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幽霊になった親友  作者: ジリ貧太郎


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2/2

親友

少し一話よりも長くなってしまいましたが、最後まで見て頂けると幸いです。

ざわざわと騒がしい声が扉の向こうから聞こえる。

健太は自分のクラスの扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開けた。


健太「おはようー」


健太の挨拶に数人が反応する。1人は加賀 優生。いつもふざけて周りを笑わしている。そして優生の隣の席に居るのが本田 祐希。イケメンで常に彼女を作ってはいつの間にか変わっている。最後に井上 隆。落ち着いた雰囲気ではあるが、小さい頃から空手を習っており、怒らせたら1番怖いタイプの人間である。


優生「おは、お前もうちょっと遅れて来いよー!

賭けに負けたじゃねえか!」

健太「お前らまた人を賭け事にしてたのか? 将来ろくな大人にならんぞ」


そんな2人のやりとりを聞いていた隆が鼻で笑いながら口を開く。


隆「健太ー、それはお前もだぞ。もうこれで今月何回目だよ? 遅刻しそうになったの」

祐希「3回目だね、しそうになったのは。今月あたまの遅刻を入れたら4回目」

隆「あ、そっか。この間遅刻してたよな。いっちゃんのダメ人間じゃん」

健太「うるさい。今日は仕方なかったんだよ。朝起きたら汗びっしょりで、風呂入るしかなくて」

優生「お前汗っかきだもんなー。この間なんて汗かき過ぎて女子に距離置かれてたし」


優生は意地の悪い笑みを浮かべる。そんな優生に健太は舌打ちしながら「黙れ」といつもふざけ合う中での決まり文句を言い、自分の席に座りながら辺りを見渡す。

探していたのは先に来ているであろう晴人だった。だが辺りを見渡しても晴人の姿は見られない。それどころか晴人の荷物さえ無く、健太は重く捉えているわけではないが、僅かな不自然さを感じた。


健太「なあ、晴人は? 先に来てたと思うんだけど」

祐希「晴人? 今日はまだ来てないぞ? 珍しいよな。晴人がこんなに遅いなんて。だからさっきお前が先に来るか、晴人が先に来るかで話してたんだよ」

優生「そうそう、それで俺が安牌とって晴人が先に来ると思って賭けたのにお前が先に来たんだよー」

隆「俺と祐希は大穴狙いの健太賭けだった。それで今日の帰りバーガーセットをゲットしたって訳」

優生「ちょっ! まじで安い奴買えよ! 俺今金欠気味なんだから!」

健太「お前らな…それ人を勝手に賭けの対象にしてたんだから、こっちにもなんかあるんだろうな」

優生「お前達のはある訳ないだろ、遅れる方が悪いんだから」

健太「だから、遅れてねえって。それにしても晴人のやつほんと遅いな。朝先に言ってるって連絡あったのに」


改めて状況を口に出した途端、健太は晴人が来ていないという、この状況に違和感を強めていく。

なぜ先に行くと言う連絡があったのにまだ来てないのか? 何かトラブルに巻き込まれたのか、それとも学校には来ているが何かしらの事情があってただただ遅れているだけなのか。そんな事を思っていると他の生徒の話し声が耳に入ってくる。


「ねえ、あんまよく分かんないんだけどさ、なんかうちの生徒が事故に遭ったらしいよ。救急車とか警察がこの間行ったカフェの近くの通りに沢山来てたんだって」

「えっ!? それまじっ! ヤバいじゃん! その轢かれた生徒って誰か分からないの?」

「ううん、そこまでは分からないの。私も別のクラスの友達に聞いたんだけどさ、その子も遠目から見ただけって言ってたし…もしかしたら違うかもだけど」

「そうなんだ、そのうちの生徒かも知れないって人は無事かどうかは分からないの? 容態とか?」

「分からない。でも結構血が酷かったて言ってた」

「そうなんだ…無事だと良いんだけどね」


聞こえてきた同じクラスの女子の会話の内容に健太は言いようの無い不安を感じる。女子が言っていたカフェと言う言葉、それに健太は心当たりがあった。

晴人が通る通学路には一軒のカフェがあったのだ。勿論それだけであれば何の気にも留めないであろう。別にカフェはここら辺には沢山では無いが、探せばいくらでもある。だが晴人がいないこの状況では結び付けてしまうのも仕方がない事だろう。

そんな健太の様子に他3人が気が付いた。


隆「おい、大丈夫だって。あいつめちゃビビりだから。信号とかめっちゃ守るじゃん。青信号が点滅でも止まる時あるし」

優生「そうそう、それに晴人の事だから受験の事とかで先生に相談でもしてるんじゃないか?」

健太「ああ…そうだな。確かにそれあるな…」


隆達は健太が思っているであろう可能性を否定する。だがその顔は先程までのふざけていた顔では無くなっていた。

おそらく、いつもならもう来ていてもおかしくない時間に晴人が来ていない事で2人にもその可能性が頭に浮かんでいたのであろう。

その時、横で電話を鳴らす音が聞こえる。祐希がスマホを片耳に付けていた。その様子を見て3人は祐希が晴人に掛けていることを直ぐに理解した。祐希が掛けている間、全員が何も口にせず見守っている。だがその電話が繋がる事は無かった。


祐希「…ダメだ、繋がんね…」


4人はお互いを見合い、少しの静寂が訪れる。その時クラスの前の扉が音を立てて開かれた。その扉を健太達含めクラスにいる全員が目を向ける。入って来たのは、担任である飯田だった。


飯田「えーと、お前達悪いけど、一限目は自習にする。各自今までの復習をするなりしててくれ」


その言葉にクラスの全員が何かを察していた。もうこの学校の生徒が事故に巻き込まれた事はほぼ全員に拡がっていたからだ。すると1人の生徒が飯田に向かって事故について質問をした。それに対し飯田は少し言葉を選びながら口を開く。

飯田は「お前達、もう何かしら話しが回っているみたいだが、それについて先生はまだ詳しい事は分からない。だから今からそれを確かめてくる。だからとりあえずお前達は自習してなさい」


それだけを言うと飯田は足早に教室を出て行く。

この異常事態にクラスは一気にざわつき出した。だが周りがざわつく程に健太達は静かになっていった。

そして居ても立っても居られなくなった健太が「ちょっと聞いてくる!」とだけ言い、急いで飯田の後を追って教室を出ていく。


健太「あの! 先生!」


教室を出て少し行った所で健太は飯田に追い付いた。


飯田「お前、自習してろって言ったろ。早く戻れ」

健太「すいません、一つだけ…あの、違いますよね…祐希がさっき晴人に電話掛けたんですけど繋がらなくて…朝には先に行くって連絡があったんですけど、来てなくて…あの、違いますよね。事故に遭ったとかじゃ無いですよね」


健太は自分が聞きたいことを否定される事を願ってか、なぜか小さく笑いながら飯田に問いかける。

飯田は、何かを悩んでいるのか、何度か口をパクパクと動かし悩んでいる様子であった。そんな飯田を健太は真っ直ぐに見つめ答えを待つ。

その様子に飯田は覚悟を決めたのか、重い口を開け答える。


飯田「健太、落ち着いて聞けよ。お前は晴人と特に仲が良かったから今言うが…事故に遭ったのは晴人だ」


飯田の言葉に健太の心臓はばくんと脈打った。それは望んでいた否定とは真逆の回答であったからだ。そして飯田は続ける。


飯田「それでな…晴人、亡くなったらしい。俺もこれ以上は本当に今は分からない。…いいか、健太。どんな事でも良いから。これから何かあったら周りを頼れ…友達でも親御さんでも俺でも良い、絶対に1人で抱え込むなよ」


飯田はそう言うと、健太の肩を両手で掴み健太の顔を真っ直ぐに見据える。

だがその飯田の言葉は健太の耳には届かない。耳鳴りがし、全身の力が抜けていく。思考がぬかるんだように定まらない。

小さい頃一緒だった1番の親友。それが死んだ。いなくなった。その事実は健太の心を揺さぶるには十分なものであった。


健太「…晴人が、死んだ…? は…?」

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