七十八話 最後の一人
申し訳ありません。更新時間が遅れてしまいました。
携帯が変わって、少々取り込んでいる内にもうこんな時間です……申し訳ない。
活動報告にも書きましたが、これからは完結まで毎日連載(できればなので恐らく週に二、三回)します。
正直忙しい時期も被ってしまうのでどうなるかは分かりませんが、なるべく有言実行はしていくつもりです。
それから、基本的に22:00に更新しますが、どうしても遅れてしまう場合などはそうでない時間帯に更新する可能性があります。
なるべく22:00に更新できるようにしますが、ご容赦ください。
「ああ……初めまして」
僕が後頭部を掻きつつそんなことを呟くと、キルトナは「おい」と制止を掛けてきた。
なんだよ、僕はこんな奴知らないぞ。いやそれじゃ流石にキルトナが可哀想か……じゃあ覚えてないぞ。
こっちはこっちで酷いな。
「冗談だよ。ほとんど覚えてないのは事実だけど」
「だろうな!? 本人が名乗るまで毛ほども気付かねぇんじゃ覚えてないだろうよ?」
キルトナはサラダを食べるのも忘れて突っ込みに夢中になっている。かく言う僕も、最初の一口以降ステーキを口にしていないのだが。
「記憶喪失だった時期があってね、色々忘れていたんだよ」
「嘘吐け!」
いやそれは本当。キルトナのことはその前から記憶になかったかもしれないけど。そりゃ顔出さないお前が悪いとしか言いようがないのだから、僕に非は無いと思う。うん。
「とにかく再会できてよかったよ。初めまして」
「おい、早速矛盾してんぞ」
馴れ馴れしく言って、僕は右手を差し出してみる。キルトナには手を握り返すという習慣などなかったようで、ぱんと手の平を同じ方の手で叩かれた。
そういう挨拶じゃないんだけど、まあいいか。
「まあでもキルトナも僕のことはほとんど覚えてないじゃないか。おあいこだよ」
「最後の入学者だろ、そら記憶にも薄いだろうよ。そいで名前なんつったっけ?」
「ゴールドマン」
「ああゴールドマンね、思い出したあの時のな?」
僕は笑顔でスルーした。
誰だよゴールドマンって。僕はそいつが誰だか思い出せないし、どうやらキルトナは僕を誰かと勘違いしているみたいだった。
いやそんな人は本当の意味で存在しないし、というか僕の嘘だけど。
「おい鈴峰、冗談も程々にしようぜ。本当に覚えてなかったらどうするつもりだ」
「その時は容赦なく見捨てて置いてくよ。君は僕を架空の誰かと勘違いし続けるだろうね」
それにしても、まさかここで再会してしまうとは思わなかった。場所が場所だけに、目的が目的なだけに扱いに困るのだが。
とりあえず、グリーフと竹内には説明しておかねばなるまい。
「すみません。この変な奴、捜し者でした」
「……言われなくても、気付きますよ」
グリーフはもぐもぐとステーキを咀嚼して飲み込んでから、呆れたような声音で心情を吐露した。
竹内は無言だった。
だろうね。
僕はあまり実感が湧いてないのだけど、一応連絡だけはしておくか。
「さて。知り合いと分かったんだ。一応、キルトナには伝えておきたいことがあるんだよ」
「んあ? そんなもんがあんのか」
詳細を言ってしまえば、別に僕が伝えたいわけではないのだけど。アリシーの懸念がこれで解消できるだろう。会えないとは思っていたが、無事に全員と顔を合わせることができたのだ。散り散りになってから数年という月日が立ったが、人間ってのは割りとしぶとく生きていられるらしい。
「アリシーとかセラとか、覚えてる?」
「あぁ、少なくとも鈴峰よりは覚えてるぜ。それが?」
「実はつい最近まで、あの大災害で散ってしまった面子を捜していたんだよ」
アリシーとはほとんど最初から行動を共にした。
あっくんとはその一年ほど後にエクサルの都市で再会した。
セラは、グリーフ達が連れてきたと言ってもいいだろう。最近のことだ。
そしてキルトナとも出会い、これでアリシーが言う友達も全員の安否が確認できたことになる。
「とまあ、そんなわけでね。見付かっていないのはキルトナだけって感じだったんだよ」
「なるほどな。じゃあずっと捜されてたってわけか? そりゃ申し訳ないな」
「仕方ないよ、ろくな連絡手段がなかったわけだし。この大陸に来たってことは、中央大陸の港町から舟使ったんだろう? アリシーとセラは、今はそこで暮らしてるよ。生存報告がてら会いにいってあげたらいいんじゃないかな」
僕とはそうでもないけれど、二人とは長い付き合いなのだから。僕が間接的に報告するよりも、本人が直接出向いた方がいいだろうしね。
「そうだな、今度寄ってやるとしよう。ま、今はレイジにプロポーズすんのが先だがな」
「……そりゃ結構なことで」
性格が破綻しているのを知って、なお求めるのか。というかプロポーズって……いや、好きにしたらいいだろう。僕が口を挟むことじゃない。
ようやく二口目のステーキを頬張って、僕はやれやれと首を振った。
この調子では深いことは話せない。グリーフも分かっていて言葉を発さず、僕も雑談のみを交えつつ食を進める。
こう、反応もせずに淡々と食っているのは料理人には悪いけど、かなり美味しかった。肉は柔らかいし、味もしつこくない。脂でぎとぎとしているわけじゃないし、こう、いくら食べていても気持ち悪くならない。
もう二度と保存食の肉は食べたくなくなるような味だったのは言うまでもなかった。
ああ駄目駄目、たまの贅沢を日常にしてはいけないな。食事なんて一生摂らなくてもよさそうなグリーフと違って、僕は二週間で餓死だ。
お腹が空けばなんだって美味しいもんだ。よし。
「ごちそうさま」
「ああ、ごちそうさま。美味かったな」
「そうですね。グリーフさんが連れてくるだけはありましたよ」
僕がそう挨拶をすると、竹内も続けてそう言った。日本の食文化というものを実感した今日だった。
いただきますとは言ってないんだけどね、細かいことは気にしないでおこう。
例の如く他の二人は何も言わず、席を立つ。
さてこの後どうするか、かな。知人だと発覚してしまった以上、キルトナを無下に扱うわけにもいかないし、本当のことを話すこともできない。
こいつって結構地雷じゃないかとは思ったが、その辺は仕方ないことなのだろう。
最悪、力押しでどうにでもなる相手なのだし。
見知らぬ人ならともかく、あまりやりたくはないけれど。
「それで、当てはあるの?」
「レイジの居場所ってことか? 全くないぜ。基本はこの都市に居るらしいから、自分を見付けたら頑張って追ってみろってだけ言われてるんだけどな。最近は三日に一度は会える」
「はぁ……そうなんだ」
よくそれで根気良く追っ掛け回せるもんだよ。果たしてレイジにそれだけの魅力が備わっているのだろうか……残念ながら僕には理解ができない話だ。それともキルトナがただ単に好色で女たらしで特殊な趣味でも持っているのか……あれ、アリシーとセラに会わせたくなくなってきたな。
そんなことすればスルーされるか返り討ちに遭いそうだけど。いや、流石に旧友にそんなこと出来ないか。
「おいなんか変なこと考えてただろ」
「いや別に。ただ趣味悪いなとは思ったけど」
「否定はできねぇがな……」
そこで否定しないんだ。
「別に、俺ぁあいつが悪い奴だとは思っちゃいねぇぜ? いつもどこか切羽詰った様子でな、それが理由で俺をはね退けてるって感じなんだよ。だからちょっくら慰めてやりてぇってな」
「慰めたついでに慰めるのが目的なんだろうね」
「おう、半分はそのつもりだ」
でしょうね。どうぞ僕の知らないところで勝手にやって下さい。
店を出て適当に都市を散策しつつ、僕らは大通りに出た。人で溢れ返ったところは久し振りだが、やはり気分のいいものではなかった。できればこんなに密集しないで散り散りになって欲しいものである。
さて、こんな通りで下世話な会話を展開している僕らも他の人間からすればろくでもない人間に見られているのだろうか。そういう人もいそうだ。
そういうのはキルトナだけにしてくれ。
「情報屋を当たってみましょうか」
僕とキルトナとは別に竹内と話していたグリーフが、唐突にそう言った。聞き慣れない単語に首を傾げると、当然のように説明が入る。
「その名前の通りですよ。この世界では情報屋というのはかなり重宝される職業です。情報が通らないこの世界で、その情報とやらを片っ端から集めている専門家なのですからね。多少の対価となり得る物を渡さなければ教えてくれないこともありますけれど、問題はないでしょう」
「あー……対価ってどうするんです?」
「私がその場で指輪か宝石でも造って渡せば一発でしょう。そういったことは得意ですから」
グリーフはそう簡単に言って、こちらに手を差し伸べる。作られていた握り拳が開かれると、そこには美しい碧色の宝石が輝いていた。
そんなことができたのか。
「おいおい……鈴峰の連れってすげぇのな」
「まぁ、そりゃあグリーフさんはレイジの知り合いだからね」
「ふぅん……」
キルトナは眉をしかめ、思案したように腕を組んだ。それから何かに気付いた様子で頷くと、こう質問を返してきた。
「ずっと気になってたんだがよ。この都市の名が“レイジ”で港町の方の名が“グリーフ”なんだろ? これって偶然か?」
「……。そう言われればそうだね、指摘されて初めて気付いたかもしれないよ。僕は知らないな」
まさか説明してやるわけにもいかないだろうし、知らない体で話を終わらせることにした。確かに、誰でも気になることではある。グリーフにレイジ、そこに何らかの関連性を疑うのは当然の帰結だ。僕が何も知らなかったのだとしても、その程度の疑問は生まれていたに違いない。
オマケにエクサルまで知ってしまえば、ほぼ黒になるのかな。
しかし、それと教えるかというのは別だ。この事実を知っているのが僕の仲間くらいなものだし、あまり公にしたくないというのもあるのだが――。
少なくとも、レイジに好意を寄せるキルトナに説明ができるものか。
その内話すこともなくなったのか誰も発言をしなくなり、情報屋が住む建物に辿り着いた。
「いらっしゃい……おや、あんたか」
「ええ、お久し振りですね」
「どうも」
建物内部は書類で散乱している薄暗い部屋だった。そこには如何にもそうな黒い服を身に纏った男がいて、執務机だか何かに座って書物を読み耽っている。
こちらの顔を見てもいないのにコミュニケーションが図れるっていうのは凄いな。これがベテランってやつか。
どうやらグリーフと竹内は以前にも来たことがあるらしく、それぞれ挨拶を交わしていた。その代わりっていうのも何だけど、僕とキルトナは一言も喋っちゃいないが。
キルトナは辺りを見回して「なんじゃこりゃ」とか言っていたが、それは積み重なる書物や同じく重ねられた書類に向けられたものだろう。
僕も同じように辺りを見回していたが、別にキルトナと一緒の意見ではない。ただ単純に、エクサルで僕に与えられた書斎のような部屋と酷似していたなぁ、と。そんな風に思っていただけだった。
僕の場合はここまで汚くはなかったけど、情報を取り扱ったりすると皆こんな風になるのだろうか。シャインハートも似たような感じだったが……きっと、本人からするとその位置に置いてあるのがベストなのだろう。
「そんなにここが気になるか? 小僧よ」
そんなことをしていると、いつの間にか顔を上げていた情報屋が僕達に向けて言ってきた。
「別に?」
「お前じゃねぇよお前に聞いてねぇんだよ。そっちの方だボケナス」
キルトナの発言にイラついたのか、情報屋は唾を飛ばして罵声を放ち、直ぐに僕へと目線が移る。ああ、僕にしか聞いてなかったのか。
もう小僧って年齢ではないんだけどな……ここの面子じゃ一番小僧か。見た目的に。
でも一々言って切れられても面倒臭いな。この人は少々短気そうだし、下手な言動は止そう。
「ああ、いえ。よく情報を集めてるなと思いましてね。僕も別分野で資料を集めていましたけど、ここまで集めるのは容易じゃなかったですよ」
主に地図ばっか作っていたし、それ関連ばかりだったけど。お陰で他人から賞賛されるほどには精緻なモノが出来上がったよ。だがそれも中央大陸に限っての話だ。他はとんと集まっちゃいないからほとんど外郭しか書き込んでないのが現状だし、まだまだ完成には程遠い。
「ほう、それでか。そっちの奴とは違って、見る目が違ったからよ。ちょっと気になっただけだ。お前は何か研究でもしてた口か?」
「いえ、地図を書いていただけですよ。研究なんてとんでもない」
そういうのはシャインハートクラスにならないと呼べないものだ。それに比べれば僕のは単なる暇潰しのお遊びでしかない。
そういや彼女は今頃冷蔵庫作ったのかな……今度遊びに行きたいとは思うけど、大分後になりそうだ。
その時には僕が渡した電気から新たなエネルギーの概念だか何かを発見して化学都市へと発展しているかもしれないな。次会うのが楽しみだ。
「地図だと?」
情報屋はそう問い返した後、おもむろに立ち上がって周囲を探り始める。その内目当ての物を見つけたのか、本棚から取り出して僕に見せてきた。
「地図なんか書いてる奴は一人しか知らないな。これはお前が書いたのか?」
……ん?
彼に近寄ると、普通に手渡された。それも大事な情報なのだから、てっきり避けられると思ったのだけど。
というか、こんなところまで出回っていたのか。
僕は複製されていたその本を見て、確かに頷いた。これは僕が複製したものじゃないし、字体や紙の質も違うが、確実に僕が書いたものだ。原本は今も手元にあるわけだしさ。
さてはコンスタリエの奴、量産したな。いや別にいいんだけど、どうせなら完成品を量産して欲しいもんだよ。
「これはコンスタリエって人から受け取ったんですか?」
「ちげぇよ。流浪人と交換で手に入れたんだ」
「情報と、ですか?」
「それ以外に何がある。だがこれは返さんぞ、ホラ俺に返せ」
口早く捲し立て、彼は僕の手元からそれを奪い取った。がめつい奴め。
「別に返さなくていいですよ、原本は僕が所持していますし問題はありません。それに、完成してませんしね。その地図」
「その程度分かっとるわ。なら、お前はこの大陸の地図を書き足しに足運んだってんのか?」
「ええ、そうなりますね」
目的はそっちじゃないけど。だけど後で暇な時間を見繕ってここの地図詳細は書くし、あながち嘘でもないのは確かだよ。
「それならいい情報がある。取引するか?」
おぉ、そのために話を振ってきていたのか。流石は情報屋を名にするだけはあるみたいだな。
駆け引きは上手い……ってか、普通はそれ目当てで来るもんな。
うむ、中々に魅力的な提案だ。しかしその手に流されて乗ったらこの人の思う壺だな。
甘い蜜を見せたまま、実はとんでもなく損をするパターンだ。
しかも、別にそこまでして情報を集める必要はないからな。実際に現地に来ているわけだし、この目で見たものをそのまま書き写すのが一番正確だ。
そっちの方が慣れている。
と、言うわけで、断らせていただきましょうかね。
「いえ、結構です」
「……はん、そうか。じゃあ一体何の用事で来たってんだよ? あん?」
断るなり、情報屋の機嫌は悪くなってしまった。口調が荒いのがその証拠。
僕は気にしないが、あまりに短気だと嫌われるよ。そりゃ中にまで入っといて一も二もなく拒否した僕に非があるけれどね。
今日は別の用事があるんだよ。それで許しておいてくれ。
「今日、貴方に用事があるのは私の方ですよ」
僕が一歩引いて話の場から退くと、ようやくグリーフが本題を口にした。
待っていたってんなら割り込んで話してくれてもよかったんだけどな。
「おぉ、そうだったのかいよ。なら早く言ってくれや」
「とある人物を捜しています」
前置きすらなく告げ、グリーフは続きを述べる。
と一緒に先程造った宝石を手渡せば、情報屋は満足げににやりと笑ってみせた。
いつの時代も文明も、こういった美しい物とかは高価なんだな。
にしても、この人堂々と悪い顔してるなぁ……それ、グリーフが片手間に造ったやつだよ。
とは言わないが。
「身長は私より少し低いか、という程度。長身ですね。髪は腰まで届く黒髪、灼眼が特徴的で真紅に染まる衣服を纏っています。露出度が高い服装なので、この都市の標準服に近いですが目立つでしょう」
「ほう。それで?」
「この人物の居場所を捜したいので、目撃情報があれば教えて下さい」
「ふうむ……名は知っているか?」
情報屋は若干渋い顔をするものの、少し間を置いてそう言った。
「この都市名と同じ、“レイジ”という名前ですよ」
「……そうか」
執務机に戻り、ぎしりと音を立てて古めかしい椅子に腰を降ろして彼は机に目を通した。
「グリーフさん。一応お訊きしますけど、レイジの気配は感じますか?」
「いいえ。レイジが気配を断ってしまうと、隠密性が非常に高いので私では探知ができません。無論、私が見付かったのも能力を行使しているからです」
「そうですね……。今はグリーフさんの気配も特にありませんし、レイジの気配など探れません。グリーフさんが駄目なら、当然でしたね」
となると、こういう原始的な方法が一番なのか……。キルトナが三日に一度は会うような人だ、加えてあの奇抜な格好ともなれば嫌でも人目には付いてしまうだろう。
現在の居場所を特定できずとも、今までの発見場所から大体の予測は立てることができるはずだ。二手くらいに別れて目星で張っていれば、そこを通る確率も上昇するというものだ。
全力を出さなきゃいけないが、逃げることだけを考えればレイジからも逃げられる。その際はグリーフは間違いなく気付くことができるし――。
見つけたあと、どうするかが本当の問題なのだが。レイジが戦うつもりなら、その場で戦うしかないことは分かっている。話して和解できる相手じゃないのも、重々承知の上だ。
見付けて、どうするというのだろう。レイジは何をしようとして、僕らに接触してきたんだ。
「その条件、悪いが受けられんな」
「……はい?」
僕は、情報屋の一言に思わず訊き返してしまった。こちらが断ることはあれど、向こうから断るようなことがあるのだろうか、と。
思考した瞬間。
一度は渡したはずの碧い宝石が、グリーフに向かって宙を舞った。
「先客から頼まれてんだよ。それがお前らと“被る”からな、今回は破談とさせて貰う」
「――そりゃ、まさか」
「俺ぁ贔屓はしないんだ。取引相手は取引相手。早いもん勝ちだぜ」
情報屋が放った言葉の意味。
それは、つまるところ――。
「――そういうことじゃな、貴様ら」
背中に悪寒と“憤怒”が走って、レイジが現れたのだと脳が危険信号を発する。僅かな反応の遅延が遅れ――僕と竹内は、レイジの憤怒に身を包まれてぴくりとも動けなくなった。
「面白いことに、妾が先客よ」
静謐。それでいて威圧的な台詞が、背後から静かに耳を突いて離れない。
「……つまり」
――僕達は。レイジの手のひらの上で、動かされていたのだった。




