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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第三章
52/74

第十五話

日間59位!ありがとうございます!


前半は北川先輩視点、後半は第十一話のルキフェルの話の続きです。




「俺は死にません。というよりまだ死ねません。こんなところで死んだら、四季や茜に怒られますから」


そう言って微笑む楠君を、私はただ見ていることしかできなかった。


先輩だというのに迷惑をかけてしまった私を、楠君は守るとも言わなかった。ただそれが普通のことであるかのように、「倒せます」「出来ます」と気負いもなく断言した。

まるで私のことは関係無いと言わんばかりのその態度は、でも決して不快なものではなくて。

私はもちろん、西原君すら助けることが当たり前とでも言うように。何の見返りもなしに私を助けてくれる、そんな相手を家族以外で初めて見た私は不覚にも胸が高鳴るのを感じた。

……最も、この時点ではこの感情が一体何なのか見当もつかなかったのだけど。




覚えのない感情に戸惑っていた私が、気がついた時にはすでに楠君はいなくなっていた。


「まさか……!」


もう戦いに行ってしまったのだろうか。

自分勝手なことを、という先輩としての感情と、危ないことはしないでほしい、という先輩としてとは違った感情など、様々な感情が入り乱れる。

グチャグチャになった頭の中で、それでも私は楠君を助けに行こうと考えた。


でも。


「どうして……?」


震える私の体は、一歩も動いてはくれなかった。

楠君を助けたい、楠君と一緒に戦いたい。そんな思いとは裏腹に、より震えが強くなる体。

それはきっと、私のスキルが今までに無いくらいに死を予感させているからなんだと思う。


固有スキル【集中】。それが私の身に宿った、勇者としての力の一つだった。

一定時間内、スキルなどをブーストする。

未だにスキルの全ては分かっていないけれど、大雑把にいうならこれが私の固有スキルの能力だ。

例えば気配察知、【集中】スキルによってブーストすることで魔力までも感知できるようにする。

例えば視力、千里眼とまではいかないまでも常人とはかけはなれた視力になる。


これだけ聞くと大したことはないように思えるけど、固有スキルと名付けられるスキルは総じてどこかしら異常な能力を持っている。

当然【集中】も異常なところがあるわけで。このスキルは、例えば第六感や予知能力など、普通はまず備わっていないような能力までもブーストできる。

つまりは0を1に変えられる、スキルを創造できるスキルと言っても過言ではない。とはいえ、一定時間を過ぎるとブーストされた分は元に戻るのがこの能力だ。普通であれば、また0に戻るだけ。


しかし、もうひとつ。このスキルの異常なところは、一定時間を過ぎても、1が0になることはないというところだ。

現状、特にこのスキルを使う時にデメリットは見つかっていないので、実質ノーリスクで自身の能力を無数に増やせることになるというとんでもスキルなのだ。

楠君の言葉を借りるなら、「まさにチート」だと思う。


そんなスキルを使って、私は危機察知能力をブーストした。

そして、その結果が今の私。震えが止まらず、一歩も動くことができない。

この事が示す事実は一つだった。


「何で……」


つまり、私では魔物の大群に勝つことは出来ないということ。

でもそんなこと、スキルを使うまでもなく分かっていた。その上で自分に何ができるかを考えるために、私はスキルを使ったはずなのに。


「どうして、私は動けないの……?」


自身のスキルまでが無力を痛感させる事に、私は悔しくて唇を噛み締めた。


「楠君を見捨てるしかないの……?」


自分の力のなさが恨めしい。

それに何より、そんな事で動かなくなる自分の体が、自分の命を優先する私自身の浅ましさが嫌で仕方なかった。


「ううっ……」


ポタリ、ポタリと涙が頬を伝う。

堪えきれなくなってしゃがみ込んだ私が、歪んだ視界で動くものを捉えたのはその時だった。


「え……?」



◇



「【獣祭】!」


威厳のある声と共に、莫大な魔力が発せられる。その様子を、彼らはただ黙って見ていた。


「はあ、はあっ」


息を荒げるルキフェルを心配そうに眺める彼らは、ルキフェルの部下たちである。

彼らの顔には、主たる魔王を心配するもの以上にただただ不安が浮かんでいた。ともすれば、失敗してしまえばいいとでも言うかのように。


しかし、その願いが聞き届けられることはもちろん無く。

それ自体に圧力を覚えるほどの計り知れない魔力が、黒く輝く魔法陣に凄まじい勢いで吸収されていった。


そして、ついに魔力が全て魔法陣に注ぎ込まれる。


「出でよ我がしもべ達よ!」


失敗してしまったのかと勘違いしてしまうほどに魔法陣の光が失われたところで、ルキフェルがそう叫ぶ。

するとその声に反応したように、魔法陣から大量の魔物が飛び出してきた。


ーーーそして、ルキフェルの部下たちに襲いかかった。


「な、なんで……!」


「ヒィ!助けてぇ!」


「嫌だぁ!死にたくないよぉぉ!」


固有スキル【獣祭】……これは、自身の眷属の魔物を召喚できる限り召喚するというスキルだ。

ルキフェルが召喚した魔物は獅子のような魔物で、非常に獰猛な気性をしている。

……それこそ、同族と召喚主以外、手当たり次第に襲いかかるくらいに。


「ハハハ、ハハハハハハハハ!!!」


部下たちが奏でる断末魔の声を聞きながら、高笑いするルキフェル。

その笑いがおさまる頃、辺りには獣の唸り声以外何の音も聞こえなくなっていた。



余裕があれば今日もう一話上げます。期待せず待っていてください。


誤字脱字があれば報告してもらえるとありがたいです。

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