クールな先輩
佳「…ねえねえ」
時「…ん?」
私の名前は神崎時雨。高校1年生だ。そして今話しかけて来たのは清水佳奈。実は小学生からの友達だったりする。
佳「時雨って恋愛したくない?」
時「は?」
唐突にそんなことを言われ思わず固まる。
時「恋愛?…そりゃなんで」
佳「いやぁ…だってさあ?」
「私もう高校生なわけじゃん?」
時「うん」
佳「もう6月じゃん?」
時「うん」
佳「恋愛しなきゃじゃん」
時「は?」
小学生の頃からこいつ馬鹿だと思ってたけどとうとうここまでに…
佳「なんか失礼なこと考えてたりする?」
時「ソンナコトナイヨ」
佳「…あ、恋愛と言えばさ」
「うちの学校にクールで有名な先輩いるでしょ?」
時「クールで有名な先輩?」
「…雫月先輩のこと?」
雫月先輩、とは。この学校にはクールで有名な先輩がいる。その名も夜明雫月。顔もいいわ性格もいいわでなんでもできる…らしい。…絵に書いたような完璧人間だな。
佳「時雨って雫月先輩に告ったことあるっけ」
時「ないわ」
「あったとてフラれてるでしょうよ」
佳「うーん…そっかー」
「うちのクラスでもほとんどの女子が当たって砕けてるしねぇ」
そう、雫月先輩は告白を受け入れないことでも有名なのだ。雫月先輩の後輩といい先輩といい同級生といい。
それでも告った人は数知らず…。
✧• ──────────── •✧
そして、放課後。私は吹奏楽部に属している。
…だからなんだという話なんだが。
いや、まじでね?どっかの恋愛漫画なのかと思うんだけど。…。雫月先輩も私と同じ吹奏楽部であり同じパートである。…まあ…だからといって喋りかけるわけでも喋りかけられるわけでもないんだけど。
雫「……」
✧• ──────────── •✧
部活が終わり、各々帰り始める中。
時「…んー、」
私だけそこに残り、その楽譜と睨めっこしていた。
そう、ここのリズムが絶妙にわからないのだ。
私は案外人見知りなので誰かに『教えて』と言えるわけでもなく一人でそれを解決しようとしていた。
…そして、そのとき。
時「…へ?」
部室のドアが開いた。私はその場で固まる。
雫「ん…やっぱりいた」
「今日も居残りで練習中?後輩ちゃん」
あろうことか…そこには雫月先輩がいた。
時「せ…先輩…?」
雫「うん。先輩」
時「や…やややっぱりって…」
先輩は私の隣に座り1本のジュースを差し出してきた。
時「あ、ありがとうございます…」
「いや…じゃなくて…」
「み、見てたんですか…?」
雫「え?うん。見てたよ?」
何を当たり前のように…!
雫「あはは…さすがに何日も残って練習してるのみたら…ね」
時「い、いや…」
「いいですよ…これ先輩のお金で買ったんですよね?」
雫「そうだけど…」
「奢りだからって返すのー?」
時「…ぅ」
雫「いい?後輩ちゃん。貰えるものは貰っとくんだよ」
後輩ちゃんって呼び方腹立つな
時「…じゃあ…貰っときます…けど」
雫「うん」
先輩は自分のリュックを背負い椅子から立ち上がる。
雫「それは僕からの奢り、ね」
「あんまやりすぎて体調崩さないようにねぇ〜」
そういって先輩は去っていった。
時「……」
誰もいなくなった部室で一人。
私は、オレンジ色の光が当たるそのペットボトルを見ながら。
(先輩…か…)
そんなことを考えるのであった。




