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カゼキリ風来帖  作者: ソネダ
カゼキリ風来帖(7) ~ 水霊ヒスイの挑戦! 対決!あやか 対 せき !! の章
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水霊ヒスイの挑戦! 対決! あやか 対 せき !! の章(24) ~ 大和刀

 さて…… 

 山城 暁と奈落王の戦いである。

 大昔の時から多くの年月が過ぎている。

 奈落王の挑発に乗り、顔を赤くしている山城 暁も、今はもう大昔の彼女ではない。

 二度と死霊のような亡霊、異形に八霊山を荒らされることはないよう、八霊山を護る組織である、

 『護山家』

 が設立されたように山城 暁もまた、その頂点として、いつでも戦えるように備えてきたものであった。

 山城 暁もまた同様である。そのことに奈落王が気づいていたかというと、

 (気づいてはいない……)

 山城 暁としては奈落王との過去の因縁もあり、平静は保ててはいない。しかし、

 (大昔とは違う。今は、打つ手がない訳ではない)

 それこそが山神さま、そして山城 暁自身が作り上げた『護山家』であり、そして、

 『大和刀(だいわとう)

 なのである。

 山城 暁はその刀へ手をかけて、はっと冷静さを取り戻した。

 (思えば……)

 この刀を流 ヒスイのもとへ置き忘れていたことが、今回の事件へと結びついていたものだった。

 それを思えば、それは一種の気の緩みがあったのかもしれない。

 「私としたことが……」

 「………なんだ?」

 山城 暁の顔つきが変わった。

 先ほどまでの怒りに任せたような血の気が引き、

 「青白い炎のような……」

 冷たくありながらも力強く燃えているような、威圧感を放っているのだった。

 「へぇ、お前も少しは強くなったってトコかよ?」

 「…………」

 「こりゃ少しは楽しめそうだな。あのクソ女に仕返しをする前だ。お前で肩慣らしをしてやるぜ!」

 まるで獣のような声を上げて、奈落王は山城 暁へと一直線へと飛び掛った。

 「…………!!」

 まずは力に任せた拳が数回、山城 暁へ向けて放たれた。

 (刀を持っているようだったが……)

 予想外の打ち込みであったけれども、山城 暁は大和刀へ添えていた手を離し、

 「たああっ!!」

 両手を持って応戦した。

 剣術に長じている山城 暁だが、武術にも抜かりはない。もっとも、

 (武術においても、ヒスイには勝てたことがない……)

 のだった。

 先ほど、奈落王の挑発にも乗ってしまったように、山城 暁には少し短気な気質があった。

 そのことが災いして、流 ヒスイの冷ややかな態度に激怒してしまい、殴り合いの喧嘩に発展してしまうことも多々あったものだった。

 八霊山の頂点である水霊さまと山神さまの娘二人が、些細なことで殴り合いの喧嘩をしまうというのは、その結果を含めて、大問題に発展しかねないことだったが、

 「ふん、お前との喧嘩に勝ったところでなんの意味もない」

 流 ヒスイの方が全く取り合わず、いずれも問題には至らなかったのだった。

 そうした様子をもしも流 あさひが眺めていたものだったら、

 「お姉さまはあの山城 暁に戦いを挑み、勝利したのです」

 などと大いに見聞を広め、大問題へ発展させていたものだろうが、その頃には既に流 ヒスイの元を去ってしまっていた。

 ……そうしたこともあり、山城 暁は武術の訓練も欠かしてはいなかった。

 奈落王より叩き込まれる拳は、いずれも岩を砕くような重い一撃である。

 それを山城 暁は、時にかわし、受け流し、反撃の一撃を叩き込んでいった。

 「くっ……」

 二人が間を空けて飛びのいた。

 辺りはもうすっかり明るくなっている。

 「チッ、もう時間か……」

 そう奈落王が呟くと、途端に彼女が纏っている暗い雰囲気がたちどころに消えていった。

 「どうした?もう終わるのか?」

 山城 暁が問いかけると、

 「違うよ。ボーナスタイムが終わっただけだ」

 「ボーナスタイムだと?」

 「へっ、悪魔の時間。朝のこの時間は大きな力が出せるのさ。それが終わっただけのことだ」

 「…………そうか」

 奈落王の言うことに嘘はないようだった。護山家の役場にある大図書館においても、

 『奈落王や彼女が操る亡霊は、特定の時間をもって、活動力、そして戦闘力が強くなる』

 という傾向を示した文献があったものだった。だが、

 「安心するなよ、山城!そんな力がなくとも、俺はお前を倒すことはできる!……敢えて言うならば、俺はこの時間が終わるのを待っていたくらいだぜ。お前を倒すのに、その力は勿体無さ過ぎるからなァ!!」 

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