第1話
――もうダメだ。
ここで僕の夢は途絶えるのか。
そう覚悟したその時だった。
剣を構える僕の右腕が白く光り出した。
そして僕の脳裏に語りかけてくる声が聞こえる。
『――さあ、今こそその封印を解き放つ時だ』
***
「アルト! 悪いが町に行ってゼッツじーさんの様子を見に言ってくれないか?」
「えぇー、父さんが行って来てよ。私これから剣の稽古しようと思ってたのに」
「お前......まだ諦めてなかったのか? 女は勇者になれないぞ?」
「......私に剣技教えた癖によく言うよ」
片田舎のとある町で父親であるガルと二人で暮らす少女、アルト・レインは幼い頃から夢があった。
それは"伝説の勇者"のような勇者になる事。
きっかけは幼い頃に父親に読み聞かせてもらった"勇者伝記"。
アルトの幼心を掴んだその物語は、アルトに勇者を志させるのには十分であった。
「オレは護身術として教えただけだ。......まさか、オレを越える腕前になるとは思ってもみなかったが」
「ふふん! 私ってば勇者の素質あるんじゃないの? ここらの男の子にも負けたことないもの」
「......それとこれとは話が別だ。ほら、早くゼッツじーさんの所行ってきてくれ」
「はーい」
アルトは返事をすると、ついでに買い物をして来ようとカゴを手にして家を出る。
そして町へ下り、ゼッツの元へと歩いていく。
ゼッツはアルトが幼い頃からよくしてくれていた"元聖騎士長"だ。
魔族との戦いで利き腕を失ってから、こうしてこの片田舎の町で暮らしている。
ガルが剣の稽古をつけられないときは、ゼッツが面倒を見ていた。
そんなゼッツの元へ行く途中に、とある貼り紙が目についた。
【王都勇者育成学院、新入生募集!!】
アルトは「これだ!!」と貼り紙を手にゼッツの元へと早足で行った。
今までにないほど軽やかな足取りで町を歩く。
「ゼッツじーさーん!!」
「アルトか。仮にも女なんだからお淑やかにできないか?」
「そんなことより! これ! 私この学院に通いたい!!」
そう言いながらゼッツに紙を見た。
するとゼッツは険しい顔をする。
「......アルト。女は勇者にはなれないと何度言えば分かるんだ」
「性別なんて関係ない!! ゼッツじーさんも私の剣の腕を認めてくれたじゃんか!!」
「ハァ。......ガルには話したのか?」
「!! まだ。ここに来るときに見つけたから」
「......お前は"男として"これから生きていく覚悟はあるか?」
一瞬、何を問われたのか頭がついていかなかった。
しかし、次第に理解をしていくと......
「ゼッツじーさん、もしかして応援してくれるの?」
「......仕方ねぇからな。ただし! ガルが反対したらちゃんと諦めること!! いいな?」
「わーい!! ゼッツじーさん大好き!!」
「......調子がいいのは誰に似たのやら」
アルトはそう言うとゼッツの家の家事を嬉々として終わらせ、笑顔でゼッツの家を後にした。
「......まったく。貴方の娘はとんでもなく貴方に似てしまいましたよ"聖女様"」




