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カゼキリ風来帖  作者: ソネダ
カゼキリ風来帖(7) ~ 水霊ヒスイの挑戦! 対決!あやか 対 せき !! の章
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水霊ヒスイの挑戦! 対決! あやか 対 せき !! の章(21) ~ 夜明け

 流 ヒスイと奈落王が戦いを繰り広げていた頃、佐渡せきは必死に流 ヒスイの姿を探していたものだった。

 「くそっ、一体どこに……!!」

 あの時、流 ヒスイが姿を消した場所には、彼女が纏っていた衣の一部と、

 「その腕……」

 が残されていたのである。

 それを見た佐渡せきは、少しの間気を失って倒れてしまったものだったが、すぐに我に返ると、

 大声で叫んでは流 ヒスイを探し始めたのだ。

 (あのヒスイが腕を切られて居なくなるなんて……)

 それはとても只事ではない。

 しかし、流 ヒスイの身に何か起こっているとなれば、一応は剣術を教わったり、世話になった佐渡せきとしても捨てては置けない。

 いや、それだけではないだろう。

 (私はどうしても、流 ヒスイを……助けたい!!)

 その気持ちがとても強いのであった。

 それは短い間とはいえ、流 ヒスイと共に過ごした時間が佐渡せきをそうしているのだろうか。

 ともかくも必死で流 ヒスイを探している佐渡せきであった。

 そうしているうちに、あたりの闇が少しずつ光を持ちつつある。

 「夜が明けようとしているのか……」

 思わず佐渡せきは呟いた。食事処『せいりゅう』を出て、この川辺へ出て、そして流 ヒスイが消えてから、

 「いつの間に……」

 こんなにも時間が経ってしまっていたらしい。

 佐渡せきの顔は汗で濡れ尽くしている。はっと、足を止めると川辺へ歩み寄り顔を洗った。

 空の僅かな明るみが、水面へ自分の顔を映し出している。

 「くっ……変な顔しているよ、まったく……」

 自分でも溜め息が出るほどのものだった。しかし、そんなことを思っている暇もない。一刻も早く、

 「流 ヒスイを探し出さなければ……」

 その一念が佐渡せきの胸の中で渦巻いているのだ。

 それは一種の胸騒ぎというべきかもしれない。いや、そもそも流 ヒスイが

 「片腕を残して何処かへ消えてしまう」

 ということが大きな異常であった。これはもしや何者かによって襲われたのではないか……。

 (だとすると……)

 それはとても佐渡せき一人でどうにかできる問題ではない。

 そうなれば護山家、高山はるかや風切あやか、それ以上の多くの護山家の力が必要になるのではないか。

 (それ以上の力……そうだ!!)

 その時、佐渡せきの頭に一人の護山家の姿が思い浮かんでいた。

 それは流 ヒスイと共に八霊山で神と呼ばれている存在……

 「山城 暁」

 なのであった。

 そう思い立った佐渡せきは、すぐに護山家の役場へ走り出した。

 きっと山城 暁ならば、片腕を残して消えてしまった流 ヒスイについて何か分かるはずだろう。

 そのことが佐渡せきの頭の中でいっぱいであったのだ。

 幸い、辺りは明るみを持ち始めていて、佐渡せきでも山道をすいすいと走りぬけることが出来た。

 ほどなくして護山家の役場へ付いた。

 朝は早いが、見張りの護山家がすぐに佐渡せきへ気付いて、

 「おや、こんなに早く何かあったかな?」

 「そっ、その!山城 暁……様に会わせて欲しいんだ!!すっ、すぐに、大変なんだ!!」

 「少し落ち着いて、な……君は何処の所属で、名前は……?ゆっくりで良いからしっかり答えて、な」

 「あっ!私は佐渡せき。高山はるか班に所属しています」

 「佐渡せき……ああ、思い出した。何処かで見たことある顔だと思ったら、あの新人会での自己紹介で惚けていた子か!」

 「そ、そうです!その佐渡せきです!!」

 「分かった分かった。じゃあ、少しそこで待っていて欲しい。山城さまへ取り合ってくるよ」

 そう話すと、見張りの護山家は奥へと入って行った。

 (……まさか、こんなところであの新人会での失敗が役立つとはなぁ……)

 思わず佐渡せきは苦笑いを浮かべたものだった。

 あの時のことは自分のみならず、意外にそれを見ていた護山家も数多く覚えているようだった。

 その代表として、自分の上司である高山はるかは、そのことでいつまでも自分をからかっていたものだった。

 しかし、そのことがこうも、ことを上手く運ぶのに役立つとは思っては居なかった佐渡せきである。

 あの失敗のお陰で佐渡せきは見張りの護山家に顔を見知られていたし、その様子から、

 「彼女のことは助けてやりたい」

 と思うような雰囲気を持っていたことだろう。

 それは一種の佐渡せきの持ち味であるのかもしれない。

 さて、程なくして見張りの護山家と共に山城 暁が出てきた。

 「君のことを話したらすぐに準備をしてくれたよ。では……」

 見張りの護山家はそう話すとすぐに持ち場へ戻っていった。

 山城 暁と佐渡せきは中の応接の間へと場所を移した。

 「何やら大変なことが起きたって聞いたが……」

 「あっ、あのヒスイが……ヒスイが消えちゃったんです!!」

 「何だって!?詳しく話してくれ」

 佐渡せきはあの川辺で起こったことを山城 暁へ全て話した。

 ところどころ慌てた口調で話してしまったので、今一、きちんと伝わったか不安に思う部分もあったが、

 「なるほど、それは結界によるものだな……」

 山城 暁はそう頷いてくれたものだった。

 「水の精は川辺に独自の結界を張ることができるんだ。そしてその結界は、八霊山の水に拘わる至る所に繋がっていて……水の精が神出鬼没な部分にはそういった理由がある……って、それについては今はどうでもいいな。流 ヒスイについてだ。消えたのが川辺であること、そして片腕を残しているということから、恐らくは強敵が襲い掛かってきたのだろう。そこで君を戦いに巻き込まないために結界へ、その襲撃者と共に難を逃れた……といったところだろう」

 「な、なるほど……」

 佐渡せきにはとても理解できない話であった。結界だの水の精だの言われても、自分のことで精一杯の佐渡せきには、

 (とても考えられるような話じゃないよ……)

 なのである。

 それと同時に驚いたのは、

 「意外に冷静なんですね」

 ということだった。

 それについて山城 暁が話すには、

 「そうでなければ『山神』は務まらないよ」

 ということらしい。

 「あの時、ヒスイを目の前にした時は、とても興奮していたみたいだったけど……なんて思っているな?」

 「えっ!?いや、そんなことは……」

 「思ってただろう?」

 「……はい。ごめんなさい」

 「別にいいよ。ともかく、流 ヒスイが消えたという川辺へ行こう。私ならその結果を見破ることが出来る」

 そうして二人は護山家の役場を出て行った。

 その頃には太陽が山の間から顔を覗かせていた。辺りは更に明るくなり始めている。

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