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僕のとった行動

 僕が暴走しがちな高島と比奈森さんを抑えるために取った行動は、電子的なアプローチではなかった。

 朝、登校した僕は佐益さんがやってくるのを待って話しかける事にした。

 教室では目立つので廊下で声を掛ける。



「あ、あの、佐益さんっ」

「何よアンタ。ミサキに用があるなら、私を通しなさいよね」


 隣には多邑さんの姿があった。登校時から一緒とは、本当に仲が良いようだ。

 僕と佐益さんの間に入るように位置どりして、仁王立ちになる。


「わ、わかったよ。多邑さんに見てもらっても構わないから」


 僕はスマホのメール受信欄を開くと、多邑さんへと渡した。


「先週辺りから訳の分からないメールが入ってきて……」

「こ、これって!」


 多邑さんは画面を食い入るように見入って、確認を終えると僕の方を睨みつけてきた。


「アンタだったのね!」

「へっ!?」


 思わぬ返答に僕の説明は遮られた。




「昨日、御騰くんに聞いたんだよ。訳の分からないメールが届くようになったって!」


 多邑さんは早口に説明してきて、僕は一気に聞き手に回らされる。

 御騰くんの元にメールが届き始めたのは、10日ほど前。御騰くんが佐益さんに告白してからだった。


 色良い返事は貰えなかった御騰くんは、そのメールを不審に思いつつ、佐益さんの予定を示すメールの信憑性を確認するために何度か彼女の動向を観察した。

 すると駅前の何処そこの店に行くとか、寄り道せずにまっすぐ帰る。更には急に帰るルートを変えるといった情報は、かなりの正確性で的中していた。


「何らかの方法で行動を監視している人がいるって教えてくれたのよ!」

「そ、それは、僕じゃ」

「そういえばラーメン屋の前にルートを変えた時、すれ違ったような……」

「ホント? ミサキ!」

「や、ぼ、僕も……」


 言葉を挟もうにも多邑さんの勢いが強く、タイミングを封じられてしまう。


「アンタがメールを受信して、御騰くんに教えてたんでしょ!」

「ち、違っ」


 佐益さんは多邑さんの陰に隠れるように身を竦め、僕を危険人物のように見詰めてきた。


「どうしたんだい?」


 そこにやって来たのは、学級委員を務める久保形くぼかたくんだった。




 凄い剣幕の多邑さんをなだめながら事情を聞いていく。僕としては否定したいところだが、まずは多邑さんからという久保形くんに止められる。


「なるほど。とりあえず、そのメールを確認させてもらっていいかな?」


 久保形くんは僕と佐益さんの双方に確認を取ってから、メールを見ようとする。


「えっと、西藤くん。ロック解除は何番かな?」

「1185だよ」

「ありがとう」


 久保形くんはスマホを操作してメールの確認を行おうとするが、すぐに慌てたような声を上げた。


「こ、これはなんだい、西藤くん!」

「え?」


 久保形くんが見せてきた画面には、見覚えのない画面が表示されていた。


『見られちゃマズイモノを消去中!』


 という文字とバイ菌を擬人化したようなキャラが、手にした三叉の鉾でキューブを突いて壊していくアニメーション。

 その下には作業の進捗を示すプログレスバーが、徐々に伸びていっている。


「な、何だよソレ。僕は知らないよ!」

「データ消去プログラムだろっ。停止させるんだ!」

「そんなっ、僕は知らないんだ!」


 処理を中断させようにも解除方法がわからず、電源キーすら反応がない。

 様々な操作を繰り返すうちに、バーは100%に到達し、消去が完了したというメッセージが無情に表示される。

 メールはおろか、中に入っていたアプリやデータも全て消え去っていて、初期化されてしまっていた。




キーンコーンカーンコーン……。


 朝のHRへの予鈴がなりはじめ、久保形くんがこの場の裁定を下す。


「このスマホは僕の方で預からせてもらう。証拠はなくなったけど、先生に報告しないといけないと思う」


 まるで死刑宣告を受けたような心境だ。ただここで声を荒げたところで不信を拭うことはできないだろう。

 僕を睨みつける多邑さんは、佐益さんを連れて先に教室へと入り、僕は久保形くんに促される。


「西藤くんの言い分もちゃんと聞いてから先生に報告するから」


 優しげに微笑みながら僕を励ますように、背中をポンポンと叩いて教室へと誘った。

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