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ダイスと共に世界を歩く  作者: 黄粋
第九章
187/208

時空を繋ぐ道。反撃開始

スランプによりなかなか投稿出来ません。

今後もペースは安定しませんがそれでも書いてい来ますので今後ともよろしくお願いします。

 

 鎧の人物は遠ざかるアーリと騎竜には目もくれず、目の前のラヴァイアタンに猛然と襲い掛かる。

 

「(速いが、動きそのものは直線的……)」

 

 弾丸のように跳躍し、一直線にラヴァイアタンの首を取らんと迫る蹴り。

 しかし老竜は冷静に考察しながらその蹴りを上空へ大きく飛翔して躱した。

 

 勢いを殺さず宙を舞う鎧に、ラヴァイアタンは舞い上がる勢いを乗せて空中を一回転し、巨木よりも太い尻尾を叩き込む。

 上から下へ大きく振るわれた巨大な尻尾によって鎧は、コンクリートの地面に叩きつけられた。

 轟音と共に地面が大きくひび割れ、陥没していく。

 

「強い……」

 

 思わず呟いたラヴァイアタン。

 彼の尻尾の鱗は何枚か剥がれ落ちていた。

 攻撃が当たる瞬間、鎧はそれに合わせて拳で反撃をしていたのだ。

 自由に動けない空中で放たれた一撃にも関わらず、硬い竜の鱗に罅が入り、一拍の間を置いて砕けてしまう。

 それはまともに攻撃を受ければ、ラヴァイアタンとてただでは済まない事を示していた。

 

 ボロボロと鱗が落ち、その裏にある皮膚が露わになる。

 しかしそれは即座に生え変わった鱗によって隠されていく。

 彼にとっての十全の防御力は一瞬で取り戻された。

 

 とはいえ鱗が破壊された後に連続攻撃を受けてしまえばダメージは避けられないだろう。

 再生出来るからと、無暗に攻撃を受ける事は出来ない。

 

「……来る!」

 

 叩きつけられ、黙々と上がっていた土煙を切り裂き、鎧の何かはラヴァイアタンに向かってまるでロケットのように飛翔する。

 

「(馬鹿の一つ覚え……)」

 

 ラヴァイアタンは今までと同じ行動と考え。

 

「いや、違う!」

 

 すぐにその考えを改めた。

 

「ッーーーーーー!!!」

 

 声にならない音のような物を鎧の顔部分から発しながら、鎧は竜に接敵するよりも手前で目の目に紫色の壁のような何かを作る。

 眼前のそれを蹴る事で飛翔する方向を強引に変化させたのだ。

 何度もそれを行い、鎧はラヴァイアタンの周囲を威嚇するかのように旋回する。

 

「攪乱のつもりか! 舐められたものだな!!」

 

 老竜の周囲に浮かぶ風の塊。

 一瞬で練り上げられた百を超える風の砲弾はは彼の一睨みで旋回する鎧に向かって殺到する。

 

 到底避けきれないだろう弾幕。

 それに対して鎧は逃げようとせず、先ほどまで方向転換に利用していた壁を水平に作って足場にしてその場に留まった。

 ラヴァイアタンはそれを諦めとは思わない。

 さらなる攻撃の準備を進めながら、彼は敵を見据えてその行動を注視した。

 

「ッーーーーーーーーーー!!!」

 

 鎧は空へ向かって吼えながら、迫りくる風の弾幕を叩き落とし始めた。

 迫る風の大砲は一撃一撃がコンクリートを容易く粉砕しうるもの。

 鎧の背後に立ち並ぶビルが攻撃の余波で崩れ落ちていく様が、その威力を物語る。

 だと言うのに鎧は真っ向からその悉くを弾き、打ち据え、有効打をただの一撃も許さず、悠々と自身が作った足場に立っていた。

 

「くらえぃ!!」

 

 数でダメだと言うのなら質。

 ラヴァイアタンはその巨大な口から光の熱波を放つ。

 先ほどの風の弾幕が水鉄砲だったと錯覚するほど強大な力を内包したエネルギー。

 

 避ける事すらままならない放射上の光に対して鎧はその全身から凄まじいい勢いで大量の瘴気を放出した。

 光と闇がぶつかり合う。

 ぶつかり合い弾きあう力が激しく明滅し、余波が周囲に飛び散り建造物を破壊していく。

 

「はああああっ!!!」

 

 竜の咆哮に後押しされるように光はさらに勢いを増す。

 闇は少しずつ光の勢いに押し負け、そして次の瞬間に貫かれた。

 しかし。

 

「むっ!?」

 

 光が届く場所に鎧の姿はなかった。

 

「後ろっ!」

 

 素早く相手の位置を把握したラヴァイアタンは振り返り様に右の三つ指の鋭い爪を横薙ぎに振るう。

 しかしその爪は真っ向から鎧によって受け止められ、あまつさえ砕かれてしまった。

 

「がぁっ!?」

 

 さらに鎧の猛攻は続く。

 瘴気を足元から噴出し、追い打ちとばかりに放たれた蹴りがラヴァイアタンの腹部に突き刺さる。

 さらに間髪入れずに放たれた拳が傷ついた腹部の肉を抉り取った。

 

「ぐぅっ!! うぉおおおおっ!!!」

 

 久しく感じなかった痛みを堪え、竜は左腕を尚も追撃しようとする鎧に叩きつける。

 深追いし過ぎたのか、鎧は回避する事も出来ずに叩き落された。

 

 その隙にラヴァイアタンは大きく羽ばたき、さらに上空へと舞い上がり距離を取る。

 

「こうもあっさりと竜の体に傷を作るとは……恐るべき力だ」

 

 あれで倒れるはずがないと考え、警戒を解く事なく竜はその身に回復魔法を使用しながら呟く。

 

「……しかし貴様が『タツミ殿ではない事』は先に触れた時にわかった」

 

 鎧の中身がタツミであったならば、彼を瘴気から救出するためにラヴァイアタンは全力で手加減をしなければならない。

 しかし彼はこの鎧が力そのものの具現化した姿であり、その中身が瘴気の詰まっただけの『空っぽ』の人形である事をこれまでの攻防の中で見破っていた。

 

「人形よ。もはや加減はせぬ」

 

 周囲に鳴り響くほどに大きな唸り声を上げる。

 それはまるで落雷の音にも似ていて、ラヴァイアタンが、長きを生きた老竜が本気になった事を何よりも雄弁に語っていた。

 

 彼の雰囲気が変わった事に触発されたか、都市の地面を侵食していた瘴気の沼が不気味に蠢く。

 そして人形もまた、無傷で立ち上がり、ラヴァイアタンを見上げる。

 何もないがらんどうのはずの兜は、しかし確かに彼に視線を向けていた。

 そしてその視線には何らかの感情、確かな意思が感じ取れる。

 

「(空っぽ故の無感情さであるならば、そもそも感じ取れる物などないはず。……いやそもそも意思など持たないはずの力が形を成し学習するなど、そのような事は通常起こりえない。瘴気とはそのような事まで出来るというのか?)」

 

 ラヴァイアタンの脳裏に鎧が出現した時に見えた紫色の魔力とそれの持ち主である旧知の相手が過ぎった。

 

「(あやつは死して尚残るような強力な加護をタツミ殿に残していた。であるならば瘴気に飲み込まれたとはいえ早々にどうにかなるとは思えない。しかしならばあやつの魔力を纏ったこの鎧人形は……)」

 

 何十という攻撃手段を準備しながら、ラヴァイアタンはタツミを救う手段を探してこの鎧の謎について考察する。

 

 鎧は今までと変わらず攻撃態勢を取り、ラヴァイアタン目掛けて跳躍する。

 

「(おそらくこのままただ戦っていても……瘴気に飲み込まれたタツミ殿の救出は不可能。この鎧が何であるかを正確に見極めて取っ掛かりを掴まねば……)」

 

 爪で、体で、魔法で、時にはブレスで鎧を迎撃しながら考察を続ける。

 彼らの戦いによってもはや周囲に無事な建造物は無くなっていた。

 

 半ばから折れたビル、崩れた店や家屋、街灯や乗り捨てられた車。

 世界的に有名なニューヨーク市が廃墟と化すなどと誰が予想しただろうか。

 

 事態は膠着状態に陥ったかと思われた。

 何度目かの攻撃の交錯。

 そこでラヴァイアタンは近づいてくる者たちに気が付いた。

 

「どこ見てンだ、てめぇええッ!!!!」

 

 漆黒の鎧に横合いから緋色の塊が直撃する。

 それはイフリートをその身に宿し、怒りを露わに全身を真っ赤に燃え上がらせたライコーだった。

 彼女の奇襲に気づいたラヴァイアタンが風を操り人形の動きを一瞬だけ止める。

 おかげで怒号と共にシルフの風を推進力にした突撃から放たれた手甲の一撃は人形の抵抗を受ける事無く突き刺さった。

 

「(奴を無力化する準備は整った、という事ですかな?)」

 

 仲間たちに念話で確認をする老竜に人数分の力強い返事が返ってくる。

 

 実はラヴァイアタンは変化する状況と分かった情報を随時、仲間たちに念話で共有していたのだ。

 念話は魔力の消耗の激しい魔法であるが、使い手次第で距離など関係なく会話をすることが出来る。

 魔力も技術も卓越した所にいる老竜は、戦闘に労力を割きながらも仲間全員に念話を繋ぎ維持し続けていた。

 

 お陰でお互いの状況はリアルタイムで伝わり、そして彼らはこの人形を倒すのではなく無力化する方針でまとまっていた。

 

 吹き飛ばされ、水平に吹き飛ぶ人形。

 その先にオイチの式神に乗ったトラノスケとキルシェットが待ち構え、一当てしたライコーは彼らと挟み込むように人形を追う。

 

「皆さま、反撃開始と参りましょう」

 

 複数の式神を宙に放ちながら、オイチは漲る闘志を込めて静かに呟き、異口同音で仲間たちが応える。

 

 ラヴァイアタンは自分よりも遥かに脆弱な彼らの漲る戦意に不思議な心強さを感じ、予断の許さない状況でありながら口元が綻ぶのを止める事が出来なかった。

 

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