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ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第二十八話 -揃いつつある盤上-
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治療


 前回までのブランクアームズ


 普通よりちょっと無気力寄りだけど何かとツッコミがちな高校二年生、片羽(かたは)(ゆい)は右腕を化け物に食い千切られてしまった。日常は傾き、アームドレイターと呼ばれる義手を用い、銀色少女……リンと共に戦う道を歩む。

 プラトーから脱走したナンバー08(ゼロエイト)はエイト、そしてゼロと名乗り、プラトーと敵対する道を選ぶ。

 鈴城(すずしろ)(みどり)狗月(いぬつき)(ひかる)の二人も戦う事を選び、唯への協力を約束した。

 唯とリンはエルの遺した力を用い、《ブランデッド》レリクスとなった。唯はプラトーの撃滅とレリクトデバイスの破壊を宣言する。


 ドクター・フェイスの情報提供を受けエイトとゼロ、緑と光はプラトーの施設へと攻め入る。目的はプラトーのドクター、ミリとオドの確保だったが、後一歩の所で逃げられてしまう。

 一方、フェイスはフェイスで暗躍していた。黒崎(くろさき)芽依(めい)はドクター・ミリとドクター・オドに接触、二人と交渉する。

 結果として、ミリとオドは芽依の邪魔をしないと約束した。









 プラトーの一室に閉じ籠もったまま、二人のドクターは浮かない顔をしていた。

 一方はドクター・ミリ……ピンク色の髪に白衣という奇抜な様相をしていたが、そもそもプラトーにいる人間は大なり小なり奇抜である。

 ミリは携帯端末を片手で操作しながら、不満げに溜息を吐いていた。

 もう一方はドクター・オド……不健康を地で行くような小柄な少年であり、床に広げたノートパソコンを弄っている様からもそれが見て取れる。

 オドはタイピングを続けていたが、ふと手を止めて自身の両腕を見た。そこには痛々しい切開や縫合の跡に加え、肘や二の腕から飛び出た人工骨が顔を覗かせている。

「ミリ、こ、これ。いつとれ、取れるの? たいぷ、タイプしづらい」

 オドの問いに、ミリは首を傾げながら考える。

「あー。オドはちっちゃいからなー。二週間もあればいけるっしょ。それまで仲良くしなよ。それ一応生きてるっていうか、見ようによってはかわいい赤ちゃんじゃん?」

 そう言ってからから笑うミリだったが、オドは不満げだ。

「にゅう、乳幼児、の、かん、幹細胞を使ったおーが、オーガニックな医療器具。じゃ、じゃあ僕、僕の両腕に、いま、赤ちゃんいるってこと?」

 オドは自身の両腕を上げ、ミリに見せるようにする。ミリはこくこくと頷き、得意げに口角を上げる。

「そゆこと! 運がいいよね実際。ここに出来立ての実験体がなかったら、オドくんは大好きなパソコンが出来なくて今もえんえん泣いてたんだよー?」

 再生能力に優れた幹細胞、それを多く含んだ素材である乳幼児を活用して作成した医療器具が、オドの両腕には埋め込まれている。外科的手段との同時併用によって、折られたオドの両腕は順調に回復していた。

「赤ちゃん……」

 呟きながら、オドは自身の両腕をまじまじと見る。正確には、その腕から突き出している‘自分の物ではない骨’を、オドは見ていた。

「そ、そうかんが、考えると。ちょっとかわいいかも」

「でっしょ! そこまで加工して生かすのめっちゃむずいんだからね! 生きててありがとうってなでなでしてあげなよ」

「なでなで……」

 ‘自分の物ではない骨’を撫でるオドを横目に、ミリは携帯端末に入ったメッセージを一瞥する。

「ん、返信来た。期限は設けないってさ。必要な物があればそれも用意する、特別待遇最高じゃない?」

 ミリの言葉に、オドは骨を撫でるのを止めて問う目を向ける。

「ぷろ、プロジェクトリーダー? れんら、連絡来たんだ」

 ミリは頷き、携帯端末の画面をオドに見せる。

「そ。結果としてフェイスが死んでいればいいんだって。あーし達は言われた通りにするだけでいい」

 どういう事かと、オドが首を傾げる。

「あのクソ女、黒崎(くろさき)芽依(めい)に言われたじゃん? 邪魔するなって。あーし達は言われた通りにする。そっちの方が都合が良い」

 ミリは手元のキーボードを操作し、モニターに映像を流す。ドローンで撮影している監視映像だ。

 首のない化け物を、首のない機械人形が追い立てていた。監視映像はリアルタイムで送受信を行っている。つまり、これは今起きている事だ。

「これ、フェイスの保有戦力の一つね。フェイスは《ヘッドギア》って呼んでたけど。今見ると資料の名前が変わってて。えっと、今は《ネックレス》だって。まあ、名前なんかどうでもいいか」

 ミリは映像を指差す。ちょうど、首のない機械人形が……《ネックレス》が首のない化け物、アロガントを捕まえ、引き裂いている所だった。

「あーし達に動くなって言って、街に潜伏しているアロガントの数減らしをしてる。それもこれも全部フェイスがやってる。つまり?」

 言葉を投げ掛けられ、オドは小さく頷く。

「じゃ、邪魔をさせないように。れ、レリクスの戦い。くろ、さき、黒崎芽依と、あの一般人の。あれが近いんだ」

「そ。スポーツじゃないんだからさ、本気で戦えばどっちか死ぬじゃん? どっちが死んでも嬉しいじゃん?」

 ミリの答えに、オドはこくこくと頷く。

「で、あーし達はそれを見届ける。それであのクソ女が死んだら。或いは死にかけてたら」

「僕達、ぼく、僕達が貰う……!」

 互いに顔を見合わせ、どちらからともなく笑い合う。

 死体、或いはその一歩手前の芽依をどうするか。

 二人は大いに盛り上がった。

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