反乱の終わり、そして旅立ち
王を殺し、パーティへの復讐も済ませた俺は城を出たが、思ったより襲ってくる敵は少ない。
「どうなってるんだ?もう少し敵兵がいてもよさそうなものだが」
兵士も民衆も俺のことなんて気にしないで、ある方角から逃げるように大慌てで走っている。
「まあ、いいか。」
俺は仲間たちと合流するため、ひとまずは都を囲む壁の南門──人々が離れようとした方向──へ向かったが、そこでパルカラと出会った。パルカラは俺のそばに来ると、馬を下りて兜を脱いだ。パルカラは嬉しそうな顔をしている。
「ありがとう、アルゴ・ロンド!おかげで都は大混乱だ!」
開口一番にいっぱいの感謝を向けられて、俺は面食らった。
「あ、ああ。俺は強いからな。」
「お前のことだ、さぞ大暴れしたのだろう。」
「おう!雑兵どもは言うまでもなく、ナハンドの奴も、王も殺したぜ!」
「おお、それは凄い…いや、お前今なんと言った?」
「ん?雑魚もナハンドも王も、たくさん殺してやった。」
「王も殺したのか?」
「そう言ってるだろ」
パルカラの顔から笑顔が消え、緊張したような表情になって、次に頭を抱え始めた。
「パルカラ?」
「殺して、しまったのか?」
「しつこいな、そうだよ」
「とりあえず、死体のある所に案内してくれ。まだ生きてるかもしれない…」
「俺も詳しくはわからない、あいつは倒れた後運ばれていったからな。できれば、王の顔を知っている奴を何人か呼んで城の中を探した方がいいと思う」
パルカラは俺に案内されて、十人くらいの騎士を連れて城に入った。すると、王の死体が治療室で見つかった。
「死んでいるのか?蘇生術を試せないか?」
「もう無駄です…怪我を負ってから時間が経っているうえ、首がひどく壊されています」
「そうか…そうか…」
パルカラはしばらくうなだれていたが、しばらくして俺に向き直り、説教を始めた。
「お前、なぜ殺したんだ!」
「なぜってそりゃあ、敵だったから…」
「敵と言っても王だ。生かしておけば、使い道などいくらでもあったのだぞ」
「でも、敵は殺せるときに殺した方がいいだろ?それをし損ねて死んだ奴は多いと思うんだけど」
「ぐっ…むうう…」
そこへタークサルとラッセルがやって来た。二人に対して、俺とパルカラは経緯を説明した。タークサルは困ったような顔をしていたが、ラッセルの口元は笑っていた。
「そうでございますか…そうでございますか…困りましたな」
「どうします、一等貴。王が死んだ以上、この後の内乱では旗印が得られませんが」
「…」
タークサルは考え込んでから、パルカラに向けてこう言った。
「王の死について、口止めをしておきなさい。王が生きていることにしておき、後から都合のいいように誤魔化します」
「王さえ生きていれば、話はもっと単純だったのだがな」
「やめなさい、パルカラ。死んでしまったものを、あれこれと言ってもどうしようもありません。それに戦いで勝てたのも、ロンド様の貢献が大きいのですよ」
「…そうだな、すまない。」
そこでラッセルが口を開いた。
「アルゴ・ロンドという男は、そもそも政治とか大義名分とか、そういったことには興味を示さない人物です。初めからそのことを頭に入れておかないまま利用した我々の落ち度でしょう」
パルカラは諦めたような表情で、
「そうかも、な…。私は、化け物を人間の尺度で図っていたのかもしれん…」
と言って、笑った。
「ラッセル、あなた、こうなると知っていたのではありませんか?あなたのことですから、面白がって、ことがややこしくなるのを放置したのでは…」
ラッセルは、悪徳交じりの笑みを見せ、
「さあ、どうでしょうね」
とすっとぼけてみせる。俺から見ても、こいつはそういう邪悪さのある奴だけど、色々助けられたし黙っておいてやる。そうしていると、ラッセルがこちらに話を振ってきた。
「それで、これからあなたはどうするのですか?タークサル一等貴に仕えますか?」
「いや、俺はまた旅に出ることにするよ。その方が、多分愉快だ」
「そう言うと思っていました!」
ラッセルは、今度は邪悪でない笑顔を見せた。
「私もついて行きます。あなたのそばにいる人生は、きっと面白い!」
「えっ」
パルカラは驚いた様子だ。ラッセルはタークサル派の商人だと以前本人から聞いたが、それがタークサルを捨てて俺についてくるとなれば、そうなるのも無理はない。
「地上で最も自由な男と、それに魅了された商人…我々には、どうにも止められなさそうですな。」
「ラッセルめ、ロンドに感化されたか?」
「いいえパルカラ殿、私にはずっと、さらなる自由が必要でした…これまでは機会がなかったというだけです」
「そうだぜ、こいつは普段は普通だが、結構弾けたヤツなんだ。」
「そうですか…そうだったのですか…」
タークサルも驚いているらしかった。上司と部下として付き合うのと、友人として付き合うのでは、見えるものが違うらしいな。
二頭の馬と、いくらかの物資をもらって、その日のうちに俺たちは出発することにした。広場で荷物を整理した後、タークサルとパルカラが引き留めてくる。
「あとひと月残っていかれませんか?祝勝の宴にあなたを招き、いろいろと語らいたいのですが」
「そうだ、アルゴ・ロンド。第一私はお前に負けっぱなしではないか。疲れを癒して、もう一試合したい」
「いや、行かせてもらうぜ。用事も済んだことだし、俺は次の冒険のことでわくわくしてんだ」
「冒険、ですか?」
ラッセルが尋ねた。
「ああ。西の果てには楽園があると聞いたことがある。それを見に行くんだ。途中にはまだ倒されていない怪物がたくさんいるらしいから、道中も退屈しなさそうだしな」
「ほう、それは面白そうですね」
俺とラッセルは馬に乗り、その頭を西へと向ける。
「じゃあな、タークサル!パルカラ!」
「またいつか!」
タークサルとパルカラはその場にとどまりながらも、手を振り、別れの挨拶をする。
「さようなら、英雄ロンド、そして思慮深きラッセル!」
「ことが済んだら会いにいくぞ、それまで私を待ってろアルゴ!」
俺とラッセルは馬を並べ、太陽に向けて進んでいく。俺の英雄譚はまだまだ続きそうだ!




