放課後の張り込み
「佐益さんが犯人に気づいている……?」
「もしくは、明確にはわからないが心当たりがあるとか」
「うう〜ん」
「例えば誰かに告白されたけど振っちゃったとか」
「えっ!?」
今まで聞き手に回っていた比奈森さんからの一言に僕は振り返る。
「佐益さんは結構モテるはずだから、それなりに告白もされるはず」
「そんな話を聞いた?」
「ううん、私はグループじゃないから。でもそういう単語は飛び交ってる」
1人静かに本を読んでいる事の多い比奈森さんだが、耳は色々と仕事をしているようだ。
僕も似たような事をしてるし。
「なるほど。フラれた男がストーカーになるのは常道であるな」
短絡的かと思うが、男は結構単純だ。ひねくれた思考を持つ僕としては、否定に回りたいが比奈森さんの意見というだけで日和ってしまっている。
「放課後つけられてるって事は、帰宅部かな?」
「佐益さんが自転車なら、追う方も自転車だろうな」
「となれば、下校時に自転車置き場を張れば」
「かなり対象を絞れるであるな」
キーンコーン、カーンコーン。
議論に白熱して昼休みが終わろうとしていた。
「では授業終了後に、自転車置き場に」
「我輩は同志のクラスメイトは知らないので、外で佐益女史を追ってみよう」
慌ただしく方針を定めて、僕たちは教室へと戻った。
『ごめんね』
放課後を前にメールが届く。少しドキリとする一文。
『せっかくだからどっか寄ってく? おごるよ』
『そっか、じゃあ今度ね』
『高い! それは高いよ〜』
どうやら友達が一緒に帰ってくれるようだ。ただ何らかの理由で寄り道はしない。
とりあえず自転車置き場へ急いだ方が良さそうだ。
さほど運動神経が良いわけでもなく、足は早くもないが、普通に帰ろうとする生徒よりは、小走りに向かう僕の方が早い。
比奈森さんを誘いたいところだが、今は時間との戦いだ。
自転車置き場は屋根だけがある建物。前輪をはめ込む溝があり、止める間隔は決まっていた。
これにより、出し入れの際に引っかかる事が減り、以前よりはスムーズに下校できるようになったそうだ。
止める場所は学年ごとの区切りがある。2年のスペースはかなりの台数が止まっていて、ほぼ満車。
そこから早めにやって来た男子から、自転車を取り出して校門を出て行く。
佐益さんが来る前にも、何人かのクラスメイトがやって来て、自転車を出していった。
そして佐伯さんは、多邑さんと並んで校門を出る。
その後から自転車を出して出ていくのは……あれは杜元くんか?
「あれってクラスの子だよね」
「えぁっ、比奈森さん。うん、確か杜元くん」
いつの間にかすぐ側に来ていた比奈森さんに答える。
「追いかけようか」
「うん」
しかし、杜元くんは校門を出るなり、佐益さんとは逆の方へと走っていった。
「ハズレかぁ」
「見つからないように回り込んで行くのかも?」
「だとしても自転車には追いつけないな」
「だね」
張り込みの真似事なんて素人には無理だったか。後は高島が何か確認できてるかだな。
僕達は先に部室へと戻ることにした。




