EPISODE.248話〘シークレット出品――オリジナル武器・氷帝龍グロー〙
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回は、シークレット出品最後の武器が登場します。
最後に姿を現したのは、氷属性専用のオリジナル武器『氷帝龍グロー』。
果たしてどのような性能を秘めた武器なのか、そして誰が競り落とすのか。
ぜひ最後までお楽しみください。
『轟雷帝大剣』が五十億Gという高額でサンオンに落札され、会場内では未だ興奮が収まっていなかった。
俺とリョウも、まさか最後の最後でサンオンが五十億Gを提示するとは思っておらず、その競りの行方に驚かされていた。
そんな中、主催者は会場内が落ち着くのを待つと、再び参加者たちへ声を掛ける。
[皆様、お待たせいたしました。それでは、シークレット出品最後の武器をご紹介いたします!]
最後の武器。
その言葉を聞いた参加者たちの視線が、一斉に壇上へ集まる。
やがて壇上へ、一対の格闘武器が運び込まれた。
俺とリョウも、次はどんな武器なのか気になりながら壇上を見つめる。
主催者は参加者たちの反応を確認すると、高らかに告げた。
[シークレット出品最後の武器――『氷帝龍グロー』です!]
会場内から小さなどよめきが広がる。
主催者は『氷帝龍グロー』の傍へ立つと、その詳細について説明を始めた。
[こちらの『氷帝龍グロー』は、氷属性専用の格闘武器となります!]
[攻撃力は――15000!]
その数値が告げられた瞬間、会場内が一気にざわめいた。
[攻撃力15000だと!?]
[さっきの『轟雷帝大剣』より高いじゃないか!]
参加者たちが驚く中、主催者はさらに説明を続ける。
[そして、この武器には魔法格闘スキル【ブリザードショット】が備わっています!]
[通常の拳による攻撃が相手へ命中した瞬間、拳から【ブリザードショット】が発動! 拳による一撃に加え、さらに氷属性による追加ダメージを与えることができます!]
[拳の一撃だけで終わらないのか!?]
[格闘攻撃の直後に氷属性の追加攻撃だと……!?]
会場内から再び驚きの声が上がった。
だが、『氷帝龍グロー』の性能はそれだけではなかった。
主催者は一呼吸置くと、さらに声を張り上げる。
[そして『氷帝龍グロー』には、奥義【レイジングフリーズストーン】が備わっています!]
参加者たちが静まり、主催者の説明へ耳を傾ける。
[奥義を発動すると両拳が氷に覆われ、両腕をクロスさせながら頭上へ振り上げ、そのまま一気に振り下ろします!]
[すると使用者を中心とした周囲五メートルの地面から、無数の巨大な氷の刺が一斉に出現! 範囲内にいる敵へ強烈な一撃を与える、広範囲攻撃となっています!]
その説明を聞き、参加者たちは言葉を失いながら『氷帝龍グロー』を見つめていた。
攻撃力15000。
通常の拳撃が命中すれば【ブリザードショット】による追加攻撃。
さらに周囲五メートルを巻き込む奥義【レイジングフリーズストーン】。
氷属性を扱う格闘職にとって、これほど強力な武器は滅多に存在しないだろう。
しかし――。
主催者から告げられた次の説明によって、会場内の空気が一変した。
[そして皆様。驚くのは、まだ早いです!]
[『氷帝龍グロー』の製作に使用された素材――それは、伝説のドラゴン【エンペラーゴッドドラゴン】の鱗です!]
一瞬――。
会場内が静まり返った。
そして次の瞬間。
[エ、エンペラーゴッドドラゴンだと!?]
[伝説のドラゴンじゃないか!!]
[本当に存在していたのか!?]
先ほどまでとは比べ物にならないほどの大騒ぎとなった。
商人や冒険者だけではない。
鍛冶師や錬金術師たちまで驚愕し、壇上の『氷帝龍グロー』から目を離せなくなっていた。
俺とリョウも、思わず顔を見合わせる。
[トレン……伝説のドラゴンっすよ。]
[ああ。エンペラーゴッドドラゴンか……。まだそんな強いヤツがいるんだな。]
[本当っすね。俺たちが知らない強い魔物は、まだまだいるみたいっすね。]
俺とリョウは驚きながらも、まだ見たことのない強敵が存在していることに感心していた。
騒ぎが続く中、主催者は参加者たちを落ち着かせるように説明を続ける。
[今回使用されたエンペラーゴッドドラゴンの鱗は、北エリア・極寒のブェロヴァ山岳にある洞窟、その最深奥で偶然発見された伝説の素材になります!]
[そして、その貴重な鱗を使用し、ある鍛冶師と錬金術師が協力して製作したオリジナル武器こそ、この『氷帝龍グロー』なのです!]
鍛冶師と錬金術師による共同製作。
その説明にも参加者たちは興味を示していた。
そして主催者は、さらに続ける。
[なお、今回こちらの武器を出品された錬金術師は――『東エリアの最強錬金術師』です!]
[なっ!?]
[東エリアの最強錬金術師だと!?]
会場内に、再び大きなどよめきが巻き起こる。
俺とリョウも、その通り名を聞いてすぐに反応した。
以前の競りでサンオンと激しく競り合っていた、あの東エリアの最強錬金術師。
まさか『氷帝龍グロー』の製作にも関わっていたとは思わなかった。
そして――。
全ての説明を終えた主催者は、参加者たちを見渡す。
[それでは、シークレット出品最後の武器『氷帝龍グロー』の競りを開始いたします!]
[開始価格は――十億Gからです!]
その宣言が響いた直後――。
[二十億G!]
開始価格から、いきなり倍へ跳ね上がった。
しかし驚く暇もなく、別の参加者が声を上げる。
[三十億G!]
[四十億G!]
[よ、四十億Gです!! 開始直後から凄まじい勢いで競り額が上昇しています!!]
十億Gずつ一気に跳ね上がる競り額。
誰も様子を見るつもりなどない。
伝説のドラゴンの鱗から製作された『氷帝龍グロー』を手に入れようと、最初から勝負に出ていた。
そして――。
[五十億G!]
その金額が告げられた瞬間、会場内が静まり返る。
開始価格十億Gから、僅かな時間で五十億G。
あまりにも速い競りの展開に、参加者たちも互いの様子を窺っていた。
主催者も興奮を隠せない。
[五十億Gです!! 他にご入札はございませんか!?]
誰も手を挙げない。
これで決まった――。
会場にそんな空気が流れ始めた、その時だった。
一人の龍騎士が静かに手を挙げる。
そして――。
[六十四億G!]
一瞬、誰も言葉を発することができなかった。
[ろ、六十四億G!?]
[一気に十四億Gも上げたぞ!?]
[本気かよ……!]
会場内が大きなどよめきに包まれる。
五十億Gを提示した参加者も龍騎士へ視線を向けたが、それ以上の金額を提示することなく静かに手を下ろした。
主催者は興奮した様子で会場全体を見渡す。
[六十四億Gです!! 他にご入札はございませんか!?]
誰も動かない。
しばらく待っても、新たな入札者は現れなかった。
そして主催者は大きく頷く。
[それでは――シークレット出品最後の武器『氷帝龍グロー』は、六十四億Gで落札です!!]
その宣言と同時に、会場内から盛大な拍手が沸き起こった。
こうして、伝説のドラゴン【エンペラーゴッドドラゴン】の鱗から製作された氷属性専用武器『氷帝龍グロー』は――
六十四億Gという高額で、一人の龍騎士が競り落としたのであった。




