替えておいた深夜アニメを、スマホで再生しながらイヤホンで聞く。
マナーモードのままでもイヤホン付ければ聞こえるんだ……いや、情強の僕は当然知ってたけど!
わざわざ切り替えて、授業中にいらぬ視線を集める必要はなかったんだな。
ほのぼの日常系のアニメを見ながら昼休みに癒され、午後の授業へと突入。
周囲に気を配って一日を過ごしたせいか、何だか疲れた。授業中も誰かに見られている気がして、窓の外を見る振りをして、教室内を見渡してみたりもする。
もちろん、僕を見ているような物好きはいない。
気のせいというか、自意識過剰だったな。
放課後になって、僕は部室へと歩いていった。
今日も部室には誰もいない。
中間テストが終わり、梅雨に差し掛かりつつある時期は、部屋に熱気が溜まって蒸しっとしている。
奥の窓を開けて、棚に置いてあったドアストッパーを手に取り、入り口に戻った。
何気なく扉を開けると。
「おわっ」
扉の前に誰か立っていた。




