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第四十九花「思考」

私が七華にちゃんと戻ってから、魔を取り巻く環境が大きく変わっている気がする。

いや、もともとそうだったのかもしれない。自我のある魔は自分の存在を隠し、裏で力をつけてきたのだろう。

目の前にいるやつもその内の一体。

あの日、魔の少年が言っていた「黒」に属しているのではないか。

「君は、話せるのかい?」

目の前の存在に問いかける。

しかし、返ってきたのは先ほどと比べ物にならない程のスピードの剣だった。

体を構成する無数の剣の内の一本が飛んできた。

「……っ」

頬を抉られる。反応が遅れた。

「そっちがその気なら」

私もギアを一つ上げ、スピードに対応する。




そのまま激しい猛攻が続いた。

そして、その時になってようやく、自分が相手の思う壺にはまっていたことを悟る。

最初の一撃は、私を戦闘に集中させるためだけに放たれたものだった。

そこからは時間稼ぎだった。

そこで、ようやく目的に気づく。

こいつは、私を他から隔離するためだけに送り込まれたやつなのではないかと。

もし、本当にそうなら、今頃あちらには、私以外を殺すことが可能な手練れを送り込んでいるのではないか。

藍達のいる方へと、気を取られてしまった。

ーー思考は、体を鈍らせる。

剣の魔は、その一瞬を見逃さなかった。

突如、体を構成している無数の剣全てが人の形をなくし、不規則に飛ぶ。

「あ……」

油断した。捌ききれない。

無数の剣が四方八方から襲いかかる。

「ゴフっ」

吐血。そして身体中の至る所に穴が空くのがわかる。

私は、身体中を串刺しにされてしまった。


地面に倒れる。土の苦い匂いが、敗北の味を加速させる。

そして、意識を手放した。



ーー藍視点


なぜかわからない焦燥感を感じる。あの場に一人紫を置いてきてよかったのかと不安になる。そんなことは初めてだった。

しかし、すぐにそれで正しかったのだと自分に言い聞かせる。

目的は、「大統領の護衛」なんだと。

すぐに華や沈や、他の大統領直属の護衛と合流する。

「襲撃がありました。ここは一旦RWの支部で身を隠しましょう」

アレクサンダーが声をかける。

異論は出ない。すぐに移動を始める。

私は思った。なぜ、こんなにも危険なのに、会談など催したのだろうと。

しかし、すぐにそんな愚考は捨てる。今は考えたってしょうがない。

余計な思考は人を鈍らせる。目の前の集中するべきだ。

「……誰か、来ますね」

入り口で待機していると、明らかな人影が三つ。

「アレクサンダーさん、先ほど少しは戦えると言いましたが、あれはいけそうですか?」

人影から目を離さず、横に問いかける。

「大丈夫……と言いたいところだけど、わかりませんね……すみません」

「いいえ、率直に言ってくれて感謝します」

頭の中で、すぐに戦力の配分を決める。

櫛川は怪我人を回復させるのを手伝っている。その人達も戻ってくるだろうが、カウントはしない方がいいだろう。

櫛川がいれば、まだ大統領の護衛を厚くできただろうが、仕方ない。

「すみません、仕切らせてもらいます。私の指示に従ってもらえますか?」

アレクサンダー含め、全員が頷く。

「ありがとうございます。では、アレクサンダーさんは他の護衛を連れて、左を対応してください。華さんと沈さんは右を。他国の直属の人たちは、全員で大統領を守ってください」

すぐに指示を飛ばす。

その時、アレクサンダーが慌てた様子で話しかけてくる。

「ちょ、ちょっと待ってください!それでは真ん中はあなた一人で対応しないといけないじゃないですか!」

最も、その通りだ。

「大丈夫です。これは傲慢ではありませんから」

そう、傲慢じゃない。

「私の異能は、周りを気にしない方が、百倍と言ってもいいほど強いですから」


ーー大統領護衛戦、開始。

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