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第10話

想像していたような衝撃も熱さも襲ってこない。

こわごわと薄目で状況を確認すると、誰かがその体を盾にして左腕で私を抱き寄せ、かばっている。

その人は右手一つでエネルギーの塊を受け止めていた。

あまりに眩しい光が逆光となり、かばってくれる人のシルエットしか見ることができない。

それでも…その人が誰なのか、私には予感があった。

じゅーっと嫌な音がして、肉のこげる匂いが鼻につく。

私をかばった人の右手が焼けているのだ!

大変ですわ…。

ど、どうしたら…。

「くっ」

うめき声が私のすぐ近くから漏れた。

光のエネルギーが勢いを増して、押されそうになっている。

が、がんばってくださいまし!!

私は、固唾をのんで見守ることしかできない。

「うー」と、唸り声をあげると、その人は右手にさらに力を加えて、太陽のような光源を力づくで粉砕してのけた!

耳をつんざく音がしたかと思うと、最後の一瞬に強烈な閃光を放ち、最上級の攻撃魔法は消滅した。

目が強い光に当てられてすぐには開くことができない。

生理的な涙がぽろぽろ流れる。

筋肉ゴリラめ…なんてヤバい魔法を…。

肉片すら残らないように徹底的に私を消すつもりだったのか…。

そばにいる人の激しい息遣いが部屋中に響く。

はっ!そうでしたわ。

手が…大変なことに…!

目が見えない私は、自らの両の手で、かばってくれた人の体をぺたぺたと探って、負傷して大変なことになっている右腕を掴み、「治癒」と、心の中で一生懸命にとなえた。

残った少ない私の魔力で、どれだけの効果があるのかが、分からない。

不安のあまり、確認しようと目を一生懸命にまたたいているうちに、その人がすっと私がつかんだ手から離れた。そして、その人により私に治癒魔法がかけられたのが分かった。

あ、目の痛みがウソみたいに消えました。ありがたいです。

味方してくれたの…ですよね?

ゆっくりと私のそばから遠ざかる足音がして、いきなりドンっと誰かが殴られるような音と人のうめき声が聞こえた。

暴力ですか?

一方的に誰かが殴られている音とその度にあがるうめき声。

静かな室内に不気味に響いて、恐ろしすぎます…。

目をまだ開くことができずに状況が分からなく、恐怖心がどんどんつのっていく。

聞くことに堪え切れなくなり、私は両手で耳をふさぎ、へなへなとしりもちをついた。

ようやくぼんやりと見えるようになった私の目がとらえたのは、床に倒れてのびているサミュエル様だった。

美しいお顔がぼこぼこになって、はれている。

少しだけ…いいえ、かなりざまみろと思ってしまいました…。

サミュエル様のそばで、右のこぶしを左手でさすって、うめく脳筋ゴリラを見下ろしているのは…私の婚約者、リアム様その人だ。麗しの婚約者は厳しい表情をして、脳筋ゴリラに言った。

「この件を私は捨て置けと言ったはずだ。

 なぜ命令に背き、このような卑劣な手段をとった。」

リアム様の冷静な問いかけに、脳筋ゴリラはペッと口の中に溢れた血を吐き捨ててから、答える。

「悪の芽は小さいうちに積んでおかなければ、災厄となります。

 そこの女の悪事を殿下が握りつぶすのなら、私がなんとか処理をしなくてはと…。

 私は…。私は、全てはあなたのために!!」

話の途中でリアム様は鍛えあげられたその美しい右足で、脳筋ゴリラのみぞおちをドカっと蹴り上げた。

脳筋ゴリラは苦悶の表情で体をくの時に曲げる。

「どこが私の為なのだ。命令は絶対だ。暴走する部下など、害悪でしかない。

 再教育が必要なようだ。しばらく、謹慎して反省しろ。」

「そ…そんな…。申し訳ございません。二度と勝手な真似はしません。

 どうか、おそばにいさせてください。

 殿下!嫌です!」

リアム様がパチンと指を鳴らすと、入り口の扉が突然開いた。そして、リアム様があごで指示すると、入り口の脇で控えていた騎士2名が室内に入り、脳筋ゴリラの両脇をかかえて、秘密部屋からひきずって連れ出す。

「殿下―!殿下!」

脳筋ゴリラが鼻水と涎を垂らして恥も外聞もなく号泣して叫んでいる。

ちょっと…ドン引きだ…。

そして…私の罪な腐の琴線がそんな脳筋ゴリラとリアム様のBL展開を夢想する。

はっ。私ったら…。

白昼夢をみている場合じゃなくってよ!

いけない、いけない。

そうだわ。

リアム様に助けていただいたお礼を言って、花束を渡して…。

花束は?

秘密部屋に入った時は持っていたはずです。

きょろきょろすると部屋の隅に転がって、くしゃくしゃになっているのが見えた。

腰が抜けた私は立ち上がれず、仕方がないので這って、そばまで行き、花束を拾ってみたが…。

先ほどまで、みずみずしく美しかったそれは、一部が焼けて見るも無残なものだった。

ゴミにしか見えませんわ。

お祝いの言葉を花束といっしょにと思っていましたのに…。

呆然としていると、コツンと足音が聞こえて、リアム様の靴が視界に入る。

見上げるとリアム様が無感動に私を見下ろしていた。

彼はゆっくりと片膝をつき、視線を私に合わせる。

ひさしぶりのフェイスtoフェイス。

吸い込まれそうなエメラルドグリーンの瞳が私だけを映す…。

はぅ。

私だけを…。

美しいご尊顔が間近にあって、興奮のあまりに自分の顔が、ぽっと赤く染まるのが分かる。

心臓がものすごい勢いで動いている。

壁を背にした私の顔の横にリアム様が左手を置き、更に綺麗な顔を近づけてきた。

ひゃーーーーーん!!

こ…これは…壁ドン!

憧れの壁ドン!

顔が近い…近いです。

もうすぐゼロ距離。

唇が…触れてしまいそうですわ…。

頭に血が上りすぎたのか、私の鼻からつと血がたれる。

とほほ。

それを見て眉根を寄せたリアム様が右手でハンカチを取り出し、優しく鼻血をぬぐってくれた。

乙女としては…。は…恥ずかしいかぎりですわ…。

でも、リアム様が眉根を寄せるその不機嫌な表情も…いい!

ぐっとくるものがありますわ…。ぞくぞくします。

口を開けてほうけている私に、リアム様は静かに聞いた。

「朝、なぜあのような攻撃をしたのです。」

私の行為を断定したうえでのお尋ねですわ。

犯人は私だと、すっかりばれていますのね…。

マリリン、リアム様にしらばっくれるのは無理なようです…。

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