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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第二章 「胎動」 第二十五話 「はぐれ村の長 長末」


「天眼 風をみる」


 第二章 胎動


 第二十五話  「はぐれ村のおさ 長末」



   一年前、この「はぐれ村」の柵の外で、長政が「舞」を踊り、


  旅立った後、長末は、「はぐれ村」のおさとなった。


  元々、小笠原家の家臣であり、長政がまだ元服前の「長利」と


 言われていた頃、 長利に、「剣」・「馬」・「槍」の武術を教え、


さらに,山で食べられる、「山菜」や「きのこ」の種類、


「野うさぎ」や「猪」の獲り方など、自然の中で


生きる術も教わった。


   長末は、その溢れんばかりの知識を、長利に、ほんの一部を


 教えただけにすぎなかった。


  半兵衛が、龍気から報せを受け、人知れず長末の下に向かい、


 長政からの使いが来たと長末に報せた時、長末は半兵衛に聞いた。



長末「半兵衛殿、長政の使いが持ってきた、「薬」の名は、何と申した。」


半兵衛「はい、確か「太風子」とか言う木の実を絞り、塗り薬にしたものと、


    聞きおよんでおります」


長末「太風子か・・・、」    


半兵衛「ご存知なのですかな?」


長末「うむ・・・、」



   長末は、そう言ったきり、沈黙してしまった・・・。


   その時の長末の目は、もの悲しい目をしていた。



   はぐれ村の長である、長末の家の前に立つ三人、


  半兵衛、玄海、剛力は、長末に案内され、家の中に入る。 


 と言っても、長末が住んで居た屋敷と違い、玄関の


戸板を開けたら、中央に囲炉裏が設えており、その奥に


もう一部屋あり、後は、小さな「庭」があるだけである


  長末をいれ、四人が囲炉裏を囲むように座ると、


長末が口火をきる。



長末「剛力殿と申されたな、拙者が長末である、


長崎からの旅路、真にお疲れでござった。」



  そう言うと、長末は、姿勢を正し、両の手を腿の上に置き、


  深く一礼する。


  剛力は、その仕草に感心すると同時に、自分のようなものに、


 敬意を現すその老人の姿に慌ててしまった。  


   さらに、そこには、長末と大日坊様(長政)との間に


深い絆があると感じた。


  そう思ったら、自分がしてきた事が、どれほど大事な事


であったのか、事の重大さと、無事、それを成し遂げた


喜びと、ここにも、「仲間」が居る。


  大日坊様の理解者が居る。


  そう思った後、 何が何だかわからない感情が、溢れてきて、


 「とんでもございやせん・・・、」と言いながら、泣き崩れてしまった。


   それは、剛力にも理解出来ない感情であった。


   その姿を他の三人は、優しい面持ちで見守るのであった・・・・。


 

 剛力が、落ち着くと、長崎での大日坊(長政)の事を話す。


  知り合ったきっかけや、太風子が長崎に着いた時の事など、


  本当に嬉しそうに剛力が話す。


  そして、この塗り薬の使い方を長政に聞いたとおりに


説明するのである。

     


剛力「大日坊様、いえ、長政様は、こうおっしゃっていやした、


まずは、「温泉」に入り、体を清めてから、「膿んでいる部分」


に、この塗り薬をたっぷりと塗りこむとの事でございやす、


   ただ、この薬は、強烈な匂いがしやすのと、「滲みる」との事で


   ございやす、 また、完全に治す事が出来ぬとの事でやすが、


   病を抑える事が出来ると、おっしゃっていやした・・・。  


   長政様は、その事をたいそう、悔やんでおられやした・・・、


   完全に治す薬では無い・・と、」



長末「そうか・・・、長政も、その事は判っていたのじゃな・・・、」



半兵衛「なるほど・・、長末殿も、その事を知っておられたのですな、


      ですから・・・。」


長末「うむ・・、それと、剛力殿、その枝と種は、太風子なのであろう、


   じゃが、太風子は、唐の国のさらに南の地に生える木と聞く、


    この信濃の地では、到底、育つものでは無い」


剛力「はい、長政様も、そうおっしゃっていやした・・、 


    その事は、これから「吾平」さんと言う人と、話をいたしやす。 


    長政様は、「吾平」さんの知識、特に「接木」とか言う


    知識が役に立つかも知れぬとおっしゃっていやした・・・。」



長末「何! 「接木」とな! ふむ、それなら・・、いや、それでも、


    冬の信濃は、耐えられぬ・・、そこが、問題じゃ・・・。」



    すでに、長末の頭の中は、他の三人とは、違う世界にいた・・・。



剛力「そうです、わしには、この信濃の冬が、どれだけ厳しいのか、


   わかりやせん、ですが、


    吾平さんに、この太風子が育っている国の様子を、話してくれと、


    長政様は、言っておられやした・・。


    あきらめるのは、その後で良い、とも おっしゃっていやした・・・。」



長末「なるほど・・、さすが、長政じゃの・・、 先の先まで、考えておる・・・。 


    よし、その事は、剛力殿にお任せいたします。


    何とぞ、よろしく、お願い仕る」



    そう言うと、初めと同じように、深く一礼するのであった。


   三人も、それぞれが、一礼すると、はぐれ村を後にする、


   次は「吾平」の下に向かい、太風子を、どうやってこの信濃の国で


  植えるのか、それを考える事となる。


  三人の後ろ姿を、はぐれ村の住人、総てが見送る・・、


  長末は、その時、別の事を考えていた



長末(さて、温泉か・・、近くにある「源泉」から「湯」をもらい、


    はぐれ村に湯治場を造らねばならぬの・・、 


    「竹」を切り・・、「流れ」を作るか・・、 


    万が一の事を考えて、使った「湯」の事も考えねばならぬしの・・、


   忙しくなりそうじゃ・・・)


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