ヘアゴム
翔子は洗濯物を畳む途中で、凝った肩を回した。
「……はぁ。何か今日はだるいな」
「お母さん、大丈夫?」
「んー、大丈夫だ。けど、肩がやたら凝ってめんどい……。歳かなぁ」
「…………乳」
「ん? なんか言ったか、まきる」
「い、いや、何でもないよっ」
「? まあ無いならいいけど」
「あっ、そうだっ。あたしが肩もみしようか?」
「あ? 急になんだよ」
「たまには良いじゃない。あたしだって、肩もみくらいなら出来るし」
「……そうだな。んじゃ、頼む」
「うん! …………よいしょ、っと。はい、むこう向いて座って」
「ん」
「それじゃいくよっ。…………もみもみ」
「お、上手いもんだな」
「ふふっ、陸上でマッサージとかは良くやるからねっ」
「あー、極楽極楽」
「…………お母さん、髪の毛結んで良い? ちょっとやりにくいかも」
「ん? 別に良いぞ。ヘアゴムは、と……あったあった。ほら」
「ありがとー」
「……そろそろ切りに行こうかな」
「えっ、切るの? こんなに綺麗なのに」
「光太郎が伸ばせ伸ばせうるさいから伸ばしてるけど、結構邪魔だぞ? これ」
「えー、あたしも切って欲しく無いよー」
「……まあ、あたしは良いけどな。どっちでも」
「じゃあこのままで決定! …………よし、出来たっ」
「首がスースーする」
「これでやりやす……く…………」
「どした、まきる?」
「…………うなじって、良いよね」
「おやじかおまえは」
「だってだって! 普段見えなかった部分が見える、って良くない? それに、うなじを見せる、って相手を信頼してる証だよ? ズキュンと来るよっ」
「分かったから早く続き」
「伝わんないかなぁ、この感じ。……もみもみ…………もみっ」
「変なこと揉むなっ」




