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竜機兵物語~難易度ベリーハードのシミュレーションRPGの世界に転生しましたが、鍛え上げたアバターと専用機で無双します~  作者: 河原 机宏
第十五章 蒼穹の果てには

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人工島シャングリラ


 補給を終えた翌日、『第七ドグマ』は失われた大地――正式名称人工島『シャングリラ』近海に到着した。

 進路上には島を覆う分厚い雲海のカーテンが敷かれており、新人類の侵入を阻んできた。

 それ故、新人類は雲海という守護者の奥には失われた大地という未知の大陸が存在し豊富な資源や宝物があると夢想してきた。

 その想像はある意味的中していた。旧文明が残した遺産の数々が今なお現存していたのである。

 軌道エレベータ、マスドライバー、その他にも種々の設備が残っており、その何れもが現在の技術レベルを大きく上回る代物だった。

 

 聖竜部隊はその施設を利用し遙か天空に存在するクロスオーバーの本拠地オービタルリングに侵攻する作戦を立案。

 作戦を実行に移すべく雲海に突入しようとしていた。

 『第七ドグマ』内にある飛空艇ドックには三隻の飛空艇<ニーズヘッグ>、<ホルス>、<ナグルファル>が停泊し、最終作戦でオービタルリングに向かう<ニーズヘッグ>と<ホルス>の船体には大気圏離脱と突入時の対策として耐熱コーティングが施されていた。


 雲海突入前、<ニーズヘッグ>のブリッジではいつもと同じ様に穏やかな朝の挨拶が交わされていた。


「皆おはよう」


「おはようございます、シェリンドン主任。昨夜は良く眠れましたか?」


「え、ええ、ぐっすり眠れたわ……」


 アメリが元気よく挨拶するとシェリンドンの返答の歯切れが悪いことに気が付く。

 他にも気が付いた事がある。それはシェリンドンが少し眠たげな様子でありながらもやたらと肌の調子が良い事であった。


「……主任、凄く肌がツヤツヤしていますがまさか……」


「な、何の事かしら……? そ、そんな事よりもう少ししたら雲海に突入するでしょう。準備をしないと……」


 話をはぐらかすシェリンドンを前にオペレーターのアメリとステラはアイコンタクトを取り頷き合う。


「そう言えばハルトさんは昨日でシミュレーター訓練が終わったんですわよね。夜はゆっくり眠れたのですか?」


「へぇ、え、まあ、最初はあまり寝つけなかったみたいだけど、途中からは朝までぐっすりだったわよ」


 ステラの問いに対しシェリンドンは視線を逸らし、これまた歯切れが悪い感じで応えた。これを見たステラは確信した。


「やっぱり主任は嘘をついていますわ! 主任は嘘をつく時に喋り方がおかしくなったり視線を逸らすクセがありますもの。昨晩は旦那様とよろしくやったに違いありませんわ!」


「主任、身体を大事にしなければいけない時に無茶しちゃダメじゃないですか。それにハルトさんだって作戦前でしっかり休息を取らないといけなかったでしょう? どうして我慢できなかったんですか!?」


「う……く……、だって三人とも昨日は凄い熱が入っていて、ハルト君もギラついていて……私の体調も落ち着いているからいけるかなって! それにグランバッハ家の特性ジュースを飲んだから睡眠時間こそそんなに長くは無かったけど質の良い睡眠がとれたって言っていたし……」


 シェリンドンは自分の嘘を看破された事と性欲を抑えられなかった羞恥心から顔を赤く染めながら口早に弁明した。


「主任……必死ですわねぇ。それにしても、あのグランバッハ家のエロジュース飲ませたなんて本気ですわね!」


「ああっ、顔を赤くして恥ずかしがる主任……尊いっ!!」


 こうしてシェリンドン研究チームにおける日常のせわしないやり取りは決戦直前でも普通に行われ、女性陣のセンシティブな会話の中にあってハンダーを始めとする男性陣は身の置き場のない思いをしながら黙っているのであった。

 そんなどんちゃん騒ぎも間もなく落ち着き、雲海への突入が始まる頃には各自所定の席につき『第七ドグマ』の管制室と連絡を取り合い突入準備に入っていた。

 

 『第七ドグマ』の周囲にはエーテル障壁が展開され分厚い雲海を吹き飛ばしながら前進していく。

 管制室では『第七ドグマ』の船体に異常は無いかチェックが行われつつ『シャングリラ』の座標へ向かって最短コースを飛行していく。


 


 <ニーズヘッグ>の格納庫ではやたら肌がツヤツヤしているティリアリア、クリスティーナ、フレイアと少しお疲れ気味のハルトがおり、それを見た竜機兵チームの面々は何が起きたのか察し呆れていた。


「お前たちはバカなのか?」


 チームを代表してシオンが三人娘とハルトを半ば呆れた様子で叱責した。

 だが、上機嫌のティリアリア達はのらりくらりとシオンを躱し、怒りの矛先はハルトに向けられる。


「世界の命運が掛かっている大事な時にお前たちときたら……」


「ごめんよ、シオン。でもさ、どうして山に登るかと聞かれたら、そこに山があるからだと答えるだろ。――俺は山に登りたかったんだよ。八つの霊峰に……」


「そうか、どんな山か知らないが登れて良かったな。――で、<ヴィシュヌ>戦を想定したシミュレーターの戦績はどうだ? 僕が知っているのは勝率が上がってきた頃だったが……」


 ハルト渾身のネタをシオンは冷たくスルーする。

 ハルトは「その内の二つはお前も良く知ってるだろ」と思いつつも言ったら確実に怒られると分かっていたので素直に戦績報告だけをした。


「最終的には百戦やって五十勝四十七敗三引き分けという結果になりました」


「僕も同じシミュレーターで戦ってみたが全く歯が立たなかった。あの化け物を相手にそこまでやれるのなら結果は上々だな。後は実戦でどうなるかと言う訳か」


 ハルトの好調な戦績結果に驚き安堵するシオン。しかし、それでも<ヴィシュヌ>戦はかなり厳しいものになると考え心配そうな顔をする。


「あのシミュレーターの<ヴィシュヌ>はオリジナルにかなり近い性能だと思うけど、本物はあれよりも強いだろうな。でも、やれる事はやったし後はぶつかるだけだ。それにシオン達だってクロスオーバーを相手にするんだ。やれそうか?」


「僕たちも熾天セラフィム機兵シリーズ相手のシミュレーターで訓練をしたからな。お前と同じくやれる事は全てやったつもりだ。どこまでやれるかは戦ってみなければ分からないな」


 それぞれが決戦に向けての最終調整を終え心を一つにしていく。


 そして<ニーズヘッグ>のブリッジでは――。


「主任、管制室から連絡です。『第七ドグマ』は雲海のカーテンを突破。前方に巨大な島を確認したとのことです。ブリッジのメインモニターに映像を回します」


「あれが失われた大地……人工島『シャングリラ』……」


 メインモニターには天空を貫き先端が確認出来ない大樹と見た事の無い施設が点在する巨大な島が映し出されていた。

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