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第11話

どうしましょう…。嘘は言いたくないですけれど…。全部を話すわけにもいきませんわね。

この世界は乙女ゲームの世界だなんて話は、荒唐無稽過ぎますもの。

もし仮に私が逆の立場でその話をされたら、とても信じられませんわ。

「キャロル?」

リアム様が…久々に愛称で呼んでくださいました!

じーんとして、涙がうるっとでてくるのをたくさん瞬きをして、なんとか我慢する。

緊張のあまり、こくりとのどを鳴らすと、どうにかことのあらましをまとめようと普段使わない頭をフル回転。

そして、震える声でリアム様に説明する。

「リアム様。その…信じていただけないかもしれませんが、予知夢のようなものを見たのです。

 夢とは思えないほどのリアリティで、実際に体験したできことのように感じました。

 その内容は、リアム様が私との婚約破棄を高らかに宣言されて、その直後にアリス・ハーンとの婚約を発表されるというものです。」

「ハーン公爵家の最近養女となったご令嬢か。今朝、彼女も事件現場より少し離れた場所で倒れていた。

 それで?その夢が今朝の襲撃とどうつながる?」

「襲撃だなんて…滅相もございません。

 実は今朝、お二人は運命的な出会いをするはずでしたの。

 そのハプニング的な出会いを阻止すべく、私は空気弾を放ったのですが…。魔法の威力が思ったよりも大きくて、思わぬ大惨事になってしまいました…。それで、ついあの場から釈明もせずに逃げてしまいました。

 あの…私は誰かを傷つけるつもりなど、決してなかったのです。それは信じてください。

 本当に、この度は大変申し訳ございませんでした。」

私はリアム様に壁ドンをされている状態からゆっくりと抜け出して、三つ折りをつき、頭を下げた。

「‥‥。」

無言の状態がしばらく続くので、土下座もきつくなってくる。ちらっとリアム様を見ると、片手を頭において疲れたような仕草で固まっている。

この重苦しい沈黙にこれ以上耐えきれなくなり、恐る恐るリアム様に声をかける。

「あの…。私は…どのような罪になるのでしょうか…。」

すると王子の印象的な瞳が私の姿を映す。そこには苛立ちが見えた。

「今回は不問に処す。

 公にはしていないので、あなたも口を閉じてください。

 けれど次に何かあった時は、私でもあなたをかばいきれない。

 それに正直…今回のことで、私はあなたに失望している。

 あなたは愚かだったが、これまで姑息な手段とは無縁だったのに…。

 他人の行動を物理で変えようとするなんて…。

 仮にあなたが彼女に脅威を覚えたとするのならば、自信をつけるべくあなた自身をもっと研鑽すべきなのではないですか?

 今回の騒動は一歩間違えば、人命を失う危険がありました。取り返しのつかないことになっていたかもしれないことをよく自覚して、反省してください。」

王子に厳しく叱責されて、体が冷えていく。

再び頭を下げて「申し訳ございません」と、謝罪する。

深いため息をついた後、リアム様は幾分声を和らげて、私に言った。

「うん。

 誰も欠けることなくすんだのは良かった。

 ただ、私はしばらくあなたとは距離を置きたい。」

びっくりして、顔を上げると、リアム様はすでに立ち上がり背を向けて、秘密部屋を出ていくところだった。

そして、一度も私を振り返ることはなかった。

パタンと閉じられた扉。

その音がリアム様の拒絶に感じられて私は激しく動揺する。

リアム様と入れ違いにいつもは淑女の鏡であるマリリンがひどく慌てた様子で、「お嬢様、ご無事で!」と珍しくパタパタと音をたててかけよってくる。

リアム様の去った部屋は再び密室になり、今では私とマリリンとの二人きりになった。

「お嬢様ー?」

マリリンの声が遠い。

私はショックのあまりに呆然として、虚空をただ一心に見つめていた。

一体どこから間違ってしまったのでしょうか?

今日はリアム様のおめでたい入学式でしたのに。

記念すべき日にリアム様に喜んでもらえるように、何度もシミュレーションをしましたわ。

笑ってくださるかしら?

喜んでいただけるかしらと…。

けれど、渡したかった花束は無残に朽ち、リアム様にかけたかったお祝いの言葉も言えず…。

しまいにはあの方に大変なご迷惑をかけたうえに、しばらく距離を置きたいと…言われてしまいましたわ…。

「わーーーーーーーーーん。」

私は大声を出してみっともなく泣きだした。

さきほどの脳筋ゴリラよりもひどい醜態で、そんな私にマリリンはあっけにとられている。

それでも彼女は何も言わず、ただ私を抱きしめて優しく背中をさすってくれる。

泣いても、泣いても、涙がこぼれてくる。

胸がただただ痛い。ズキズキとする。

悲しくて、切なくて…。

愚かな自分が哀しい。

自分の存在が忌まわしい。

死んでしまいたい。

消えてしまいたい。



散々泣いた後、私はいつの間にか泣きつかれて眠ってしまった。

そのために、かわいそうなマリリンは意識のない私をなんとか抱えて、屋敷まで連れて帰るはめになる。(馬車に乗せるまでが大変だったそうな)

後日彼女に、「1日に2度も肉体強化の魔法を自分にかけたのは初めてです」と、特別手当を要求された。

ちゃっかりしておりますわ。

でも、あの日の朝に私が事件を起こしてから、マリリンには本当に何から何まで迷惑をかけてしまった。

脳筋ゴリラに秘密部屋へ閉じ込められた私の危機に、リアム様に助けを求めてくれたのはマリリンだった。

グッジョブ!

リアム様はもちろんのこと、マリリンも私の命の恩人だ。

特別手当なんて、お安い御用ですわ。

力持ちで美しく機転の利く私のスーパーメイドには、感謝しかない。

今後とも、よろしくお願いいたします。

マリリンも私と距離を置きたいなんて…思っていませんわよね?

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