カフェ
「さて今日はこのまま帰るか?」
「は?何言ってるの?あそこに行くに決まってるでしょ」
「あそこか……」
「なに?嫌なの?」
「い、いやなんにもないぞ。よしいこう!」
昔ながらの商店街の中で一際目立つオシャレなカフェ。
呼び込み看板に今日も可愛い子いますよって誤解招くだろ。
ここはただの猫カフェだ。
なぜ俺が渋ったかと言うと………
「ろしあーーん!ごめんね中々来れなくて!!うんうん……えっ!?そうなのごめーん!」
陽菜が幼児化するからだ。
猫が昔から大好きで今も猫を前にすると幼い時と同じようになるんだ。
お気に入りのロシアンブルーの猫とお話しているが猫語でもわかるんだろうか。
頭良いから犬みたいな猫って言われてるらしい。
「おにい見てよーろしあんのこの口元可愛いよねー」
「そ、そうだな」
ロシアンブルーの特徴で短い口元が微笑んでるように見えるんだ。って陽菜のせいで詳しくなりすぎた
退屈していると膝にちょこんと乗ってきた猫が。
ってお前かよ。
ふさふさの長毛がまるでたてがみのように顔周りに生えている。それでいて顔はくっきりとしているから風格がある。サイベリアンという猫だ。
「はいはいやるって」
この猫は狩猟本能が凄いので毎回くたくたになるまで遊ばされる。
生半可な動きでもしたらその凛々しい顔で見てくるんだからたまったもんじゃない。
「おにいほんと気に入られてるねー」
「嬉しかないやい」
「はいはい。ねぇおにい私ここの猫ちゃん達みたいに気品と美しさを備えた女になりたーい」
「そうか。じゃあ今は野良猫ってとこか。いてっ!」
「うーんこの子たちはなんでこんなに可愛いのかな?」
「なんだろうな。媚びない感じか?」
「そうかなにゃー?ろしあんはどうしてそんなに可愛いのー?」
「にゃー」
もう最初から猫と話しておけよ。
こっちはサイベリアンの相手で忙しいんだ。
「おにいこれは新衣装で活かせると思うんだけど」
「衣装っていうか立ち振舞じゃないか?」
「それだ!!」
ビックリして何匹かの猫がこっちを見る。
陽菜はごめんねと少し謝ってから
「私は何年も猫見てきたんだから猫になりきるのだってできるはず」
「出来たら凄いぞ」
「やるしかないでしょー。だから勉強の為にもう少し遊んでいこうね」
「そっちが目的だろ」
遊び疲れたサイベリアンの代わりに他の猫がくる。
今度は大人しい子だから座ったままで良さそうだ。
奥の方から足音が近付いて来てドアを開ける。
従業員さんだ。
「今日も来てくれてありがとね陽菜ちゃん」
「いえいえーもうほんとに心の癒しですよー」
「そこまで言ってくれたら嬉しいわー。そんな陽菜ちゃんに1つお願いがあるのだけど」
「え?この子たちの為になるなら私頑張りますよ!」
「実はねーいつもビラ配ってくれる子が今日どうしても来れなくて良かったら猫の衣装来て目の前で配ってくれない?陽菜ちゃん可愛いからお願い!!」
「やります!ぜひやらせてください」
「助かるわー今日のお代はいいしなんならバイト代も出すね」
「おにいやったよー!」
やったよって。うちの高校バイト禁止だろ。
「むぅーその時はボランティアだっていうから大丈夫」
「お前それでいいのか………」
「いいの!それに」
耳もとで従業員さんに聞こえないように
「新しい衣装代にもなるからね」
「うーんまあたしかに」
仕方なく今日だけは目を瞑ろう。
俺は先に家に帰って課題でも終わらせよう。
「あ、虎生くんにも用意してるから!」
そう言って従業員さんが取り出したのはネズミの着ぐるみ。
俺だけ狩られる側かよ。
「おにいやるよね?」
うーん2人分ならかなり良い衣装が買える……
だけど、これは流石に恥ずかしい……
「恥ずかしかったら暑いけど被り物もありますよ?」
「じゃ、じゃあそれで」
「やったー!それじゃあじゃんじゃん呼び込みするよ!」
「おー」
初めてのバイトが決まった。
お金もらう以上頑張ってビラ配るぞ。




