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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第4章】やりたかったこと

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【38話】偽りの仮面

スライム狩りは、完全にルーティンになった。


朝起きて、軽く体を動かす。

朝食をとって、装備を確認する。


それから――スライムを三体。


倉庫の結界は、もう張るまでもないくらい手慣れたものだ。

腕輪に闇魔力を流し、成長を促す。


(……今日も三体まで)


無理はしない。

それが、今の俺のルールだ。


成長したスライムは、確かに強い。

ただし、相変わらず鈍い。


物理攻撃には妙に耐えるが、

闇魔法を薄く、的確に通すとあっさり崩れる。


(やっぱり、設計どおりだな)


強化されても“万能”にはならない。

ちゃんと弱点が残っている。


倒して、解体して、素材を分ける。

この作業も、もう慣れた。


「……今日は、なし」


三体目まで終えて、床を見回すが、

目当てのものは落ちていない。


まあ、当然だ。


聞いた話では、スライムがそれを落とす確率は――

百体に一度、あるかどうか。


そもそも、普通は成長しない。

さらに言えば、そこまで育つ前に狩られる。


(落ちたらラッキー、くらいでいい)


経験値は安定してうまい。

素材もはした金程度だが売れる。


宝石は――あくまで“当たり”だ。


「トウマ様」

セラが声をかけてくる。

「今日までで、合計九十六体です」


「……もうそんなにか」


数を聞いて、少し驚く。

毎日三体。

気づけば、それなりの数になっていた。


「噂では、百体に一度ほど」

セラは淡々と続ける。

「落ちるのは《闇晶》と呼ばれる宝石だそうです」


「闇晶……」


手の中で転がした、あの日の結晶を思い出す。

小さくて、黒くて、

なのに光を吸い込むみたいな存在感があった。


「高く売れるんだよな?」


「はい。加工前でも、一般的な魔石とは桁が違います」


次の準備をする。

無理に狙わない。

期待しすぎない。

ただ、淡々と積み上げる。


そうやって――

ある日、ふと気づいたときに、結果が出る。


派手じゃない。

でも、確実に前に進んでいた。


翌日。以前手に入れた闇晶を見て考えていた。

高く売れるとは聞いたものの、そのまま売る気にはどうしてもなれなかった。


理由は単純だ。

――子供が、存在自体知らない人もいるくらい珍しい宝石を持っている。


それだけで、面倒ごとの匂いしかしない。

(最悪、どこから手に入れたか詮索される)

(下手すりゃ、盗品扱いだ)


拠点の一室で、俺は腕を組んで考え込んでいた。


「……やっぱ、正面からは無理だよな」


「そうですね」

セラが、落ち着いた声で頷く。


「トウマ様の年齢で、あの宝石を単独で持ち込むのは、不自然です」


リュカも同意するように言った。

「ベテラン冒険者だとしても、少し怪しまれる」


「だよな」


しばらく考えてから、倉庫の奥に視線をやる。


そこにあったのは――

黒歴史ノートから出てきた一式。


正体を隠すための衣装。

体型を曖昧にする外套。

顔を完全に覆う仮面。


(……こんなところで役に立つとは)


俺は溜息をつきながら、それを手に取った。


試しに着てみる。


フードを深くかぶり、仮面をつけると、

自分でも年齢が分からなくなる。


「……どうだ?」


リュカが、じっと見てから言う。

「子供には見えない」


「怪しくは?」


「怪しいけど、それはそれで納得はできる」


「それで十分だ」


セラが、柔らかく微笑んだ。

「素性を明かさない商人や冒険者は、珍しくありませんから」


目的地は、隣の街――《レインツ》。

この街より少し大きく、商工業も活発に行われている。

宝石の持ち込みも、比較的珍しくないはずだ。


「俺が行く」

そう告げると、二人は特に反対しなかった。


「トウマ様、お気をつけて」


「無理はしないで」


「ああ」

外套を羽織り、宝石を懐にしまう。


足がつかないように。

噂が戻ってこないように。


これは“金策”だ。

冒険じゃない。

だからこそ、慎重に。


仮面の奥で、小さく息を吐く。

「――行くか」


そうして俺は、《レインツ》へと向かった。

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