20話 同伴初日
2話投稿3日目朝!
(頭が痛い…)
昨日の宴の席、後半ぐらいから記憶が無い…
下半身を見られ過ぎてイライラしてたとこまでは覚えてるんだが、そこから自分に宛てがわれたベッドで起きた今までがサッパリだ。
この世界にきては初だな。酒で失敗したの…
成人したばかりで、そもそも飲む機会が無かったからこれが初なのも当然といえば当然なんだが。
(うぅ〜…気持ち悪い……)
酔っ払っているときに何かやらかしてないといいんだが…
覚えてない事を悩んでも仕方ないか。
気持ちを切り替えて、更に身体も切り替える為、ベランダに出る扉を開けて備え付けられている椅子に座って、日の光を浴びながら目を閉じる。
暫くそうしていると気分も少しは良くなってきた。
(今日は朝にはディスナを出発する。来る時は山を登ってきたので5日かかったが、帰りは当然下り。4日目の昼前には王都に入るだろう。)
来た時のスピードで行けたら、だが。
ウィルの同伴が気掛かりだな…馬車に乗ってくれればそのぐらいで着けると思うが、あの初心なウィルが俺とメイド2人に囲まれる馬車に乗っていられるだろうか?
もし自分でついてくると言い出したら予定より時間がかかる可能性もある。議員であるウィルが兵士達のような鍛えている者と同等の行軍が出来るとは思えない。
まあウィルも分かっているだろうし大丈夫か?
まぁそれより問題は王国にウィルが来るという事だ…
ただでさえあの夜の事である意味1番警戒するべき奴なのに、まさか王国に来る事になるなんて…
たしかに評議会の中では若手で能力も悪くはないと思う。
だが、こんなピンポイントで選ばれるか普通?
他の奴が来るなら王国の事だけを考えてたらいいのに、こいつが来ると余計な心労が出てくる…
無いとは思うが、また何かしら要求してくる可能性もあるんだ。…慎重に動こう…
ウィルの事で頭を抱えていたら、かなり時間が経ってしまった。メイド達も呼びにきたし、城門まで移動する。
城門には迎えてくれたときにはいなかった全議員が来てくれた。沿道に集まった民も別れを惜しみながら笑顔で手を振ってくれている。
…自分の成果が目に見えて現れたのだと思うと、この景色も更に感慨深いものだ。
さて、そろそろ出発しなければ。
皆に挨拶していたが馬車の前にまで戻り、来た時と同じくスカート部分を軽くつまみながら持ち上げ、礼をする。
「ディスナの皆様、短い滞在でしたが本当に楽しく過ごせました。これも皆様のお気持ちのおかげです。これでお暇するのは悲しくもありますが、もし王国に訪れる機会がございましたら、今回のご恩を少しでもお返しするべく、国を挙げてお迎え致します。」
「何をおっしゃいますか。我らの同盟に尽力して下さったそのお姿に深く感銘を受けました。またいつでもいらして下さい。まだまだディスナには素晴らしい物が色々あるので、その際はご紹介させていただきますぞ。」
「ふふっ、それは楽しみですね。それでは皆様お達者で…」
「セシリア様もお達者で!」
外交の成果も出せて、様々な技術にも触れられて、本当に楽しい滞在だった。
もっと技術を見てみたかった心残りを振り払うように馬車に乗り込む。
山を下り始めてそんな時間もかからず平坦な道にまで出てきた。やはり上るのと下るのでは差が出るな。
道程は順調そのものだが、ちょっと困る問題が馬車の中で起きている。
ウィルがちょっと女に囲まれてるぐらいで照れて縮こまるくせに、正面に座っていた俺に向ける視線は、バレていないと思ってるんだろうけど、胸やスカートに向け過ぎている事だ。
(そこまで見るから普通?ちょっと性に執着しすぎだろ…最初は仕方ないと諦めていたが、さすがにあそこまで見られると、その視線が煩わしくもなっていた。)
そんな感じでも笑顔は絶やさないで話すのは意外と大変…
これは俺には意外と辛い旅路になるかもしれん……
そんな事にちょっと頭を抱えながら馬車は進んでいった。




