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くだらな草  作者: mm
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8/10

月に憑かれた月天子 遥か彼方

   月に憑かれた月天子  遥か彼方



 助けてください 月天子(げってんし)

 どうかわたしたちをお救いください


 なぜ人は争うのでしょう。

 それをどうしてわたしが止められましょう!

 父も兄も戦に狩られて異郷に葬られました。

 母は鉄の雨にうたれて血の海に沈みました。

 残ったのは幼い妹とわたしだけ。

 食べるものもろくになく、妹は日々、病んでいきます。

 あんなに明るい子でしたのに、今では笑うこともありません。

 ただ人形のように虚ろな目でどこか遠くを見ているのです。

 妹の心は、もうあの子のからだに宿ってはいません。

 きっと鬼に心を持って行かれてしまったのです!

 わたしはただ、あの子の魂まで持って行かれぬよう、祈るしかありません。


 妹を助けてください

 わたしには、あの子を見るに忍びません。

 戦は終わるでしょうか。

 暗い水底に、明るい光は差すでしょうか。


 ああ、月天子


 どうか

 どうかわたしたちをお助けください。


   ※



 ―――人間とは、何と身勝手で、何とおろかなのだ……


 人は私に様々な言の葉を投げかける。


 祈り

 うたい

 嘆き

 笑い

 呪う


 私を見上げ、「美しい」と賛美する者

 残酷だと恐れる者

 想いを馳せる者

 不気味だと忌む者

 神と崇め信仰する者

 私の(もと)で果て逝くものたち

 そして新たに生まれ来るものたち


 私は地を照らし、人々を彼方から見下ろす。


 今宵も多くの者が殺し合い

  多くの者が果て

  多くの者が涙をこぼした


 仲間の命を奪い、何を得ようと言うのか


 おろかな人間。

 己のあさましさに気付かぬ、あわれな人間たち。

 しかし私は何も出来ぬ。


 娘よ、もう無駄な事はやめろ。

 私には何も出来ぬと言うのに。

 そのような眼差しで、私を見るのではない。


「神」と言う名で私を縛りつけた、いまいましい人間たち。

 神など、この世界には存在し得ない者。

 私に願いをかけようとも、それは無意味な事であり、人間たちの勝手な押し付けである。



 私は月


 ただ青い星を、遠く彼方から見下ろすだけの存在。

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