24、泣き声と魔力暴走
ウワァァァァン!
フェェェェェン!
(.........泣き声...?)
眠い。
泣き声が聞こえる。
グスッ...ビェェェェン!
(豪快だな......)
いっこうに泣き止まない。
(泣き声もだけど...肌にビンビン魔力を感じる。この魔力はあのダークエルフの子供かな?確か治療中だったはずだけど...)
眠い眼を擦り起き上がる。
《おはようございます。》
「うわっ!?」
いきなり声をかけられてビックリする。
《ひどいですね、途中で寝落ちするなんて。お陰でずっと寝息を聞けましたけど(笑)》
《寝落ちはゴメン。何で通信切らないの?》
《我らからの遮断はないですよ。》
そうだった私がキリを付けて遮断してた。
《はぁ~わかった。じゃあまた次でね。》
《はい、ご主人様また。...あっ!ま...》
ブツッ
黒との通信を切って宿から飛び出し騎士団詰所へ走った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
騎士団詰所へ着き入り口近くでリゼルとタルナが真っ白い詰襟の衛生服を着た若者に急いでください!大変なんです!とか詰め寄られながら引っ張られる所に遭遇した。
「落ち着け!何が大変なんだ?リゼルディスさまを、引っ張るな!」
タルナが若者を窘める。が行きながら説明しますからとりあえず来てください~!といいながら二人を引っ張る。
やはり騎士団は結構気安いようだ。
「お~い!私も一緒に連れてって!」
私が声をかけるとリゼルが一番に反応して駆け寄ってくる。引っ張っていた若者がそれを見ていつの間に!?と驚いていた。
「エルノラ!どうしてここに?昼にはまだ早いのに。」
「ダークエルフの子が気になって見に来たの。」
「その子の事で大変なんですって!!」
だから急いでくださいください!と若者が駆け寄ってきた。
「なんだと!それを早く言わんか!」
タルナが若者の首根っこを掴み医療所へと走り出す。私たちも直ぐその後を追いかけた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「ギナマ先生!お待たせしました!」
若者が部屋に飛び込んでいく。
部屋は酷い有り様だった。書類や診療器具等は床に散乱し魔力風が吹き荒れている。
その部屋のベッドの上にはダークエルフの子供の背中から可視化した魔力が黒い触手のように広がり子供を守るように包み込んでいる。
その子供に手をかざし回復魔法をかけている若者と同じ白い衛生服の裾が長い服を着ている黒髪に少し白髪の混ざった40代半ばの男性がギナマ先生と呼ばれる医師のようだ。
吹き荒れる風と共に泣き声が聞こえる。
先ほどより弱々しくなった様に感じる泣き声は体力が尽きかけているのだろう。
「ギナマ先生!何があったんだ!?」
「タルナ騎士団長、薬を飲ませられなかったので他国からの新しい治療を試みるつもりだったのですが攻撃だと思われたようで魔力暴走を起こしたんだと思われます。」
「魔力暴走を起こした!?奴隷の首輪を着けた状態でか!?」
「そうです!だから早く何とかしなければならないのに黒い触手と魔力風で近付けず、回復魔法をかけるしか..こちらもそろそろ限界が」
二人の会話を余所に私はダークエルフの子供の元に近づく。黒い触手が反応して攻撃しようと鞭の様にしならせてこちらに振りかざす。
ガシッ
その触手を片手で掴み握りしめる。
(この子を攻撃させないから散りなさい)
掴んだ触手を通してこちらの魔力を流し込む。
流れを同調させて少しずつ安定させていくと黒い触手の魔力と暴走した魔力風が霧散した。
霧散したと同時にダークエルフの子供の泣き声が止み私を見つめてキョトンとした顔をして
フワッと柔らかに笑って意識を失った。
意識を失ったダークエルフの子供がガクンと倒れ込むのを私が腕に抱き留める。
「[完全回復]」
回復魔法が子供の身体を包み込み光る。
「あれだけ強い魔力を簡単に押さえ込み完全回復まで使われるとは...貴女はいったい?」
緊急事態とはいえまたやってしまった。大丈夫私にはこの言葉がある。
「あれ?先生ご存知無かったんですか?早朝に王様達からの伝令で賢者様のお弟子様が姫様の呪いの眠りを解呪するので昼すぎに王城に来いと伝令書が来てたはずですが。」
若者があれ?机の一番上に置いといたはずですが...と床をみて、散らばりましたね(汗)と片付け始める。
「賢者様のお弟子様...姫様の呪いの解呪...
そうか、姫様の呪いが解かれるのか...」
ギナマ医師は嬉しそうにウンウンと頷いていた。
「感謝致します、賢者のお弟子様。私は王室医療隊長兼騎士団医療所の医師ギナマ・ユダーバと申します。貴女様のお名前を教えていただいても?」
胸に手を当て深い礼をして私に尋ねてきた。
「エルノラです。賢者の弟子で冒険者です。」
「ギナマ先生、エルノラは俺の不調も治してくれたんだ。それがきっかけでハルネーゼも見てくれた。しかも治す方法まで!もう賢者様でいいぐらいだよ。」
リゼルが興奮したようにギナマに今までの事を話していく。
「そうでしたか。医師の私が何もできなかった...今回も...」
どんどん暗くなっていく。背中に暗い影ができている。様にみえる。
「良かったら、これをどうぞ。」
落ち込むギナマにゲームのアイテム本《医療の真髄》を渡す。
治癒術師の職業を選んだ時にマスターすると自動で手に入る。ちなみにそれぞれの職業をマスターした時に真髄シリーズが手にはいるのは確認済みだ。全部ある。
貰った本をパラパラとギナマがめくる。
カッ
眼を見開き本をもった手がプルプル震えている。 ...大丈夫か?
心配になり声をかけようとした所、ガバッっと本を掲げて土下座した。
「こっ!このような素晴らしい秘伝書を授けて下さりありがとうござびまず~~!!」
感嘆の涙を流し土下座するギナマ。
「秘伝書?」
アイテム説明には治療魔術や薬草辞典等の総合書って書かれてたがギナマの反応はまるで神の書でも与えられたかのようだ。
「申し訳けございません、ズビッ...取り乱しました。この書は私だけではなく全世界の希望です!!世界医術師会で共有したいのですがよろしいでしょうか?」
話がでかくなってる!世界医術師会は全国の医術師達が情報を共有してモンスターや流行り病等の対処を研究したり新しい回服薬を開発して世に出している所らしい。
「もちろん貴女様の名前で!!」
「賢者様からでお願いします!!」
だが断る!!の勢いで賢者を推す。
「......。」
「ギナマ先生、エルノラの言う通りにしてくれ。あまり目立つのは望んでいないので配慮して欲しい。」
リゼルが助け舟を出す。グッジョブ。
「そうですか...わかりました。」
少し落ち着いたようだ。立ち上がり本を抱え込む。
「所処、読めないところがありますが...私の勉強と魔力不足でしょうか?」
「恐らくそうです。通常なら治癒術師をマスターする必要がありますから。是非役立ててください。賢者様の本を!」
ちゃんと強調しておく。
必ず全て解読して世界に広めます‼️と意気込むギナマにまた眠ってしまったダークエルフの子供を預け後でまた来ます。とリゼル、タルナと共にその場を後にした。




