授業中に届いたメール
正直、推理ものなんか書けない作家のたわいない事件モノですので、本格的なミステリーを望む方には向かないかと思います。
学園内で起こる些細な事件、それに直面した主人公が右往左往する様を描いていく予定です。
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どこかから音楽が聞こえる。
一昔前に放送された深夜アニメの主題歌だ。宇宙戦争を題材にロボットに乗って戦うありふれたストーリー。端々にオリジナリティを醸し出そうとして、どこかちぐはぐで。主人公の隠された才能でムリヤリ乗り切るような乱暴な展開。
アニメとしての評価は低く、キャラクターもどこかで見たようなキャラ。声優はあまり馴染みのない演技もイマイチな新人。深夜枠の低予算ぶりが透けて見える作品だった。
それでも初めてその手のアニメに触れた人間には新鮮で楽しく……。
「おい、西藤。お前だろ」
「ふぇ?」
背後から背中をつつかれて、意識が覚醒する。
そこは教室。昼休み後の五限目、古典の時間。お腹が満たされた状態で、意味の分からないもそもそとした古文を、定年間近の教師が読み上げている授業は、容易に意識を失わせる。
やがて教室に流れるメロディが僕のスマホから流れているのに思い至り、慌てて電源を切った。
クスクスとした笑い声はごく一部。ほとんどの生徒は大人しい。僕と同じく、意識を失っているのだろう。
「す、すいません」
謝る僕をちらりと見ただけで、教師からのお咎めは特にない。もそもそと古文を読み続けている。
後ろから僕をつついた男子生徒、確か志藤だったかも、既に僕から興味を失いうつらうつらしていた。
昼休みに録画したアニメを見ていて、普段のマナーモードから切り替えたままになっていたようだ。それに普段から電話の着信も、メールも来ないので油断していた。
僕が羞恥から少し覚醒して授業を過ごしていたものの、特に変化はないまま。眠気しかもたらさない古典の授業で、僕の事を気にする生徒などいないのだ。
少しは気を張っていた僕も、すぐに授業が左から右へ抜けはじめ、再び意識を手放していた。
「火曜日の時間割は最悪なのか、最高なのか」
「最高じゃね? 寝てても文句言う先生じゃないしさ」
「爆睡タイムだよなぁ~」
古典から数学という授業を経て放課後へと時間を移していた。数学の教師は四十台半ばの男性教諭で、黒板にひたすら公式を書き連ねるだけの授業で、それもまた眠気を誘う授業だった。
結果として昼休みからをほとんど睡眠で過ごす生徒が多い。
結局、僕のスマホから流れたメロディも誰の気にも止まることはなかったのだ。
「さてと……」
僕は部室へ向かって教室を出た。
僕の所属する部活は、電子情報研究会という名前の部活だ。
その昔、インターネットが存在せずパソコン通信と呼ばれていた頃から存続する部で、電子媒体を経由して伝搬する情報を分析するという名目の部活動を行っている。
その実はネットの話題で盛り上がるだけのオタク系倶楽部。その部員数も数人で、何とか存続しているレベルに過ぎなかった。
部室にあるPCは型遅れのマシンが一台。ネットの閲覧程度なら問題ないが、動画再生でもよく引きつるし、広告バナーが多く表示されれば、画面が固まる事すらある。
もちろん、情強たる僕にかかれば無用な広告など表示しないように設定されているけどな。
ただネットワークには年齢制限フィルターも掛かっているし、閲覧できる内容は限られていた。まぁ、学校で年齢制限に引っかかるようなものを見ることはないけど。
適当にゲーム系のブログやらアニメ系のブログを周り、代わり映えのしない話題で盛り上がっているのを見て、ため息をつきながら動画サイトも見て回る。
素人のゲーム実況やら歌ってみた、踊ってみた系のトレンド。それらにも特に目を引く内容はなかった。
「まぁ、そんなもんだよな」
適当な記事に煽りコメントを残していると、思ったよりも時間が過ぎていて窓の外は夕焼けに染まっていた。今日は誰も部活に顔を出さなかったらしい。古びたPCしかない部室に人が来る方が珍しいけど。
「あ、そういえば」
時間を確認しようとしてスマホを取り出し、電源が切れているのに気付いた。
そういえば何のメールだったんだ?
迷惑系のメールはフィルタで弾いているはず。それでもかいくぐってやってくるメールはどうしてもあるのだが。後は部活仲間が極稀に送ってくるくらいか。
『あ~餅田の授業、あと何分起きてられる?』
餅田というのは、古典の教師だ。タイミング的には、授業中。クラスメイトの誰かからのメールという事か。
しかし、高度なセキュリティを保持している僕のメアドは、クラスメイトなどには教えていない。別に友達がいないとかじゃなく、教える必要がないだけだ。勘違いはするなよ。
「一体どこから?」
俺のメアドが漏れているとしたら、由々しき問題だ……問題か?
何にせよ、送られてきたメールを調べてみることにした。




