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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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幕間、賢者メノウの視点

「ですから貴方がそこを退いて下されば(わたくし)の用事は終わるのですわ!!」


ヒステリックに叫ぶ女に面倒だが無視して更に悪化するのを厭い答えてやる。


「はぁ、何度も言ってるだろう。ここから先は誰も通すことは出来ん。馬鹿なのか?」


何度も同じことを繰り返すだけなのにこの目の前の女はどれだけ頭が悪いのか.....。

それよりも早くこの先にある聖樹の根までいかなければ、折角の()()がいつ無くなるかわからない。


「何ですって!ちょっと美形だからといって調子に乗らないことね!!私を誰だと思っているの!」


自分も他者の美醜にも興味はない。いい加減疲れて流石に温厚な自分の顔に冷笑が浮かぶのがわかる。


女は紫のアイシャドウに真っ赤な口紅を引いてただならぬ色気を甘ったるい香りと共に放っていた。美しく見惚れるような顔をして自信に満ちている、堕ちると思われているみたいだが無意味だ。種族の特性が良く出ているとは思うが...女の頭にはサイドに巻かれた真っ黒な角が生えて、瞳孔は縦に割れている。露出度の高い服は赤と黒のレースで彩られたベビードール。滑らかな白い肌にピンクの波打った艶のある髪と声だけが純粋な少女っぽさがあり違和感を抱いた。


淫魔族のサキュバス。異性を惑わす誘惑魔法のスペシャリスト。相手の好みの姿をとり本体を見せる事はなく常に幻影を纏っている。魔力が高く目をつけられれば抗うことは難しい。男だとインキュバスと呼ばれ、吸血族も淫魔族に入る。このサキュバスは能力が高いがもしかしたら特殊かもしれない。そう思うと少しだけ笑みが柔らかくなる。


「今さら素敵な笑みを見せられても遅いですわよ、私はサジェスタ。欲の魔女。お喋りには飽きましたのそろそろ貴方を殺して目的を果たさせていただきますわ。」


ニヤリと妖艶な笑みを浮かべた女がこちらに腰に着けていた鞭を繰り出し攻撃してきた。


「やれやれ、一年かけてやっとここまで修復してあと少しなのに邪魔だ。この先に行っても魔王は甦らん。低能な女には言っても無駄かも知れんがな。」


鞭を軽くいなしながら懐に手をいれて種をだす。その種をピンッと女の方に弾いた瞬間、相手の魔力を吸って触手を伸ばし蔦が女を絡めとり身動きをとれないように縛り付ける。


「な、何ですの!?これ...むぐっ...」


いきなりの事に対応出来なかった女が転がり喋らせないように口も塞がせる。目だけが睨み付けるのを頑張っていたが、これで何もできないだろう。


「とんだ邪魔が入ったな。...さあ、早く無かったことにしないと。」


くるりと女に背を向け一年前に気づいた自分の失敗を無かった事にするべく、ダンジョンと聖樹の根の修復に向かうのだった。


ガシッ...


何かに肩を捕まれ止められる。女は捕縛したはず?ならこの自分を止める華奢な手は他に仲間の女が潜んでいたのか?僅かの間に考えていると肩を掴んだ者から段々と威圧感を感じる。自分に威圧感を与える相手は一人しかいない。


何て事だろう、自分は間に合わなかった。

ここのダンジョンに籠ってから一年、修復に邪魔な冒険者ギルドの連中を遠ざけ、入ってこないようにモンスターを調節しながら溢れさせ、近付いてきても幻惑のワイバーンで諦めさせて何とかここまで頑張ってきたのに。


先程の女が邪魔をしなければここを封印して時間を稼ぎ、聖樹の根も癒すことが可能だった。


「久しぶりね、メノウ。いえ、[血濡れのエルフ]って呼んだ方がいいのかな?」


肩に置かれた手に力が籠められ腕が痺れてきたがそんな事はどうでもいい。自分の行動が色々と伝わっているようだ。おかしいな、それを塗り替えるように賢者として色々行動したはずだったのだが。


「ああ、賢者様?私の事をお忘れですか?」


あくまでも優しく尋ねているが殺気に変わりだした威圧と更に込められた肩を掴む手の力に体が硬直して動かない。


だが、これ以上振り向かないと危険信号を脳内が発しているので全力でギギギギッと声のする方に顔を向ける。


「...エル...ノラ...。」


何とか振り絞り出した声で名前を呼ぶと少しだけ威圧が下がったので彼女をみる。


触り心地の良さそうな淡藤色の長い髪を恐ろしい程貴重なリボンで結わえ、興味の持てない自分が唯一見惚れる顔立ちに美しく清廉な銀の瞳が殺気と共に自分を捉えている。何ともいえないゾクゾクするこの感情は長く生きる中でも滅多にない貴重さだ。


自分の大切な彼女は絶対的な主人だ。

その主人の管理する聖樹を故意で無いとはいえ傷つけてしまったので修復を急いでいたのだ。

目覚めが近いとわかっていたから。


「説明してくれるかな?」


この場にいたら、あの戦闘馬鹿も裸足で逃げ出すであろう。通常なら喜び、見惚れる様な笑顔が自分に向けられているが脳内だけでなく体中が危険信号により細かく震えてくる。


だが、それを救ってくれたのは自分が全く存在を確認していなかった人物だった。





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