水霊ヒスイの挑戦! 対決! あやか 対 せき !! の章(23) ~ 対決!山城 暁
「さて……と」
太陽の光が辺りを照らし始めた。
奈落王は八霊山の陰である山陰奈落出身の亡霊である。とはいえ、太陽の光が苦手なわけではない。ただ、
「この明るさは目にこたえるぜ」
というように、その明るさには慣れていないのである。また、
「地底の熱さと比べれば、涼しいくらいだがなァ……」
やはり環境の違いはあるのだった。
さて、それはさておき、
「これからどうするか!!」
この一事である。
まずは目の前の敵であった流 ヒスイは倒した。そうなれば次に倒すべきは、その妹の流 あさひである。しかし、その流 あさひの目的、そして動きが、奈落王には、
(まったく分からなねえぜ……クソがッ)
なのである。
というのも流 あさひが、何故、わざわざ自分の封印を解いたのかが不明である。
解いたとなれば、何かしらの悪事を働くことは分かりきったことであっただろう。
それが山神さまへの襲撃となれば、封印を解いた流 あさひの側……つまりは水霊さまにとって都合が良かっただろうが、現実では、奈落王は水霊側の流 ヒスイを襲撃してしまっている。
(これはあの女の計算の内なのか?)
それが問題である。
もしそれが計算のうちであったならば、奈落王のしたことは、流 あさひにとって、どんな狙いがあったことなのだろうか。それはとても、
(あのシスコン女がやるとは……)
とても考え付かないことなのだ。
ならば、どうするべきだろうか。
「ま、手元にはコイツがある。あの女が出てきてもコイツで脅してやれば手も出せないだろ」
その流 ヒスイにも相性と実力では敵う相手ではないのだが、好条件が重なったにしろ一応は、
「流 ヒスイを倒せた」
事実が奈落王に流 あさひと戦い、打ち勝つための自信をみなぎらせていた。
意気揚々として、流 ヒスイを担ぎ上げて、その場を去ろうとしたその時である。
「そこのお前!待てっ!!」
高い声が響き渡ったものだった。
それを聴いて奈落王は咄嗟に、
(あの女か!!!)
担いでいた流 ヒスイを放り出し、反射的に身構えたが、
「…………なんだよ。お前かよ」
ため息を吐いて構えを解いた。目の前には白い髪の少女がいた。
「お前は……奈落王か!!何故、お前がこんなところにいる!?」
白い髪の少女が声を荒げて叫んでいるのを、奈落王は不敵に笑いながら眺めていて、
「久しぶりだなぁ、オイ。やま……山崎だっけ?」
「山城 暁だ!忘れたとは言わせないぞ」
「ああ、忘れた。弱い奴のことは覚えてないんだよ」
「なんだとっ!!」
山城 暁の顔がみるみるうちに赤くなっていく。挑発だということは山城 暁にも十分に分かってはいる。しかし、それでいて、奈落王の挑発に乗ってしまっているのは、
「大昔の因縁……」
によるところが大きいだろう。
大昔、奈落王が八霊山を荒らしていた時代のことである。そのときに、山城 暁は山の勢力を率いて、奈落王の死霊の群へと戦いを挑んでいたのだった。その際に、山城 暁は奈落王と直接対決へ漕ぎ付けている。その戦いの結果は、
「あの時のこと、忘れてはいないぞ……!!」
というように山城 暁にとっては今でも昨日のことのように覚えていることとなっているのだ。
「忘れていないからといって、どうだってんだよ?俺には全く関係のないことだぜ」
「なんだとっ!!」
あの戦いでは山城 暁は奈落王に惨敗している。
窮地の山城 暁を救ったのは他ならない流 ヒスイであった。
あと一歩で山城 暁へとどめが刺さろうというところで、流 ヒスイが奈落王へ不意の一撃を加えたのだから、山城 暁は助かったのだ。
このとき奈落王へ不意打ちを入れて山城 暁の窮地を救うことを提案したのは、流 あさひである。
そのことは攻撃を受けた奈落王はもちろん、助けられた山城 暁ですら知るところではなかった。
知っているのは流 姉妹だけであった。その狙いは山城 暁の窮地を救い、後の八霊山の覇権争いを有利に持ち込み、流 ヒスイを八霊山の支配者へ上り詰めさせる……というのが流 あさひの目論見であったのだ。
もっとも、流 ヒスイ自体は八霊山の覇権などには全く興味を抱いていない。単に自分の故郷である八霊山を荒らされているのを見過ごせずに出てきただけなのだ。
姉想いの流 あさひにとっては、そのまま山城 暁が奈落王に倒されてしまった方が、後々、流 ヒスイが八霊山の支配者へなれる可能性はあったのだろうが、そのことは、
(お姉さまはとても納得できない……)
ことが目に見えていたので、仕方なく窮地を救うという方法に出たのであった。




