『 』種について
千世が「執事」と言っているのは、彼女の語彙の中で最も近い意味を持つものがそれだったからです。
ちなみに、詩は作中で、浪人者、と言っています。彼女は日本人で幕末の生まれです。
《作中から》
執事
僕
契約者
主に仕えるべきモノ
強大な力の器
神の力の発露を制限するモノ
神の力の代行者
神の形代として代理戦争をするモノ
世界が必要に迫られて生み出した種族。神々の争いによって世界が崩壊してしまわないように、神に仕え、その力を体に降ろし、神々の代理として戦うモノ。
「もっとも原始的なものは今もたくさんおり、神々に仕え身の回りの世話をしております。その中から、神の力を多く身に宿し、その意を具現することができるものが出ました。それが初期の『 』です。それらのほとんどは神器になりました」
「神器を得た神々はその力を制御できるようになりましたが、神が振るえば威力は絶大なのに変わりありません。過ぎた力による世界の崩壊の危機は、何度もあったようでございます。そこで次に現れたのは、神のひな形となるものでございました。神々はその人形で代理戦争をはじめました。人形でございますから、力を込めすぎても壊れますし、争わせた末に負けても壊されます。その頃は、『 』は消耗品であったのです。幾億幾兆の『 』が生じ、壊されていく中で、稀に自我を持つものが現れました。それが私たちでございます。我々は神に従うことはありませんでした。己が主を己で選び、定めたのでございます。やがて人形が生まれなくなり、神域の争奪は、神々の手を離れた我々のものとなりました」
「神々は再び神域の争奪戦をはじめるであろうよ。それが神々の性じゃからの。神々は支配者がおるから相争えぬだけなのじゃ。『 』どもは、世界が安定のために生じせしめただけあって、均衡を崩す行いを厳しく律するからのう」
その中で見えた八島さんの姿は光だった。たくさんの羽の連なりにも、渦を巻く何かにも見える。霊位の高い存在。神霊と呼ばれてきたモノ。
元々、それを見出せたのは、神和ぎの才のある者だけだった。神霊を悦ばせ、鎮められる者だけが、それらに名付けることを許され、力を貸し与えられたのだ。
名とは、音にて本質を示すもの。もっとも強き呪。その名を握った者が、その存在を縛りつけ、隷属さえ可能にする。
もしも気に入らぬ者が己の名を口にすれば、怒り狂った神霊は、呪を発した肉体を裂いて、無効にせんと欲するだろう。
時代が下り、足りぬ才を知識と技術で補い、時に欲に駆られて、時に必要に迫られて、契約を交わそうとした者たちが、神霊の怒りを買い、殺された。
《補注》
なお、彼らの三大欲求は、
戦闘欲
支配欲
食欲(←主の生気)
の三つになります。