95、子供は少し会わない間に成長するもの
「エル、ちょっといいか?」
リゼルが申し訳なさそうに声を掛けてくる。
威圧はメノウのみ限定に向かっているのでリゼル達は問題なく動けるようだ。
「いいよ?」
メノウを掴んだ手は離さないままリゼルに向き直るとその後ろからハルルとラピスもやって来た。
「...見たことがある顔だ。アルネストで会ったか?」
リゼルを見たメノウが顎に手をあてじっと見つめる。
「あ、はい!賢者様お久しぶりです。アルネスト大帝国第四元王子リゼルディスと申します。今はリゼルと名乗っております。」
メノウはこれ幸いと話をそらすためにリゼルに近寄り、姫はどうなったのかと切り出した。
「ハルネーゼの呪いは解けました、賢者様の弟子であるエル..エルノラのお陰です。」
ちらりとこちらを確認したメノウが瞳の奥でこちらの意図をつかもうと思索しているのがわかった。
「...そうか、弟子が役にたって鼻が高いよ。あ~、エルノラ良くやったな。」
少し顔がひきつりながらも笑顔で頭を撫でてくるメノウの目はやはり泳いでいる。
「師匠も色々活躍されていますよね~、聞きたいな~。」
「ははっ、その話はとりあえずここでの用事を終わらせてからにしようか。」
そそくさとその場から早く退散しようとしているが私が掴んでいるので阻まれる。
「あ~、挨拶が目的じゃないんだ...。」
言いづらそうにしているリゼルがメノウに哀れみの視線を送りながら話を切り出した。
「今、ナトと黒から連絡がはいった。ナトを奴隷市場に売った奴がいたらしい。そいつは魔王に近づいてる様だから調べたいそうだ。」
ナハトが魔国に強制転移した理由を話した所、既に抜け出し(物理)に成功していたので様子を見て観光がてら偵察していた先で新しく魔王になった者を見に行った場所に魔女が現れたのだそうだ。
「今連絡を待っているからナト達と心話を繋げてくれ。」
自分が代わりに賢者様の相手をしていると自信満々にリゼルはいうが心配なのでハルルとラピスにも両腕を掴んでもらっておこう。
《ナト、黒、聞こえてる?》
私の呼び掛けに心話が繋がった感覚がする。
《聞こえています。ダンジョンの中だと上手く繋がらなくてビックリしました。》
《だから教えたのだ、マスターが聖樹の根に近づけば心話が可能になるから待てと。》
《...人気屋台のペロペロを食べながらじゃ、何言ってるのかわからなかったよ。》
何だよペロペロってと思ったがそれよりも気になる事が一つ出来た。
《...ねぇ、喋ってるのって黒はわかるけどもう一人はナト?》
黒は分かる。でもナトの声は変声期を向かえる前の高い少年の声だった。だが今のこの声は完全な青年の声だ。
《そうですよ?あれから何故か一気に成長したんです。お陰で大人になれたのはいいんですが身体がギシギシして痛いです。僕の成長した姿楽しみにしててくださいね。きっとビックリしますよ!》
ウキウキとナハトはしているが急激に成長しているなら魔神の欠片の影響が強いということじゃないのか?ということは、近くに欠片があるのかも知れない呼び合っている可能性がある。
《魔女を見たと言ったよね?まさか近づいたりしてない?》
魔女はナハトに魔神の欠片を付与した疑いがある。ナハトが初めから持っていた線も捨てきれないが...。とりあえず近づかない方がいい。
《魔国の城に魔族に変装して潜り込んだりしていました。魔王の就任式を遠くで見たんですがその隣に魔女がいたのを見かけただけでかなり離れてましたから近付いてはいませんよ。》
《そう、もう調査はいいから黒と一緒に戻って来て。》
《マスター、申し訳ありません...魔王が就任してからナハトを連れての転移ができなくなっています。》
黒がナハトと転移を試した所、黒のみなら可能だがナハトは置いていかれるらしい。
私は神、黒と白は神の眷属なのであらゆる規制がないので可能だがナハトやこの世界の人々はこの世界の理に縛られるので魔国に魔力遮断や結界が張ってある場合は転移が出来ない、使えないことになるのだ。
(無理やり転移させることは出来なくはないけど...)
《マスター、ナハトとこのまま魔国で待ちます。もしかしたら新しく魔王になった者が接触してくるかもしれません。》
《どういうこと?》
一時的にナハトに心話が聞こえないように制限をかけた黒が答える。
《魔国の魔王は協力者です。引き継ぐ際に必ず誓わされます。誓わなければ記憶を消され新たな魔王が選ばれます。魔王に選ばれた時点で理由は何であれ選択を迫られるのです。魔王が着任したということは協力者であると同意です。》
魔王が完全な味方になっているので信用できるといっているのだろう。
《...あ~、確かに魔王ならね。でも今回の魔王はもしかしたら...かも....だよね~。》
《えっ?何ですか?マスター何か心配でもあるんですか?》
新しい魔王の情報はアイツの特徴と一致するんだよね~。となると魔王の誓いはあんまり役にたたないかもな~。等と考えていると黒が不安になったようだ。ナハトの心話を元に戻し会話を再開する。
《ははは、何でもない。....わかった。魔王に接触したら私の名前を出して、反応したら黒の指示に従う様に伝えて。ナトの着ている装備を見せれば信用するはずだから。》
元は私が着ていた星の装備をアイツが気づかないはずがないので大丈夫なはずだ。
《えっ?僕の装備ですか?》
《多分魔王は知り合いだから、昔私が着てた星の装備が分かると思う。魔女の方は黒がナトに幻影魔法をかけて初対面で通してね。》
例え魔力が高くても黒の魔力を上回ることはないので幻影がバレることない。
《知り合いなんですか!?鬼人族の方なんでどうしたらあんな素晴らしい肉体になるのか聞きたかったんです!魔女の方は分かりました。初対面を通します。》
鬼人族の肉体は聞いても手に入りませんよ。君はダークエルフなのでがんばっても細マッチョにしかなりません。
....いや、鬼人族なのに細いのが最近いたな。なら、可能なのか?
《ではマスターがこちらに合流するまで魔女の動向には気を付けます。また連絡が途絶えるのでこちらで判断をします。》
《くれぐれもナトをお願いね。》
《はい。おまかせください。》
《....黒は右足に何を持ってるの?ペロペロ?》
《こら、まだ心話が....》と気になる言葉が最後に聞こえて心話が切られた。
「黒....仕置きだな。」
振り返りリゼル達の元に戻った私は、何故か気絶しているリゼルとそれを介抱していた青い顔のハルル達に殺気を押さえるように土下座されるまで気付かなかった。絶対に逆らえない恐ろしい顔と殺気を漂わせていたことを....。




