第2話
「父さん!! ただいま!!」
「お、おぅ。おかえり。......どうした? そんなにテンション上げて」
アルトは「ふっふっふ」と笑い例の紙をガルに見せつけた。
ガルはなんだなんだと紙を手に取る。
すると、険しい顔つきになった。
「......お前まさか」
「うん! ここに行きたい!! ゼッツじーさんは賛成してくれたよ!!」
「......ゼッツじーさんが?」
ゼッツの名前を出した途端、ガルは驚愕した。
......まさかゼッツが賛成するとは思わなかった。
てっきり反対するものかと。
「......ゼッツじーさんから言われたよ。"男として生きていく覚悟があるか"って」
「!! まさかお前......」
「もともと女らしくなかったからね。......夢が叶えられるなら性別だって捨てられる」
アルトはナイフを手に取ると長く伸ばされた髪をザクリと切り落とした。
ガルはそれを見て、アルトの覚悟を感じ取った。
――長い髪は亡き母親譲りのプラチナブロンド。
ガルはその髪を梳くのが好きだった。
「父さん。これが私の......"僕"の覚悟。どうか僕の夢を応援してください」
「......アルト」
「父さんには感謝してる。ここまで僕を育ててくれたこと。だけど、夢を諦めるなんて僕には出来ない。だから......」
アルトはガルの顔がまともに見れず下を向いた。
ガルはそんなアルトの頭をポンと撫でた。
「ここまでの覚悟を見せられちゃあ、もう反対出来ないじゃないか」
「......父さん」
「......寂しくなるなぁ」
ガルがそう呟くと、アルトはギュッとガルを抱きしめた。
そのぬくもりにガルは涙した。
「父さん、泣かないでよ。もう会えないわけじゃないんだからさ」
「......バカ野郎。泣いてなんかねぇ」
......どこまでも優しい父親だ。
アルトはそんな事を思いながら笑みを零した。
「そうと決まれば入学手続きしなきゃな。オレに任せとけ。お前は剣の稽古と荷造りでもしてろ」
「父さん大好き!!」
「やめろ!!......こっ恥ずかしい」
アルトは、ガルが父親で本当に良かった。
そう思ってやまなかった。
......しかし、問題はまだまだあった。
「王都までどう行くかだな......。それにちゃんとした剣が必要になる」
「チッチッチ! 父さん僕を舐めてもらっちゃあ困るよ。町はずれの魔術使いさんと友達だから、移動魔法で送ってもらえる!!」
「......お前、あそこには近づくなと......」
"町はずれの魔法使い"。その存在を知っているのはごく僅か。
知っていても、その怪しさから近づく者はいない。
......だというのに
「......だって、良い人だよ? 何だったら剣だって作ってくれるよ?」
「お前、そんな怪しい剣を持っていく気か?」
「父さんは知らないだろうけど、ゼッツじーさんの剣だって魔法使いさんが作ってたんだよ?」
「......は?」
ガルはアルトから次々と出てくる、とんでも発言についていけなくなった。
......なんなら頭痛すらしてきている。
「これで問題はなくなったね!!」
「......お前には参ったよ。降参だ」
――こうして、アルトの王都勇者育成学院への進学が、決定したのであった。




