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二十四話

 周囲を見渡すと小さな光が見えた。

≪コッチキテ!!コッチ≫

 再び声がし、光が揺れ出した。催促しているようだ。

『モンスターの類か?』

 優の疑問に危機感を感じたのか、こちらに近づいてきた。

 ふわふわといくつも浮かぶ手のひらサイズの光の中に、色とりどりの小さな花が咲いていた。花は元気がなく枯れ始めているように見える。

『まさか精霊か!?』

 優が驚きの声を上げ精霊を見る。

『精霊は、自然に魔力が集まった時にその周囲にある何かを核に生まれる生命の事だ。滅多に人前に姿を見せる事なんてない筈なんだが。』

≪カアサマタスケテ≫

『助けてって言ってるし行ってみない?』

 栄治が言った。少なくとも騙そうとしているようには見えない。

『行こう。なにかあったら逃げればいいだろ。』

≪コッチコッチ!!≫


『これは……』

 しばらく精霊達に連れられ歩くと突然開かれた場所に出た。小さな広場のようなそこは草もなく周りの木々も元気がない。どことなく重い空気に満ちている。

≪カアサマ!!≫

 精霊達が一本の大樹へ集まった。長く森を見守って来たであろう大樹は、葉を枯らし根や幹も黒ずみもう死にかけている事がすぐに分かった。

≪貴方達は誰ですか?≫

 どこからか女性の声が聞こえてきた。周りには自分達と精霊しかいない。

≪こちらです≫

 ふと大樹を見ると精霊達よりも一回り大きな精霊が出て来た。小さな精霊と違い光の中に小さな女の子がいる。先ほどの声の主らしい。

≪私はこの大樹を憑代に生きる精霊です。この子たちは周りの草花の精霊達です。≫

『自分たちは、彼らにあなたを助けてほしいと言われここまで来ました。なにをしたら良いでしょうか?』

≪無理でしょう。私は長く「彼」と共にいました。「彼」と離れては生きていけません。≫

 大樹を彼と呼んだ精霊は黒ずんだ彼から離れない。

≪南から来た瘴気に少しづつ汚染されもうどうしようもありません。≫

『森に瘴気だと!?』

 優が叫び声を上げた。

『南にはいくつもの村があるだろう。瘴気が発生したらすぐにわかるはずだろ!!』

≪私にはこの森の一部の事しかわかりません。しかし南側の大半が汚染されここも長くは持たないことは分ります。ここを見てください。≫

 精霊が大樹の根にふれると黒い靄が漏れ出した、瘴気だ。

≪皆さんにお願いが2つあります。≫

『……なんですか。』

≪1つは彼が魔物になる前に切っていただきたい。≫

『……あなたはどうなるのですか。その樹が憑代なのでしょう。』

≪私は彼と共に生まれたのです。最後も彼と一緒にいたいと思っています。≫

『しかしあなたを母と慕う彼らはどうするのですか?』

 小さな光たちは、震えながら母に寄り添っている。

≪そこで2つ目のお願いです。この子たちをあなたと一緒に連れて行ってほしいのです。≫

≪貴方を憑代にしたらまだ生きていけるでしょう。≫

 彼女は急に飛び上がり周囲を回り出した。光を放ちながら飛ぶ姿はとても美しい。

≪これは私から貴方たちへの祝福です。これでこの子たちと契約を結べます。彼らは大地や草木の精霊です、貴方達のお役に立つでしょう。≫

 いつの間にか精霊たちが周囲に集まり手や肩に乗っていた。とたん右肩に小さな痛みが走り、見ると絡まりあう蔦のような紋様が刻まれていた。

≪それは「精霊紋」ですね。精霊との親和性が高いと稀に表れるものです。貴方はこの子たちにとても好かれているようですね≫

『充吾くんはすごいね。僕たちも契約はできたけどそれは出なかったよ。』

 感心したように栄治が言う。

『たまたまだよ。そんなにすごくないし。』

≪皆さんよろしいですか。≫

 彼女の声に顔を上げる。あとやることが一つ残っている。

『分かりました。やるよ2人とも。』

 

 約20分後、大樹は大きな音をたてその身を大地に横たえた。もう魔物になることはないだろう。

『……いくぞ。村長にこの事を話さないといけないからな。』

 最初に話したのは優だった。すでに背を向けている。

『うん急がないとね。』

 栄治も立ち上がった。その顔には、少なくない悲しみとそれ以上の使命感があった。

『分かった行こう。』

 自分も歩き出す。周囲の精霊達もいつの間にか消えている。

 一度だけ振り返ると、そこには朽ちた大樹がさびしげに横たわりどこか痛々しさを感じさせた。

 

 まだ自分はこの出来事の重大性を理解していなかった。それを理解したのはその日の夜、魔物たちの襲撃が起きた時だった。 

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