17 王の決断
リュウとの通信を終え、ココアがミルクの要請に従ってエンマイヤー領西側を調べ始めた頃、ノイマン領の町リーブラの北門では一台の小型ビークルが数名の騎士達に見送られ、東へと走り去っていた。
「あんなに小さいのに馬より速く四人も運べるなんて、便利だよねぇ……」
走り去るビークルを見て呟くのは、先日ココアの王城侵入を見事サポートした、エミール・アドラーである。
今日のエミールは騎士らしく甲冑に身を包んでおり、左肩の紋章の下には二本の線が刻まれている。
「それで奴らは何を言ってきたんですか? アドラーさん」
「んー、昨夜エンマイヤー邸に侵入した妖精を探せってさ……」
門を閉め終えた部下に話し掛けられ、エミールは何でも無さそうに答えた。
王家が逃走した際もエルナダ軍は今回の様にビークルでやって来ていた為、彼らに然程驚きは無い様だ。
「妖精!? はは、エルナダ軍っておとぎ話を信じてるんですか?」
「いやぁ、そうじゃないんだよ。正しくは妖精の姿を模した道具なんだよ……人が操って敵の情報を盗むんだってさ……」
上官のやる気の無さそうな答えに部下は素っ頓狂な声を上げ、呆れ笑いで再び問われたエミールは苦笑いでそれを否定し、先程エルナダ兵から聞かされた事を部下に伝えた。
「はぁ……でも、そんな訳の分からない物なんて、連中くらいしか持ってないのでは?」
「だから彼らは自分達の中に敵が紛れ込んでいると考えてる様だ。まったく……迷惑な話だよねぇ? 我々にはその妖精そのものか、妖精を操っているであろう人物を発見次第確保、それが無理ならせめて情報提供を……という事なんだよ」
しかし当然ながら困惑した様な部下の言葉に、エミールも苦笑いを抑えられず肩を竦めるばかりであった。
「で……それに従うのですか?」
「まさか。だけど形だけは従って見せないとねぇ? 済まないけど、一応お達しだから広場の掲示板にこれを貼っておいてくれないか? 端っこでいいから」
「分かりました」
少々非難めいた部下の問いをあっさり否定するエミールは、悪戯っぽく笑うと一枚の紙きれを部下に手渡し、広場へ向かう部下を見ながら呟く。
「それにしても、たった一晩で……いやはやどちらも大したものですねぇ……」
エルナダ兵に渡された紙きれには、ココアらしき姿が印刷されていた。
ただ暗がりで撮影された為か、この世界のお世辞にも質が良いとは言えぬ紙に無理矢理印刷した為か、恐らくはその両方であろう、ココアの姿は不鮮明な物であったが、エミールがそれをココアだと思い付かない訳が無かった。
半日にも満たない時間ではあったが、ココアと共に行動していたエミールには、用心深く、姿をも自在に変えられるココアが発見されるとは思えなかった。
だがエルナダ軍はその姿を捉えたばかりか、詳細は違えどもその存在を敵だと認識し、その情報提供を求める為に迅速に行動している。
「意外に早く使う時が来るかも知れませんねぇ……」
呟きながらエミールは、左手首に結ばれた小さな袋を見つめる。
その中にはココアから必要になるかも、と渡された通信機が入っている。
ふぅ、と一つため息を吐いたエミールは、やがて何事も無かったかの様に門番詰所へと戻って行くのだった。
王家の天幕ではリュウがもたらした最新情報によって、協議は王都奪還を決行するか否かではなく、決行するにあたっての算段へと進んでいた。
「ノイマン、フォレスト両騎士団に加えて、王都騎士団も王が帰還するとなると必ずや我らと共に動くはずだ。そうなれば数はこちらの方が上回る上に、上手く立ち回りさえすれば大きな戦闘を避けて王城を味方で固める事もできるだろう。だが、本当にエルナダ軍の介入を阻止できるのか? リュウ……」
「余程の事が無ければ、十中八九できると思います……ミルクとココアのお蔭で俺には王城と北棟の様子が見えてるんで、皆さんより先に向こうへ行って安全を確保しておきます」
これまでの協議をまとめるレオンにやや不安そうに尋ねられ、リュウが集まる視線に照れたのか頬を掻きながら答えている。
リュウを見つめるのは親衛隊長ゼノとレオン王子、そしてレント国王である。
「具体的にはどうするつもりなんだね?」
「え~、先ずは説得して……ダメなら力ずくで……」
「ご主人様……それ、全然具体的じゃありませんよ! 済みません、まだ説得の文言が出来上がってないのですが、エルナダ軍兵士は上の命令に従っているだけでしょうから、上の思惑が頓挫すると分かれば一先ず戦闘は避けられるかと……何とか彼らの郷愁を呼び覚ます様な説得を心掛けるつもりです……」
ゼノの問いに対するリュウの答えを聞いたミルクが、あまりに大雑把な回答に呆れつつゼノの問いに丁寧に答えた。
ミルクの呆れ顔にしゅんとするリュウ。
「彼らがそれに応じなかった場合はどうするんだ?」
「その時は……」
そのミルクに今度はレオンから質問が飛ぶと、ミルクは言い淀みながらリュウをちらっと見る。
交渉が決裂した時に人工細胞が不足したままでは、リュウの竜力だけが頼りだからだ。
うーん、と考えている様子のリュウが顔を上げる。
「建物ごと埋まってもらうかなぁ……」
「ご主人様!? それじゃあ、死人が出ちゃいますぅ!」
リュウの自信が無さそうな発言に、目を真ん丸にして抗議するミルク。
ついさっき敵に対し優しい発言をしていたご主人様はどこへ!? とミルクのそんな声が聞こえてきそうである。
「ダメ?」
「ダ、ダメですよ! ご主人様が言ったんじゃないですか! 彼らにも上に渋々従ってる人が居るかもって!」
「あ~……面倒臭えなぁ……」
そんなミルクに悪戯っぽく尋ねてみるリュウであったが、ミルクに自身の発言を思い起こされて頭をガシガシ掻きながらつい、本音を漏らしてしまう。
何故なら、破壊の力を完全には制御出来ていないリュウが一番苦手とするのが手加減だからである。
「め……そ、そんな理由でやられる相手の身にもなって下さい!」
「分かった、分かった。圧倒的な力の差を見せつけて黙らせるから……な?」
そしてやはりミルクに憤慨されてしまったリュウは、諦めた様に別の案を提示してミルクに向けてニィっと笑った。
「あう……わ、分かりましたぁ……」
そのリュウの意図を察したミルクは、ぷぅっと頬を膨らませるものの他に良い案も無いだろうと渋々了承するのであった。
つまりリュウが圧倒的な力で脅すから、後はミルクが説得しろ、という訳だ。
「ん? どういう事なんだい?」
「いや、大丈夫です……ちょっと過激な方法になるかも知れませんけど、奴らは絶対に阻止します……」
「ご、ご主人様が本気になれば彼らの武器など玩具同然なのです……ですので、彼らもそれを知れば間違いなく抵抗しようとは思わないはず……そうしておけば説得も容易かと……」
リュウとミルクの二人だけで済まされかけた内容にゼノが待ったを掛けると、リュウはポリポリと頬を掻きながら、ミルクは慌てた感じから最後にはしゅんとした様子で上目遣いに答えた。
「本当なのか!? それは……」
「なのに何故、二人共そんなに歯切れが悪いのかね?」
そんな二人の回答に釈然としない様子のゼノを、レオンの興奮した声がゼノに追及を断念させてしまうのだが、それまで静かに皆の話に耳を傾けていたレント国王が少々困惑気味にゼノの気持ちを代弁する。
「えっとですね、俺の力はその……その時じゃないと発動しないと言いますか、現時点では自分でもはっきりと説明できない代物なんですよ……アイスに言わせると想いの強さが関係しているみたいで……済みません……」
とうとうリュウは観念したのか、伏せておきたかった自身の力の自分でも未だ上手く説明できない部分について話した。
本来ならば、作戦の根幹に不透明な部分が有るなど言語道断である。
だがリュウの言葉にレオンが別の疑問を抱いた事が幸いし、話は別の方向へと進んで行く事になる。
「リュウ、ちょっと待て……お前はミルク達の妖精の力を使うんじゃなかったのか? お前も星巡竜の力が使えるのか?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
レオンの問いにリュウがきょとんとした表情で答えると、レオンは唖然とした様子で父レントと顔を見合わせた。
「は、初耳のはずだが……」
「うむ……アイス様だけなのだとばかり思っておったな……」
「ご主人様ぁ……」
困惑しつつも間違いないはずだと二人が答え、国王と王子には正体を明かしたと聞いていたミルクが呆れた声を上げた。
当のリュウは、あれぇ? おかしいな……などとぶつぶつ呟いている。
「アイス……様? 星巡……竜? あの、一体何の話なのでしょうか?」
「「「「あ……」」」」
そんな中、怪訝そうなゼノの声が残った四人を見事にシンクロさせる。
「ここのところずっと顔を突き合わせていたから失念していた……ゼノ、今から言う事は他言無用で頼むぞ。実は彼女は星巡竜なのだそうだ……我々は狩の後でリュウから直接聞いたのだが、内緒にして欲しいと頼まれていたんだ……」
「済みません、隊長さん。陛下や殿下にヴォイド教の事を聞いてアイスが面倒に巻き込まれたら嫌だなぁ、と……できれば少しの間でも普通の女の子として過ごさせてやりたいなぁ、と……お二人には内緒にして貰ってたんです」
レオンとリュウから事情を説明されるゼノ。
さすがにぽかーんと口を開ける様な事は無かったが、珍しく固まっている。
「ま、まさか本当に居たなんて……で、ではアイスちゃ……様がその気になれば噂される様な数々の奇跡を起こせる……と?」
信じられないという表情でポツリと呟くゼノは、ヴォイド教徒達が唱える事や自身が知るおとぎ話を思い出し、それが事実なのかをリュウに尋ねた。
「んー、その噂される奇跡がどんな事なのか分かりませんけど、空を飛んだり、障壁を張って身を守ったり――」
「そう言えば、魔人族の都を襲ったエルナダ軍が全滅したのは山崩れが原因だと言っていたね? それはまさか――」
「あ……」
まぁ仕方ないか、とリュウが無害そうな実例を挙げている中、ゼノがリュウと出会った時に聞かされた話を思い出し、今度はリュウが固まった。
レントとレオンが「聞いているか?」「いえ、初耳です……」などとひそひそ話す中、リュウは頭をガシガシ掻いて上目遣いでゼノを見る。
「え~、本人は俺達を守るつもりだったらしいです……ただ、成人したばかりで力が予想以上に出てしまったらしく、山が一つ消失しました……なので、奇跡と言うよりは災害に近いかなぁ……な~んて……はは……」
そしてリュウは頬を掻きながらエルナダ軍全滅の真相を語り、腰の辺りで両手を開いて肩を竦めておどけて見せるのだが、話を聞く面々の様子を見て隠してた方が良かったかなぁ、と今更ながらに冷や汗を掻いている。
レント、レオン、ゼノの三人は暫し茫然としていたが、辛うじてレオンが声を上げる。
「じゃ、じゃあ、お前も同じ様な力を使えるって事なのか!? リュウ!?」
「いえいえいえ、俺のはそこまで酷くないっす! アイスに比べたら可愛いもんです! はい……」
青褪めたレオンに詰め寄られ、慌てて直立不動で否定するリュウ。
アイスが聞いていたら、ずーんと落ち込んだに違いない。
暫くそうしていた二人であったが、レオンが諦めて身を離すとリュウは安堵のため息を吐いた。
「し、信じていいんだな!?」
「そ、それはもう……」
元の位置に戻るレオンが振り向いて念を押すと、リュウはため息を吐いたままの背中を丸めた姿勢で顔だけをレオンに向け、にへっと笑った。
そんなどこぞの胡散臭い商人みたいな主人の姿に、赤い顔で天を仰ぐミルクであるが、呆れてばかりでもいられない。
「あ、あの、ご主人様も見知らぬ土地でアイス様が堅苦しい思いをしない様に、皆様がアイス様を恐れたりしない様に、と苦心していたのです……どうかそこはご理解下さい……」
三人の前へ出て主人を擁護するミルクは、最後に深々と頭を下げる。
そんなミルクを見て、レントは目元を和らげてうんうんと頷いた。
「ミルクちゃんと言ったかね。あの地図と言い主人を支える姿勢と言い、君には本当に感心させられる……そんな君が付いているんだ、信じようじゃないか」
「あ、有難うございます! 国王陛下!」
レントの優しい声が一瞬でその場をピリッと締め、並ぶレオンとゼノが同意し頷いた事でミルクはもう一度深々と頭を下げ、リュウがそれに倣った。
頭を下げながらミルクが居てくれて助かった、と心底安堵するリュウ。
「うむ。では我々はこれより王城へ戻り、正当な権利を回復する。委細はゼノに任せる。折角の情報を無駄にせぬ為にも急がねばならぬ、支度をせよ」
そしてレントは遂に王都奪還の令を発する。
「「はっ! 直ちに!」」
レオンとゼノの気合に満ちた返事が天幕に響き、二人が天幕を後にする。
「リュウ、ミルク……」
だが、リュウとミルクはレントに呼び止められ、レントに向き直った。
「そなたらのお蔭で、私も漸く踏ん切りが付いた。捕らわれた仲間の事も心配であろうに、尽力を心より感謝する。だが、我々の事でそなたらに万が一の事でも有ったらと思うと耐えられぬ。だから、どうか無事でいて欲しい……」
レントがしみじみと感謝を告げ、そして不安そうな面持ちでリュウを真っ直ぐ見つめた。
別に頭を下げられた訳では無いが、リュウにはレントの真剣さが伝わった。
「ありがとうございます……でも、俺達の事は心配しないで作戦の成功を祈っていて下さい。こう見えても俺は悪運が強いみたいなんで……きっと心配するだけ無駄になってしまいますよ?」
だがリュウは感謝こそしたものの、わざと明るい雰囲気で心配無用だと告げ、一国の王に対してニィっと笑った。
「ふっふっふ……そうか。では、この戦いが終わったら、褒美をやろう。どんな物でも構わんぞ、考えておいてくれ」
「ちょっ、それフラグ……いえ、じゃ、じゃあ、考えておきます……では……」
そんなリュウを見てレントは堪えもせずに笑うと国王らしい振る舞いに戻るのだが、リュウは思わずツッコミを入れかけ、慌てて態度を正すと一礼して天幕を後にするのだった。
その後、親衛隊全員に王都奪還作戦がゼノとレオンによって説明され、広場は一時騒然となった。
だがそれも直ぐに落ち着きを取り戻し、各々がてきぱきと動き始めると、その日の午後には野営地に整然と並ぶ親衛隊の姿が有った。
野営地の少し離れた場所で一頭も欠ける事無く管理されていた馬達も、久々に騎士達を背にして嬉しそうだとリュウは思った。
百騎近い騎馬の後方には王家の大型馬車が三台とコグニーの小型馬車が一台。
当然レントら王家の者は大型馬車に乗っている訳だが、その御者台には手綱を握る親衛隊員の他に、ニマニマと微笑むアイスが同乗していた。
アイスが何故ニマニマと微笑んでいるのか、それはリュウに「大好きなアイスにお願いが有る……みんなをそれとなく守って欲しい」と頼まれたからである。
それは再びリュウと離れて行動する寂しさは有るものの、それ以上にリュウに頼られた事が嬉しく、リュウの期待に応えたいという気持ちが大きかったのだ。
故に俄然やる気を漲らせるアイスなのだが、頭の中では「大好きなアイス」の部分が繰り返し繰り返し再生されているのであった。
リュウがここへやって来て四日、親衛隊が王家と共に王城を脱してからは実に十六日、ゼノの合図で先頭を任される隊員が号令を発し、隊列が進み始める。
「では、王城で会いましょう!」
「うむ! 頼むぞ、リュウ!」
大型馬車の脇に立つリュウと扉から身を乗り出すレオンが短く言葉を交わす。
「アイス、頼むな!」
「うん! リュウこそ無茶しないでね! ミルクぅ、リュウをお願いね!」
「お任せ下さい、アイス様! 皆様、ご武運を!」
次いでリュウが御者台のアイスに声を掛けるとアイスは笑顔で応え、アイスに信頼を寄せられたミルクはアイスの傍まで近寄って応じ、そのまま親衛隊の上空へと羽ばたいてエールを送り、リュウの下へと戻った。
リュウがミルクを肩に乗せて、南の街道へ向かう親衛隊一行を見守っている。
「さて、俺達も行くか」
「はい、ご主人様!」
そして一行が見えなくなるとリュウは翼を展開し、ふわりと浮き上がる。
リュウとミルクはこれから、北中央山脈やその他ココアが設置した通信機器を回収し、人工細胞を補充しながら王城へ向かうのである。
それに際し、ミルクはレオンとゼノ、そしてアイスの三人に耳栓型の通信機を預けており、王都に近付いた頃合いにスイッチを入れてもらい、連絡を取り合う予定になっている。
お蔭で今のミルクは普段と変わらないものの、リュウは使える機能が全く無い状態なのであった。
因みに、エミールがココアから渡された通信機はスイッチが無く、ココアから送られてくる暗号で起動するタイプである。
リュウが尾根に辿り着き、ミルクが最初の通信機器を回収している頃、親衛隊一行も北中央山脈の南をぐるりと東に回り、北へ伸びる街道に踏み込んでいた。
「よし、先行隊は出発せよ。我々はこの場で待機し、日没を待って出発する」
「了解。先行隊行くぞ!」
ゼノの指示で隊列から二十騎程が街道を北へと走り去って行く。
残った本隊は日没までをこの場で過ごし、時差を付けて街道を北上するのだ。
これはコグニーの小型馬車はともかく、王家の大型馬車は敵の目を避けて森を抜ける事が出来ない為の措置である。
万が一敵の目が有った場合、街道を通れば発見されるのは必至な為、先行隊が街道両脇の森へ散開して北上し、索敵しつつノイマン、フォレスト両騎士団との合流を果たそうという思惑なのであった。
丁度同じ頃、ノイマン領リーブラの広場では掲示板に人だかりが出来ていた。
「何だか薄暗くてはっきりしないが、妖精ねぇ……」
「人が操るって書いてあるじゃないか……そんな妖精いるのかねぇ?」
「いるのかねって、普通の妖精だっていねーよ!」
「そんな事よりもだ! 知らせた者には公爵様から賞金が貰えるってよ!」
「あんた仕事出られないんだから、探してみたら?」
「なら、いっそエンマイヤー領に行かねえか? 妖精を探す為だったら公爵領に入れてくれるだろ?」
「乗った!」
「んな簡単に見つかる訳ねーよ、俺はやめとく……」
掲示板に群がる男女がわいわいとエルナダ軍の手配書を見て騒いでいる。
その反応は様々だが、一部の者は幾らかも分からない賞金の為にやる気を見せていた。
やがてその場も収まりを見せて人々が散って行くと、一人ぬいぐるみを抱いた少女、ミリィが掲示板の前にぽつんと残った。
ミリィは手配書の文字の全てを読める訳では無かったが、妖精の写真がココアだと直ぐに気付き、賞金の文字が読めただけでそれが何を意味するのか分かってしまっていた。
「ど、どうしよう……リックに知らせなきゃ!」
ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめ青褪めるミリィは、そう呟くとリックの下へと駆け出すのであった。
奥歯の神経を抜く治療を始めた為、治療後二日程はズキズキ痛んで執筆する気になれません…
鎮痛剤も効いてる時間が短くて…
が、ようやく動きのある展開になってきたので、なるべく早く皆様にお届けできればと思っております。




